16 / 26
ハクチ編
ミジュクナマ
しおりを挟む
特に怪しまれることも無く
入國はすんなりと済んだ。
内部はハリブよりも狭いものの、その活気はハリブに負けず劣らずのものだ。
協会地区がない以外は殆ど同じ構造だが、それでも此処がハクチだと思わせるのは点在する塔と中央に見える大きな魔樹だろう。
信者の進行の末に見つけた聖地。
その聖地たる理由もこれにあるのだろう。
魔樹教の教えはあまり厳しいものではない。
禁忌は存在しない上に基本自由。
一年に一度、虚月の一日に魔樹への祈りを捧げるのみ。
「原初の言霊は人の原罪。欺瞞と惨劇を繰り返す真の魔。その禁忌を犯す者、聖と源に誘われる。」
教本が禁忌という単語に触れているのはこれくらいだが、いまいち理解できない。
それ以外には
「魔の真名、真名に在らず。
名の本流、流れは絶え、偽りの言、制約を以って秩序を保つ。」
「夢を騙る化け物、人への回帰を永遠に閉ざす。」
とか、教祖や教の成り立ちは殆ど書かれていない。代わりにいつからあるのか、それすら判らない魔樹教創設以前の文のみが記されている。
教本というより古典といってもいいだろう。
これが魔樹教の支柱、原点なのだろうが、ここからどうしてこんなにも大きくなれるのか、甚だ疑問だ。
金を払って宿に泊まる。
兎に角、明日には図書館にでも行って情報を集めよう。
昼間に着いた筈が慣れない街に混乱して殆ど調査が出来なかった。
よく見れば教本の裏表紙にハクチの地図があったのだがそこに気付く事はなく、
歩き回って日も落ち、ふらふらになった所で漸く宿屋にありつけた。
疲れもあってか風呂にも入らずベッドに直行する。
「………うぅ…」
痛みで目が覚める。
樹官の攻撃で足が爛れてからというもの、
毎日の手当て、魔術の痛み止めが無ければ眠れなくなった。
魔術の鍛錬を続け、小慣れてきたといえど相変わらず効果は長続きしない上に、体内に取り込む魔力も取り込み過ぎると中毒状態になって魔術の行使どころではない。
だから痛み止めの魔術も使うタイミングは、就寝時や痛みに耐えられない時にと決めている。
随分と生きづらくなった。けれど夢を裏切れない。だからこそ鍛錬を続けるし、首は括らない。
包帯を巻き直し毛布の中で寝入る。
特段、夢を見ることも無く朝を迎えた。
と言っても痛みで目が覚めた故に外はまだ暗い。泣く人も笑う人も居らず、痛みだけが部屋に響く。
夢…ハリスの目は私に移植された。
けれども見せるものは悪夢ではなく、先と後の現実だった。
私が教本に書かれてすらいない魔樹教の始まりと信者の行進について知っているのも、この目によるものだ。
ハクチの門を見た時、ハリブの協会を見た時、断片的にだが過去のその地の記憶が流れてきた。
痛みの奥から流れる記憶。魔者の能力が夢から現実へ、干渉の対象が反転しているが、明らかにハリスの目による記憶だった。
ハクチに向かう途中で見た人型の上位魔獣との交戦が避けられたのもこの目のお陰だ。
間違えた選択を選ぼうとする度、その先で奴に気付かれ真っ暗になる未来が流れた。
今のところこの能力に助けられているが、
能力の操作も制御も出来ない。
ただ不定期に流れて来る記憶を閲覧するのみ。
この目のためにも魔者への理解を深めたい。
不完全な今の状態でも、魔想種に劣るものの、一体の討伐に三十の死体と百の肉塊が必要だと云われる人型、魔人種から逃げ果せることが出来たのだ。
使い熟せれば色んな場面で役に立つだろう。
そんな目への熱い思いとは裏腹に、両足を冷やした後、二度寝した。
入國はすんなりと済んだ。
内部はハリブよりも狭いものの、その活気はハリブに負けず劣らずのものだ。
協会地区がない以外は殆ど同じ構造だが、それでも此処がハクチだと思わせるのは点在する塔と中央に見える大きな魔樹だろう。
信者の進行の末に見つけた聖地。
その聖地たる理由もこれにあるのだろう。
魔樹教の教えはあまり厳しいものではない。
禁忌は存在しない上に基本自由。
一年に一度、虚月の一日に魔樹への祈りを捧げるのみ。
「原初の言霊は人の原罪。欺瞞と惨劇を繰り返す真の魔。その禁忌を犯す者、聖と源に誘われる。」
教本が禁忌という単語に触れているのはこれくらいだが、いまいち理解できない。
それ以外には
「魔の真名、真名に在らず。
名の本流、流れは絶え、偽りの言、制約を以って秩序を保つ。」
「夢を騙る化け物、人への回帰を永遠に閉ざす。」
とか、教祖や教の成り立ちは殆ど書かれていない。代わりにいつからあるのか、それすら判らない魔樹教創設以前の文のみが記されている。
教本というより古典といってもいいだろう。
これが魔樹教の支柱、原点なのだろうが、ここからどうしてこんなにも大きくなれるのか、甚だ疑問だ。
金を払って宿に泊まる。
兎に角、明日には図書館にでも行って情報を集めよう。
昼間に着いた筈が慣れない街に混乱して殆ど調査が出来なかった。
よく見れば教本の裏表紙にハクチの地図があったのだがそこに気付く事はなく、
歩き回って日も落ち、ふらふらになった所で漸く宿屋にありつけた。
疲れもあってか風呂にも入らずベッドに直行する。
「………うぅ…」
痛みで目が覚める。
樹官の攻撃で足が爛れてからというもの、
毎日の手当て、魔術の痛み止めが無ければ眠れなくなった。
魔術の鍛錬を続け、小慣れてきたといえど相変わらず効果は長続きしない上に、体内に取り込む魔力も取り込み過ぎると中毒状態になって魔術の行使どころではない。
だから痛み止めの魔術も使うタイミングは、就寝時や痛みに耐えられない時にと決めている。
随分と生きづらくなった。けれど夢を裏切れない。だからこそ鍛錬を続けるし、首は括らない。
包帯を巻き直し毛布の中で寝入る。
特段、夢を見ることも無く朝を迎えた。
と言っても痛みで目が覚めた故に外はまだ暗い。泣く人も笑う人も居らず、痛みだけが部屋に響く。
夢…ハリスの目は私に移植された。
けれども見せるものは悪夢ではなく、先と後の現実だった。
私が教本に書かれてすらいない魔樹教の始まりと信者の行進について知っているのも、この目によるものだ。
ハクチの門を見た時、ハリブの協会を見た時、断片的にだが過去のその地の記憶が流れてきた。
痛みの奥から流れる記憶。魔者の能力が夢から現実へ、干渉の対象が反転しているが、明らかにハリスの目による記憶だった。
ハクチに向かう途中で見た人型の上位魔獣との交戦が避けられたのもこの目のお陰だ。
間違えた選択を選ぼうとする度、その先で奴に気付かれ真っ暗になる未来が流れた。
今のところこの能力に助けられているが、
能力の操作も制御も出来ない。
ただ不定期に流れて来る記憶を閲覧するのみ。
この目のためにも魔者への理解を深めたい。
不完全な今の状態でも、魔想種に劣るものの、一体の討伐に三十の死体と百の肉塊が必要だと云われる人型、魔人種から逃げ果せることが出来たのだ。
使い熟せれば色んな場面で役に立つだろう。
そんな目への熱い思いとは裏腹に、両足を冷やした後、二度寝した。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる