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終曲 始まりの詩
下級兵士と追放令嬢の逃避行から始まった吟遊詩人の詩も今は昔。
若者達を冒険の道へと駆り立てた情熱も御伽噺として人々の心の奥に静かに宿る微かな火種となって久しい時が過ぎた。
しかして、下級兵士と追放令嬢の遺志がこの世から霧散した訳ではなく、志を継いだ者、憧れたを抱いた者、そして愛を胸に立ち上がった者達がこの世の有り方を変えて人々の営みの中に確かに息づいている。
時は移ろいゆく、民をただ搾取していた貴族主義の封建国家の数も減り、様々な政治形態に名を変え形を変えて声無き者達の声も陽の目を見るに至った。
しかし、だからと言ってこの世は二人の夢の理想郷ではない。
争い、差別、貧困と言った文明の原罪は、いまだこの世界の闇から日々生まれ出でて消える事なく蔓延っている。
だが、二人の魂はその事に嘆くことは有れど、絶望などしない……なぜなら……。
「おーい、交代の時間だぞ」
ここは時代遅れにもいまだ貴族が権威と格式と言う名の暴力をもって支配するとある王国の国境付近。
高い石造りの壁にて街をぐるっと覆われた城郭都市だ。
まだ日は浅く辺りは朝日を待ち望むかのようにひっそりと静まり返っている。
少しばかりくたびれた革鎧に身を包んだ中々精悍な顔付きの兵士と思しき中年男が、街の入り口である大きな門の上に備えられた鐘楼を見上げながら声を上げた。
「やっと交代か~。ふぁ~あ。ずっと立ってたから身体中かちこちだよ」
鐘楼の上からまだ少年の色を濃く残した若い男の声が聞こえてくる。
その言葉からすると、どうやら門番として夜通し街への訪問者を見張っていたのだろう。
訪問者と言っても、この様な辺境とも言える場所に来る者は旅人だけではない。
泥棒や山賊と言った街を狙う武装集団、それに魔物と呼ばれる闇の住人達の望まれぬ来訪に目を光らさなければならなかった。
だが、かつては人類の敵とされた屈強なオーガや暴食のオーク、狡賢いゴブリンさえも亜人として人類と共存するに至った現代。
その様な種族の垣根を越えて手を取り合った者達の奮闘によって多くの魔物達は、その生存圏を更なる深淵へと身を潜めている。
伝説に謳われるドラゴンも既に滅びたのかもしれない。
人食い鬼としてついには人類と相容れなかった恐るべきトロールも、一軍に匹敵すると言われた森の暴君アウルベアも、その他多くの凶悪な魔物達も姿を消した。
たまに目撃した噂が流れてくる事はあれど、この街の住人の多くにとって日常とは別の話である。
しかしながら、いまだに人類の脳裏には、そんな死と隣り合わせだった頃の魔物に対する恐怖が遺伝子レベルで刻み込まれており、夜への警戒を怠る事は出来ないようであった。
「昨夜は何か異常は無かったか?」
鐘楼の梯子を下りてくる若者に中年男が引継ぎ報告を促した。
「なーんもなし。そもそもこんな辺境に好き好んでくる奴なんていないよ」
梯子を下りる若者は眠たげな声でそう答える。
その顔は声同様とても眠たそうに目を細めており、長身でがっしりとした身体つきに比べ、あどけなさが残っていた。
その顔だけを見るとまるで少年のようだ。
実際に先月この国での成年と認められる15歳を迎えたばかりであった。
その年齢差的に少々生意気な口振りだが、中年男はそんな若者の言葉遣いには特に気にする様子は見せない。
どうやら二人はそれなりに気心の知れた間柄で普段からこうなのだろう。
「まぁ分かるがそう言うな。最近は平和になったからと言って気を抜いたらダメだぞ。俺の爺さんの子供の頃にはここら辺にも悪い奴らや魔物達がわんさといたらしいからな」
中年男は若者の言葉に苦笑しながらも注意を促した。
その言葉に若者は「へいへい」と気の抜けた返事を返す。
「お前明日は非番だろ。今日は帰ってゆっくり寝な」
鐘楼への梯子を上り始めた中年男は、門の横の兵士詰所へと着替えに入った若者にそう声を掛ける。
「う~ん、そうしたいのはやまやまだけど、食料切らしてんだ。ちょっと今から森に行ってメシ獲ってくるよ」
兵士装備の革鎧を脱いだ若者が自身の得物である小剣を腰に差し短弓を肩にかけて詰所から出てきた。
どうやら夜勤明けのまま狩りに行くようだ。
「おいおい。今からって寝ずにか? はぁ仕方ねぇな」
鐘楼に登りきった中年男がこちらを見上げている若者を見下ろしながら、かつて己もそうだった若さを少し羨ましく思う。
そして腰に下げた袋から非常食として入れておいた干し肉の包みを若者に向かって放り投げた。
「おい、徹夜のまま何も食わねぇとか倒れちまうぞ。それでも食ってろ」
「ありがと、おっちゃん。たくさん獲れたらおすそ分け持ってくから期待しといて」
若者は笑顔で干し肉を受け取り手を振っている。
中年男はそんな若者の言葉にあきれ顔で声を掛けた。
「とか言って俺のカミさんに獲ってきた獲物を料理して貰おうと思ってるだろ」
「へへへ~バレたか。んじゃ行ってくるよ」
「ったく。まぁ気を付けてな」
そう言って大門横の通用口から近くの森へ向かって駆け出して行った若者の後姿を見送っている中年男だが、実はそれほど心配はしていなかった。
なぜなら若者は、若い頃から腕に自信が有った中年男でも一目を置く強者だ。
年齢に見合わぬ体躯は持って生まれた才能であり、その狩りの腕はこの街の狩人でさえ舌を巻く腕前だった。
若者が言ったように今晩の夕飯は鹿の肉か猪の肉でも食卓に並ぶのだろう。
だからこそ中年男は残念に思う、貴族が幅を利かせているこの国でなければ、若者はこんな片田舎で門番に甘んじる生活など送ってはいなかった筈だ。
父の話では以前はここまで貴族主義ではなかったらしい。
二代前の王位継承の際に大きく政変が行われたとの事だ。
「本当に勿体無い」
中年男は自国の有様に空しさを覚えながらそう呟く。
だが、いずれはこの国から旅立つ為の後押しをしてやろう。
中年男は常日頃そんな夢を自分の妻と語り合っていた。
そう……かつて自分が憧れたあの御伽噺の中の下級兵士のように……。
そんな未来の話を考えて少し顔をにやけさせていた中年男は、視界の端に少し違和感を覚えた。
それは森の奥にある山の中腹辺り、十数羽と言ったところか。
鳥の群れが一斉に飛び立つ姿が見える。
この遥か先には王都があるが、山と森を縦断するような道も無く、往来はそれらを大回りする街道に頼っていた。
この森を通る者は余程の物好きか、それともどこかから流れて来た魔物だ。
そう考え中年男は警戒して危険を知らせる信号ラッパを手に構えたが、暫く経ってもそれ以外に何も起こらない。
中年男は鳥が羽ばたいたのはたまたまだろうと緊張を解き、やがてその事を取るに足らぬことだと忘れた。
◇◆◇
「さ~て、俺のメシになってくれる奴はどこかな~」
森に着いた若者は、そう言って肩に担いでいた短弓を手に持ち矢を掛ける。
先程貰った干し肉は既に胃袋の中。
若い彼にはそれくらいの食糧では満足できなかった。
兎でも鹿でもいい、取りあえず丸焼きにしてかぶりつきたい。
そんな事を考えながら周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいた。
