俺の賃貸1DKボロアパートの部屋が『石の中』に設定されてしまった件

やすぴこ

文字の大きさ
25 / 27
第二章 あっちの世界の人達と、俺の上司とお隣さん、あともふもふ

第25話 えっ? 俺の周りやばいやつ多すぎ……?

しおりを挟む
「まぁ、喋らないならそれで良いですけど。ところでこの石あげましょうか?」

 お隣さんの気が変わってこの物件の裏事情を喋り出す前に、俺の目的を果たそうとお隣さんに向けて石を差し出す。
 するとやっといつも通りになったかと思ったお隣さんがビクッと身体を震わせた。
 顔もヒクヒクと引きつっているし、どうやらよほどこの石に似た物にトラウマを抱えているようだ。

「い、いや遠慮しておく。いくら偽物だって分かっていてもちょっとな。もし、そんなもの持っていたら同胞から何言われるか分かんねぇし、何より散っていったアイツらに申し訳が立たねぇよ」

 なんか深刻な顔しながら一般人なら絶対一生口にしない語句のオンパレードで拒否られた。
 一体この人はこの玉に似た物にどんな目に合わされたってんだよ。
 知りたいけど知りたくないよ。
 もう現実世界でのオカルトは諦めて久しいんだからさぁ、現在あっちの世界の神秘だけでも渋滞しているのに、こっちの世界まで来ると俺のキャパが破裂しそうなんで今更勘弁してください。

 しかし、この得体のしれない物を手っ取り早く手放せると思ったのにダメだったか、くそぉ~。
 仕方ない、次にあっちの住人が来たら無理矢理押し付けることにするか。

 ピンポーーン。

「あれ? 誰か来た?」

 俺が次にやってくる異世界人にどういう理由でこの玉を渡そうかと思っていたら玄関チャイムが鳴った。

「ん? 珍しいなタモツんとこに客が来るなんて」

「余計なお世話ですよ! ったく」

 確かにこのアパートに引っ越してきてから、家族はもとより故郷の友達も会社の知り合いも家に招いたことなんてないけどもね。
 出前も宅配も滅多に頼まないし、そりゃ珍しいですよ。

「はぁーーい! 誰ですかぁ?」

 心の中でお隣さんに愚痴を言いながら、俺は訪問者に対して声をかけながら玄関まで歩いていく。
 一体誰だろうか? 普通なら新聞や保険の勧誘とか、変な物を売りつけに来るセールスマンとか、某放送局の訪問員とかが思い浮かぶんだろうけど、何故か新聞とかの勧誘やもこの部屋には来たことがない。
 今までそんな煩わしい来訪者が来なくてラッキーと思っていたけど、もしかするとここがヤバい事故物件だと言うのが訪問業界では有名なのかもしれないな。
 知りたくなかった事実だよ。
 しかし、家族や友人も今日やって来るなんて連絡はなかったし、本当に誰なんだろう?

 ……あれ? そういえば誰かが階段上がってくる音って聞こえたっけ?
 いつもは誰かが階段上り下りする度にカンカンカンカンとやかましく部屋まで聞こえて来てたんだけど。
 そんな事を考えていると廊下にいる人物が俺の言葉に反応を返してきた。

「あ~保くん。元気かい?」

 どこかで聞いたことのある、かた苦しい言い回しのこの声。
 いや、どこかと言うか休日以外は、ほぼ毎日嫌になるほど聞いている声だ。
 けど、いつものガミガミと急かしまくる高圧的な声色とは若干違う感じ。
 そういや昨日の帰りもこんな風に優しかった気が……。
 ちょっと待って? まさか本当に……?

「おや、どうしたんだい? キミの上司の出雲だよ。 昨日の君の様子が酷かったからね。心配になって見に来たんだ」

 げぇ! マジで上司だよ!
 何しに来たんだって……あぁ俺を心配してきたのか……いや余計なお世話だよ!
 休日まであんたの顔を見たくないってば。

「あ、出雲課長お疲れ様です。俺は大丈夫なんでそんなに心配しないでください。ちゃんと月曜日には出社しますんでお気になさらず~」

 俺は扉を開けないまま廊下にいる上司へ、遠回しにこのまま帰れと言う願いを込めてそう言った。

 いや、上司が訪問してきたんだから、社会人として扉開けて挨拶くらいはして然るべき礼儀だってのは分かっているんだけどね。
 今この扉を開けると、そこには明らかにヤバイパンクロッカーお隣さんがデデーンと座っているんだ。
 交友関係に文句を言われるのはパワハラじゃね? とは思うものの、お隣さんと俺が友達とか思われるのは出来るだけ回避したい。
 それどころか恋人と間違われたりなんかした日にゃ、社内でどんな噂が飛び交うか考えただけでも恐ろしいよ。
 何よりお隣さんにも殺されそうだしな。

「なにっ? 今の声、それにその名前……八雲衆の?」

 俺の後ろでお隣さんがそんな言葉を吐いた。
 ちょっと待って? その言い方ってもしかして俺の上司の知り合いなんすか?
 それになんすか八雲衆やくもしゅうって、俺の仕事場までオカルトで侵食しないでください。

「ん? 中から聞こえてくるその品のない声はまさかっ? 開けるぞ保くん!」

「やっぱりお前かっ! 櫛名くしなっ!」

 なんか上司とお隣さんがお互い切迫した感じで声を荒げる。
 お隣さんなんかどこから取り出したのか分からない多分クナイ? そうあの忍者とかが使うやつ。
 それを構えて扉のむこうを睨んでんの。
 なにこれ~?

 俺の了解を待たずにバンッと勢いよく扉を開けた上司は、お隣さんの姿を見るやいなや、こちらもどこから取り出したかわからない細長い針みたいなものを三本握りしめた左手の指の隙間から突き出させて部屋へと飛び込んで来た。
 それに応戦して俺の横をすり抜けて飛び出したお隣さんが、細長い針目掛けて横手に握ったクナイを叩きつける。
 鳴り響く金属音と飛び散る火花。
 幾合かの剣戟のあと、ギリギリと鍔迫り合いを始めた。
 ……俺の部屋の玄関で。

「くっ、腕を上げたな。永理!」

「そっちこそ。けど、今日こそはどっちが上か思い知らせてやる」

「「いくぞっ!! これで終わりだ」」

 なんかまるで時代劇かはたまた武侠劇かのようなセリフを吐いて、お互い決着をつけようとありったけの力を振り絞っているみたい。
 ただでさえボロいアパートなのに、こんなところで暴れられたら部屋が壊れてしまう。
 あぁ、なんか柱がミシミシ言ってるし、それどころか建物全体が揺れているよ。
 ダメだ。このままじゃ。
 なんだか驚きよりも、俺を無視して俺の部屋を破壊しようとしている二人に腹が立ってきた。

「なに俺の部屋で暴れてるんすか二人共!! 喧嘩するなら他所でやってください!!」

 今まさに雌雄を決しようと最後の一撃がぶつかり合う瞬間、俺は腹の底から力を振り絞って大声を上げた。
 その声に反応するかのように二人の動きがピタッと止まる。
 そして俺の顔を恐る恐る見てきた。
 なんか二人して「やってもうた」って感じの焦った顔をしている。
 そして、二人共俺の方に向き直りその場で肩を落として申し訳ないようにもじもじと棒立ちした。
 俺の言葉で止まってくれることに驚いたんだけど、まぁ人の部屋で暴れるのはダメなことって言う常識は持っていたのかな?

 ……既に非常識極まりない人達なんだけどさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...