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地下都市ヴェネ編
関所の争奪戦
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天井が崩落した。そこからは廃塵が流れ込んできていた。この廃墟街への入り口はおそらくすぐに閉ざされ、廃塵を防ごうとされるだろう。鴨はその時、まず友軍だの敵軍だの関係なく、生徒たちの動きを考えていた。
混乱の中でも、兵科学校の学生なら廃塵から逃げるためにそれなりに動けるだろうし、率先して救助活動をしようとする隊もあるだろう。だが、それらは一切が無駄になりかねない。
出入り口。関所だ。
もし廃塵を恐れた教師陣率いる部隊が関所を閉じたら、この廃墟街にいる全員が薬落ちて死ぬ。
そして、地下人にとって廃塵とは恐怖の象徴だった。
鴨は走りながら小隊へ叫ぶ。
「これよりA小隊は関所の教師陣を無力化する。もちろん殺してもいい。刃引きされているとはいえ、軍刀や直剣を持っているんだ。力任せにたたき込めば殺せる! 関所を奪還後は、内地からやってきた部隊が関所を閉じようとするのを、避難が終わるまで防ぎ、関所を墨守せよ!」
鴨は叫ぶと、隊員たちが「承知!」と声をそろえる。
「腐った死体の山を築きたくなければ、教師陣を殺し尽くしてでも、最悪の中の最善を尽くせ!」
走り続けた小隊は関所に到達する。
そこには緊張しているがこちらの意図に気づいていない守備隊がいた。
鴨が部隊の戦闘を走り、叫ぶ。
「突っっっ貫!!!!」
「おおぉおぉおぉおおおぉお!!!」
こちらに油断して話しかけようとしてきた守備隊を、A小隊は迷いすらなく刃の潰された刀や剣でなで切りにした。
鴨は軍刀を守備隊の隊長にたたき込むと、値を流して骨折し、倒れた守備隊の六十名を、五十五名のA小隊で一気に無力化し、叫ぶ!
「関所を限界の時まで開けつづけろ!!!!」
守備隊には教師陣もいたが、A小隊の奇襲は完全に成功し、ほとんど抵抗もなかった。そのまま関所に陣取った鴨たちは内地から送られてくる可能性の高い守備隊の増援を待ち構えて、やっと初めての実践を向かえたことを自覚し、震えていた。
そんな中、鴨だけはやはり、冷静だった。
鴨は、美貌のために治安の悪い地区で何度か暴漢に襲われたことがある。その時などに冷静に対処することを覚え、そして、その冷静さがなければ、なんども尻を掘られていただろう。
そういうやや特殊な経験から、鴨はそれなりに肝が据わっていた。と、いうこともあるが、鴨は実は、兵科学校を卒業後は貴族の男娼になることが決まっていた。
鴨は確かにエリートだが、内地軍を率いるのは貴族であり、そして、鴨に用意されたポストは貴族指揮官の副官。つまり戦場愛人である。
鴨はそのことに不満を覚え、どうせそんな人生なら、と開き直ってこの状況を楽しんですらいた。
(ここを守り切れば、教師陣や守備隊を殺した罪人か、英雄か。愛人よりは納得のいく進路だ。……素晴らしくなってきたじゃないか)
鴨が舌なめずりをする。
死道と書いて士道と心得たり。
混乱の中でも、兵科学校の学生なら廃塵から逃げるためにそれなりに動けるだろうし、率先して救助活動をしようとする隊もあるだろう。だが、それらは一切が無駄になりかねない。
出入り口。関所だ。
もし廃塵を恐れた教師陣率いる部隊が関所を閉じたら、この廃墟街にいる全員が薬落ちて死ぬ。
そして、地下人にとって廃塵とは恐怖の象徴だった。
鴨は走りながら小隊へ叫ぶ。
「これよりA小隊は関所の教師陣を無力化する。もちろん殺してもいい。刃引きされているとはいえ、軍刀や直剣を持っているんだ。力任せにたたき込めば殺せる! 関所を奪還後は、内地からやってきた部隊が関所を閉じようとするのを、避難が終わるまで防ぎ、関所を墨守せよ!」
鴨は叫ぶと、隊員たちが「承知!」と声をそろえる。
「腐った死体の山を築きたくなければ、教師陣を殺し尽くしてでも、最悪の中の最善を尽くせ!」
走り続けた小隊は関所に到達する。
そこには緊張しているがこちらの意図に気づいていない守備隊がいた。
鴨が部隊の戦闘を走り、叫ぶ。
「突っっっ貫!!!!」
「おおぉおぉおぉおおおぉお!!!」
こちらに油断して話しかけようとしてきた守備隊を、A小隊は迷いすらなく刃の潰された刀や剣でなで切りにした。
鴨は軍刀を守備隊の隊長にたたき込むと、値を流して骨折し、倒れた守備隊の六十名を、五十五名のA小隊で一気に無力化し、叫ぶ!
「関所を限界の時まで開けつづけろ!!!!」
守備隊には教師陣もいたが、A小隊の奇襲は完全に成功し、ほとんど抵抗もなかった。そのまま関所に陣取った鴨たちは内地から送られてくる可能性の高い守備隊の増援を待ち構えて、やっと初めての実践を向かえたことを自覚し、震えていた。
そんな中、鴨だけはやはり、冷静だった。
鴨は、美貌のために治安の悪い地区で何度か暴漢に襲われたことがある。その時などに冷静に対処することを覚え、そして、その冷静さがなければ、なんども尻を掘られていただろう。
そういうやや特殊な経験から、鴨はそれなりに肝が据わっていた。と、いうこともあるが、鴨は実は、兵科学校を卒業後は貴族の男娼になることが決まっていた。
鴨は確かにエリートだが、内地軍を率いるのは貴族であり、そして、鴨に用意されたポストは貴族指揮官の副官。つまり戦場愛人である。
鴨はそのことに不満を覚え、どうせそんな人生なら、と開き直ってこの状況を楽しんですらいた。
(ここを守り切れば、教師陣や守備隊を殺した罪人か、英雄か。愛人よりは納得のいく進路だ。……素晴らしくなってきたじゃないか)
鴨が舌なめずりをする。
死道と書いて士道と心得たり。
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