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第17話 瑞泉視点その3
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俺の同意に、少年は嬉しそうな顔をして笑っていた。
やっぱり可愛いな、こいつ。こんなに可愛いのに男なのか……。
――いや、待て。俺はいったいなにを考えているんだ!
俺は慌てて頭を振る。
だが、少年はその仕草を誤解してしまったようだった。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
「え、ああ。なんでもない、なんでもないんだ。ははっ、いかんなぁ。気の巡りをよくしないとな。龍帝じゃないけど挨拶しまくるか。こんにちは!」
「あはは」
俺の冗談に少年は楽しげに笑う。
その笑顔があまりに眩しくて、俺は目を細めた。……ああ、本当にこの子は……。
俺の心臓がドクンと跳ねる。
もし、この子が後宮に入ったら……。あんな場所だけど、俺は毎日通い詰めてしまうのだろうか……。
「そうだ、これ」
俺は手に持っている袋に手を突っ込んだ。
「いいことを教えてくれたお礼に、これをやろう」
「え、そんな……悪いですよ」
「遠慮するな。口に合うかどうかは分からないが身体にはいいからな……。丹花茶だ」
「!」
俺の言葉に、彼は大きく目を見開く。
「あ、ありがとうございます。でもいいのですか?」
「いいんだ。お前のおかげで、俺は……」
なんといえばいいのだろう? 少し思案したが、俺は告げた。
「俺は助かりそうだ」
ほったらかしにしていた妃に挨拶をしたくらいで寿命が延びるのなら、それは万々歳である。
「でも……」
「俺用にはたくさん買ってあるから心配するな」
……そう。俺はこいつが大好きで、買うときは常に大量に買うのだ。おかげで店のものが俺の顔を覚えてだいぶオマケしてくれるまでになった。
もちろん龍帝だとはばれてはいない。苦い丹花茶が好きな変わり者の若い貴族、と思われている。
「ええと。かんざしもありがとうな。いつか俺からも……お前にかんざしのお返しでもできたらいいな」
「え……」
「ふ、深い意味はない。お前もそれだけ可愛いのだから彼女の一人くらいいるだろ?」
言いながら、この子が彼女とイチャイチャするところを想像してしまい勝手に凹む俺だった。
「その子に贈ってやれ……きっと喜ぶ……」
この子が彼女とイチャイチャするくらいなら……。
俺がこの子を彼女から取り上げてしまって、それで……。
「お前、俺の家にくるか?」
「え?」
「……う、すまん」
一瞬、カッとして凄いことを口走ってしまった。
いかんなぁ。……この子を後宮に閉じ込めて、俺だけのものにしたい、なんて……ほんとどうかしてる。
(まったく。これじゃあ、まるで俺がこの子のことを好きみたいじゃないか……)
俺は視線をそらすと、ポリポリと頬を指先でかいた。
(…………まあ、嫌いではないがな)
「今のは忘れてくれ。……どうも調子がおかしいな……」
本当に。この子と話していると、何をしでかすか自分でも分からないぞ、これは……。
「じゃあ、俺はもう行くわ。ここにいたら理性が飛びそうになる」
「え」
「じゃあな、少年」
俺は少年に笑いかけ、背を向けた。そして、そそくさと雑踏の中にまぎれていった。
……それでも、少年のことばかり考えてしまっていた。
すぐにきびすを返して少年にまた会おうか、とすら考えていた。……俺は龍帝だ。権力を使えば、誰にも文句など言わせずに彼を攫ってしまうこともできる。
いや、まさか、そんな。さすがにそんなことはしない。あの少年が悲しむだろうから。……俺はそこまで堕ちる気はない。
だが彼のことを思うたびに胸の奥に火がついたように熱くなるのはどうしようもなかった。
「……まさかな」
そう呟きながらも、その想いを否定しきれない自分がいることにも気づいていた。
――ああ、この想いは。どうしよう。俺、もしかしてあいつのこと……。
そしてハッと気づく。
名前くらい聞いておくべきだった、と……。
やっぱり可愛いな、こいつ。こんなに可愛いのに男なのか……。
――いや、待て。俺はいったいなにを考えているんだ!
