魔樹の子

クラゲEX

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ハクチ編

ユメノツボミ

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樹官には等級が存在する。
伍~壹までの四つに分かれている。
伍級は全体の約40%
參級が30%
貳級が25%
そして最上級、壹級の樹官はたったの5%程しか存在しない。

そう5%程の、約百五十人の精鋭なのだ。

そんな出鱈目な奴が…

「君は受験生かな?そんなに熱心に読み込むのも珍しい。最近は魔術の腕重視だからね。」

話しかけてくるとは思わなかった。

「夏まであまり時間がないからね、追い込みかい?」

名乗りもせずにずかずかと、遠慮なく踏み込んでくる。

壹級の樹官と確信はあるが、事実ではない。

 今まで出会ってきたどの魔術師よりも、ハリスよりも二人の樹官達よりも強いことからそう思っているだけ。
 唯それだけで判断している。
 
 だから、私の_______
“これ以上の化け物は存在しない”
という願望もこの確信の意に含まれている。

「ずっと無視するなんて酷いなあ。まあ急に、変な奴が話しかけてきたら誰でも押し黙るか。」

私の腕三本分はあるであろう丸太の如き太腕を、私のとは似ても似つかぬ、厚い鉄板を二枚仕込んでも足りなさそうな胸板に叩きつけ、声高らかに自己紹介を始めた。

「私はキイ・ユークと言う。君の今読んでいるそれの一員だ。その中でも結構偉い部位に入るけどね。」

良かった。偉いと言うのなら私の予想は多分合っているだろう。

名まで名乗られたのだ。少しは相手をしなくては。

「私はレン・リシュです。これはただ…調べたいことがここに載っていたので。受験とかは考えていませんね。」

「アレン・クラーク」が知れ渡っていれば即拘束でもおかしくない。

一応偽名を考えておいて正解だった。
身分証も入國時には偽装しておいた。顔を見られても無反応なとこからバレることはないだろう。

「……へえ、レン君か、よろしくね。新たな仲間が増えるかも!と、思って話しかけたものの違うか。ちょっと残念。」

少し間を置いて軽口を叩くその姿と、
教本に記されている荘厳な姿は、乖離が過ぎている。

「期待に添えずすみません。キイさんはいつもここに?」

「いや、今日はちょっとした用事があってね。いつもは違う。
仮にも私はここの管理者だからね、私がやらなきゃいけないこともあるのさ。」

ここを維持するためにも、油売ってないで仕事をして欲しい。

…って、よく見ると酒持ってる。
本当に仮なんだな、この人。




「へえ、じゃあつい最近まではハリブに!私は樹官だけど協会が好きでね、いわゆる親協会派なんだけど
賛同する奴が少なくて少なくて…あ、レン君が今からでも入るっての、どう?」

どう?と勧められても…入る気など微塵もないことはこの一時間で何度も言っているのだが。

「いえ、まだ旅の途中なので、申し訳ありません。」

「へえ、旅って絵本に出てくる魔法使いみたいな、強い魔術師になる為なんだよね。」
 

____何が言いたいのだろう。

「それって強くなるのが夢で、
旅は夢の手段でしかないのになぜ、そこまで旅に拘るんだい?
その本を読んでいるなら分かるだろう?
樹官の強さが。強くなるのなら旅ではなく、樹官となって腕を磨くことの方がより現実的だと思うけどね。」

懐疑半分、ふざけ半分に尋ねるコイツに怒りが湧けども反論は出来なかった。

____________________________

「夏まで。この國に残ってみたらいい。本当の夢を見つけなきゃ、枝は応えてくれないよ?」

大きなお世話だ。黙って欲しい。
理由なんてとうに見当がついている。
会ったばかりのこの男に見透かされた事実に腹が立つ、未だ夢があやふやな自分に腹が立つ。 

気づけば、キイはどこかに消え、本来の静寂に戻っていた。


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