風の想い 風の行方

木葉風子

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友達⑧

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「江莉香さんが
仕掛けたの?」
不意に輝が聞く
「何が?」
「結婚式!」
「だって…彼女の
花嫁姿見たいんだもの
きっと可愛い花嫁さんに
なるわよ」
嬉しそうな江莉香 
「おかあさんも
同じ事言ってたよ」
輝を見た江莉香

「ほんと!
みんなわかってるね
否定するのは彼女だけ…」
不満そうに言う
「否定って…」
「そう!まぁ
わかる気もするけどね」
「それって
どういうことなの?」
「彼みたいないい男と
一緒に歩くのはね」
「ぼくだって怜とは
一緒にいたくないよ」
2人して変な事を言う

「でも、ふぅちゃんは
あいつの顔に惚れた
わけじゃないよね」
敬が彼女に聞く
「当たり前よ
でも、怜くんは
どうして彼女のことを…」

「人を好きになるのに
理由なんかいらない
そう言ったのは江莉香さんだ
まぁ、怜が彼女に惚れた理由
なんとなくわかるよ」

静かに話す敬
「わかってる」
江莉香が敬を見つめた

彼女から目を逸し
窓の外を見ながら話す

「そう
あいつにとって
本当の自分を
わかってもらえる人…」

窓の外には白樺林
その木々を見る敬

「ふ~ん
じゃあ、敬くんたちは?」
窓に映る自分の姿を見る
「腐れ縁…かな
兄弟でもないし
友達とも違う」
窓に映る彼は寂しそうだ

「私と彼女も
そんな感じかな…」

店内で仕事中の彼女
「クシュン」
「ねぇ、大丈夫?
風邪ひいた?」
「ほんと、
季節外れの風邪って
治りにくいわよ」
同僚たちに言われる楓子
「そんなんじゃないわ
きっと、みんなで私の
悪口言ってるのよ」
そう言いながら
もう一度くしゃみをする

「ただいま」
毅の元気な声
「無事に送ってきたよ」
怜が報告する
「ご苦労様
お茶にしましょ」

テーブルに紅茶と
シフォンケーキが並ぶ
「エリさん、作ったの?」
怜が訊ねる
「怜くんに味見して
もらおうとおもってね」
「俺に?どうしてさ」

みんなが座る
なんだか元気がない毅
「どうしたの?」
輝が心配そうに見る
「あいつのこと
気になるのか?」
怜も毅を見る
「だって、学校で
あいつらと顔あわすだろ」
険しい顔になる
「確かにそうよね…」

「じゃあ、毅の代りに
ぼくが気をつけとくよ」
「輝…ありがとう」

「だって、彼は
毅の友達だろ!
つまり、ぼくの友達だよ」
無邪気な笑顔で輝が言った 
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