俺は慌てて頭を振る。
だが、少年はその仕草を誤解してしまったようだった。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
「え、ああ。なんでもない、なんでもないんだ。ははっ、いかんなぁ。気の巡りをよくしないとな。龍帝じゃないけど挨拶しまくるか。こんにちは!」
「あはは」
俺の冗談に少年は楽しげに笑う。
その笑顔があまりに眩しくて、俺は目を細めた。……ああ、本当にこの子は……。
俺の心臓がドクンと跳ねる。
もし、この子が後宮に入ったら……。あんな場所だけど、俺は毎日通い詰めてしまうのだろうか……。
「そうだ、これ」
俺は手に持っている袋に手を突っ込んだ。
「いいことを教えてくれたお礼に、これをやろう」
「え、そんな……悪いですよ」
「遠慮するな。口に合うかどうかは分からないが身体にはいいからな……。丹花茶だ」
「!」
俺の言葉に、彼は大きく目を見開く。
「あ、ありがとうございます。でもいいのですか?」
「いいんだ。お前のおかげで、俺は……」
なんといえばいいのだろう? 少し思案したが、俺は告げた。
「俺は助かりそうだ」
ほったらかしにしていた妃に挨拶をしたくらいで寿命が延びるのなら、それは万々歳である。
「でも……」
「俺用にはたくさん買ってあるから心配するな」
……そう。俺はこいつが大好きで、買うときは常に大量に買うのだ。おかげで店のものが俺の顔を覚えてだいぶオマケしてくれるまでになった。
もちろん龍帝だとはばれてはいない。苦い丹花茶が好きな変わり者の若い貴族、と思われている。
「ええと。かんざしもありがとうな。いつか俺からも……お前にかんざしのお返しでもできたらいいな」
「え……」
「ふ、深い意味はない。お前もそれだけ可愛いのだから彼女の一人くらいいるだろ?」
言いながら、この子が彼女とイチャイチャするところを想像してしまい勝手に凹む俺だった。
「その子に贈ってやれ……きっと喜ぶ……」
この子が彼女とイチャイチャするくらいなら……。
俺がこの子を彼女から取り上げてしまって、それで……。
「お前、俺の家にくるか?」
「え?」
「……う、すまん」
一瞬、カッとして凄いことを口走ってしまった。
いかんなぁ。……この子を後宮に閉じ込めて、俺だけのものにしたい、なんて……ほんとどうかしてる。
(まったく。これじゃあ、まるで俺がこの子のことを好きみたいじゃないか……)
俺は視線をそらすと、ポリポリと頬を指先でかいた。
(…………まあ、嫌いではないがな)
「今のは忘れてくれ。……どうも調子がおかしいな……」
本当に。この子と話していると、何をしでかすか自分でも分からないぞ、これは……。
「じゃあ、俺はもう行くわ。ここにいたら理性が飛びそうになる」
「え」
「じゃあな、少年」
俺は少年に笑いかけ、背を向けた。そして、そそくさと雑踏の中にまぎれていった。
……それでも、少年のことばかり考えてしまっていた。
すぐにきびすを返して少年にまた会おうか、とすら考えていた。……俺は龍帝だ。権力を使えば、誰にも文句など言わせずに彼を攫ってしまうこともできる。
いや、まさか、そんな。さすがにそんなことはしない。あの少年が悲しむだろうから。……俺はそこまで堕ちる気はない。
だが彼のことを思うたびに胸の奥に火がついたように熱くなるのはどうしようもなかった。
「……まさかな」
そう呟きながらも、その想いを否定しきれない自分がいることにも気づいていた。
――ああ、この想いは。どうしよう。俺、もしかしてあいつのこと……。
そしてハッと気づく。
名前くらい聞いておくべきだった、と……。
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