中年男は若者にこの国から旅立たせたいと思っていたが、若者は違った。
かつては冒険に夢を抱いていた事も有ったが、今ではこの平和な街で悠々自適な人生を送るのも悪くないと思っている。
そう思うようになった切っ掛けはこの国の貴族社会に寄るものだったが、何より彼には心から熱くなるように思える物と出会ったことが無かった為であった。
腰を下げ茂みに身を隠しながら辺りに獣の気配に意識を集中させる。
…………、
…………、
…………おかしい。
若者は森に漂ういつもとは違う異様な空気に気付いた。
おかしい……若者はもう一度声には出さず頭の中で呟く。
普段ならこのように意識を集中させると森に住む獣の息遣いが読み取れた。
しかし、今日は違う。
獣が消えた訳ではないが、何かを警戒して息を潜め身を隠している……そう感じた。
「これ魔物のせい……? じゃないね。魔物とは別の……ん?」
ひっそりと静まり返っているお陰か若者は遥か遠く森の更に奥、その場には似つかわしくない微かな雑音を若者は聞き取った。
幾つかの足音や金属が擦れ合う音、そして誰かが助けを求める……。
若者は弓の構えを解き全速力でその音源目掛けて駆け出した。
◇◆◇
「ハァ……ハァ……クッ」
森の中を少女は走る。
その身は薄汚れた外套を纏い、その隙間からはズボンとシャツ、そのどちらも同じく薄汚れていた。
その所々はくたびれてボロボロに擦り切れ穴が開いている所もある。
どうやらその有様からすると少女は何者かに追われ逃亡生活を続けているようだ。
それを証明するかのように少女の背後から数人の足音が聞こえる。
こちらは白く輝く金属で補強された革鎧を身に纏った屈強な男達。
それら全てが統一された型式からすると、この男達は山賊などの無頼な輩には見えなかった。
どことなく門番の二人が身に着けていた革鎧に似ている事から、この王国に所属する正式な兵士達のようだ。
身に付けている装備の重さに森の移動に苦労している様子だが、少女と屈強な男では体力の差は明らかだ。
徐々にお互いの距離が縮まっていく。
「そろそろ諦めたらどうだ! もうお前に逃げ場はないぞ!」
先頭を走る一人の男が目の前を息絶え絶えに走る少女に向けて叫んだ。
男の腕には赤い腕章が付けられてあった、どうやらこの集団のリーダーなのだろう。
しかし少女はチラと目を向けただけで、その言葉に答えずに無言で走る。
だが、この一瞬目線を正面から外したことが、少女に不幸を招いた。
「あっ! キャッ!」
ここは草木が生い茂る森の中。
足元は不安定で木の根が地面に露出している場所も数多い。
今まではそれらが味方して男達から逃げられていたのだが、今度は男達の味方となったようだ。
少女は運悪く落ち葉に覆われ隠れていた木の根のうねりに足を取られて勢いよくその場に倒れ伏してしまった。
しかも転倒の際に酷く足を挫き激しい痛みに起き上がれない。
「ははははっ! マヌケな奴め。そんな様でよくも王国の目を欺き生き延びていたものよ」
「クッ……」
長く続いたこの追跡劇がようやく終わると安堵した男達は、走るのを止め勿体振るかのようにゆっくりと倒れ込んだ少女に近付いていく。
少女は足の痛みにその顔を歪めながらも男共から逃れようと地面を這いながら進もうとするが、その気力とは裏腹に既に疲労困憊な身体は『もう終わりだ』と諦めたかのように動いてはくれなかった。
「こんなところで……終わってしまうの?」
地面に爪を立て藻掻く腕に力が入らない、無事な方の足でさえまるで棒の様にピクリとも動かない。
