珈琲いかがですか?

木葉風子

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君は誰?捜しや探偵

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「君は、本当は何者なんだ?」
厳しい顔で聞く健士
「おにいさん
この方は息子のことを
取材に来た出版社の方でしょ」
おもわず兄をたしなめる佳子
「すぐに確かめても
いいんですよ
[スカイ出版社]が実在
するかどうかを…」
佳子の言葉を無視して
じっと奏を睨みつける健士
そんな彼の表情にも動じない
緊迫した空気になる

「あっ、あの、とにかく
二人とも落ち着いて…」
慌てて声をかける
そのとき、表のドアが開き
外にいた青年が入って来た

「荷物、積み終わりました
今から出発します」
その声を聞き入口に戻る佳子
「ご苦労様
何時までに納品するの?」
何だか様子がおかしい
「何かあったの?」
「あっ、あの…」
何だか後ろを気にしている
「誰かお客様?」
佳子に何気に訊ねる

「健くん、君にだよ」
奥から健士が彼に言う
「えっ、俺にですか?」
「そうだよ、だから納品に
行くの誰かに代わって
もらえないかな」

「じゃあ、僕が行きます」
若い社員が手を上げる
まだ二十歳そこそこの青年
「そうか、じゃあ頼むよ
部長の言うことをよく聞く
商品は丁寧に扱うこと」
社長である健が彼に説明する
「はい。わかりました」
元気よく返事をして
外に飛び出す茶髪の彼
健も一緒に出て行き
先ほどの五十代の男性と話す
そして二人がトラックに乗り
出ていった、その車を見送り
中に入って来た健

「俺に客って、誰ですか?」
そう言って奥へと入って行く
副社長の前にいる奏を見た
「どういう御用ですか?」
奏の顔をじっと見た
「スカイ出版の方よ
確か名前は青野奏さん」
手に持った名刺を健に渡す

「青野…奏」
彼の名前を聞いて怪訝になる
「君は確か
この前のモデルじゃあ…」

「アハッ、
ばれちゃいましたか!」

「モデル…?」
健士と佳子が驚いて奏を見た

「あっ、顔ははっきりとは
でも、“奏”という名前と
そのスタイルがね…」

「目立つの嫌だからヒロには
ずっと断ってたんだよな」
大きくため息をした奏
そして三人の前に新しい
名刺を出した、それを見て
三人が声を揃えて言った

「捜しや探偵…?」
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