少女は地に伏して絶望した。
祖父の無念を晴らす為、そしてこの国で苦しむ民を救う為、今まで王国の追手から逃れて身を隠し力を溜めて生きて来たのに……、いつの日か一族再興の悲願を果たすために……と。
その願いは父の側近の裏切りによって全て消え失せてしまったのだ。
一人生き残った少女はその悔しさに、今まで流すまいと堪えてきた涙を止めることが出来なかった。
もうおしまいだ、少女は近付いてくる男達の足音に自身の生涯の終焉を覚悟する。
最悪生き延びる事は出来るかもしれない。
少女の立場からすると本来見つかり次第父親やその仲間達の様に即座に殺されてもおかしくないのにも関わらず、追跡者は弓や魔法と言った殺しの手段を威嚇にしか使わず、わざわざ生きて捉えようと追ってきたのだから。
しかしそれは慈悲ではなく、ただ下卑た男の欲望を満たしたいだけだろう。
生き延びるとはそう言う意味だった。
それも数日程度の物だろうが……。
その証拠に近付く男達の下品な言葉や舌なめずりの音が少女の耳に届いていた。
少女はこれから我が身に降りかかるであろう地獄に恐怖し、思わず幼き日に母から聞いた御伽噺の一節を神に祈った。
『騎士様……どうか……私を助けて下さい』
何を馬鹿な事を……少女は恐怖による現実逃避で有り得ない言葉を思い浮かべた自分に呆れてしまった。
誰も助けてくれるはずがない、そんな事は分かり切っている。
だって、今まで誰も助けてくれなかった……。
だから……。
「ガッ! グェ……」
突然背後から強い打撃音とカエルを踏み付けたような悲鳴が聞こえて来た。
地に伏している少女は急な事態に混乱する。
何が起こったのか確認しようと振り返ろうとしても、その深く被った外套のフードの所為で見ることが出来ず、疲れから起き上がる事さえままならなかった。
少女は混乱しながらも耳を澄ませて状況を確認しようした。
すると追跡者の罵倒と剣戟の音が聞こえてくる。
誰かが追跡者と戦っているようだ。
「貴様! 俺達が何者か分かっているのか!」
「いや~こんな森の中、大勢で女の子を襲うなんて悪者以外ないでしょ」
聞こえて来たのは少年のような声だった。
自分と同じ年くらいの男の子と声? 一体誰なの? 少女の混乱はますます増していくばかり。
しばらく激しい怒号と剣戟が続いていたが、その声が一人減り、二人減り、やがては男達の声と剣戟は聞こえなくなった。
どうやら戦いは終わったようだ。
周囲に聞こえる音は、重い物を引き摺る音や衣擦れの音、あとは縄を結ぶ時に聞こえるようなキュッキュと言ったような音。
少なくともそれらは追跡者達の勝利とは思えない音ばかりだった。
いまだ混乱の中にいた少女は疲れ切って動かない身体に力を入れ起き上がろうとした。
少年のような声の人はどうなったのだろう? そもそも誰なのだろうか? 少女は声の主に想像を膨らませる。
今まで聞いた事のない声だった、だけど……どこか懐かしい……、胸の奥に湧く今まで感じた事のない不思議な高揚感に心臓が高鳴った。
もしかして……本当に御伽噺の……?
「あっ無理しないで。もうちょっとでこいつら縛り終わるからそれまで横になってなよ」
何とかフードを外し後ろを振り返った少女は声の人物の言葉に驚いた。
その者が言う通り、少女を追っていた追跡者達は全員猿轡をされており、あと一人を残して木に縛り上げられている。
本当に何が起こったの? 少女は目の前の光景が信じられず呆然と声の主が黙々と作業する様子を見つめていた。
わざわざそんな事をすると言う事は全員気絶していると言う事か?
父親達でさえその男達に成す術なく殺されたと言うのに、そんな強者相手を殺さず気絶させる事が出来るなんて信じられない、その事に気付いた少女は驚愕の眼差しを浮かべ改めて声の主を見た。
声の主の身体は、追跡者達に負けず劣らず屈強ではあったがチラリと見えるその顔はまだあどけなさが見える。
どうやら声のイメージ通り自分と同じくらいの年齢だろうと少女は思った。
やがて作業を終えた声の主……若者は横になっていろと言ったのに起き上がったままの少女に少し呆れていた。
少女と追跡者の間に何が有ったのか分からないが、大の大人が雁首揃えて女の子を追い掛けるなんて見過ごせる訳がない。
例えそれが王国騎士団の特殊部隊だったとしても……。
「もう! 寝てろって言ったでしょ。その様子だとすごく疲れて……いるんだろうし……さ」
若者は自分の言葉に素直に聞かなかった少女に対して、少しばかり苦言を言おうと初めて自分が助けた相手の顔を見たが、そこで言葉が止まった。
その様子を怪訝に思った少女は若者に尋ねる。
「あの……どうしました?」
もしかしてこの人は私の正体に気付いたのだろうか? 少女は若者に警戒する。
だが、不思議と心の奥底では若者に対しての悪感情は湧いてこなかった……どこか安心するその声と姿……。
「……みつけた」
黙っていた若者が少女の耳には届かないほど小さい声でポツリと呟いた。
そう彼は見付けたのだ……心が熱くなる……その想いを。
「助けて頂いてありがとうございました。あの……私はこの王国の……」
少女は助けてくれた感謝の言葉と共に、自身の出自を正直に話そうとした。
一度は諦めたこの命、正体を明かしたことによって目の前の若者が懸賞金欲しさに己を王国へと連行しようとするかもしれないと言う恐れは有ったものの、彼によって救われたのだ。
少女は全てを話し若者の判断に身を委ねる事にした。
だが……。
「あぁ~そこら辺の話はいいよ。もう決めたから」
若者は少女の話を遮り笑顔を浮かべた。
何を決めたのだろう? 少女はその真意を読み取ろうと考える。
やはり正体に気付いており問答無用で王国へと突き出そうと言うのか。
そう考えると胸の奥がジクリと痛んだ。
しかし、若者から返ってきた言葉は別の言葉だった。
「君が何者だろうが俺は君を助けるって決めたんだ!」
「そ、そんな、なんで?」
若者の言葉は少女が神に祈っていた言葉だった。
騎士でこそなかったが、……いやそんな事はもうどうでも良かった。
だけど、理由が分からない。
少女はその訳を若者に求めた。
「いや……ほら王国騎士をボコボコにしちゃっただろ? 今更ごめんなさいしても許してくれないだろうしさ」
そう言って若者は背後の木に縛られている男達をチラリと見た。
なるほど……と、少女は素直に納得した。
これほど確かな理由は他にない……、そう思いながらもがっかりした気持ちが湧いてくる。
だけど、その答えに身体の緊張が解けて笑いがこみ上げて来た。
「あははは、確かにそうね。フフ、プフッ」
笑ったのはどれくらい振りだろうか?
父の側近の裏切りから今までの逃亡生活、笑うと言う感情は消えたかと思っていた。
少女はこの若者のお陰だろうか? と、心の中に広がる忘れていた暖かな感情の高鳴りに身を委ねた。
「やっと笑ってくれたね。まっ理由はそれだけじゃないんだけどさ」
若者はそう言うと少し頬を染めて目を逸らしながら頬を掻いた。
その様子に少女の心はトクンと跳ねる。
理由とは何だろう? 自分と同じ気持ちならいいのだけれど……、少女は淡い期待に胸を躍らせた。
「あ、あの……」
「それより君の名前を教えてくれる?」
理由を聞こうとした少女に被せるように若者が名前を聞いてきた。
そう言えば自己紹介がまだだった、少女は自分の名前を言った。
「私の名前はジョセ……、いえ、皆からはフィーネって呼ばれていました。貴方の名前は?」
少女の言葉に若者が笑顔で答える。
「フィーネ……、うん、いい名前だね。俺の名前はカナン」
これが新たなる英雄の小さな始まりの詩。
夢は終わらず、次の命へと繋がっていく。
その出会いを二人の魂は天空から暖かく見守っていた。
fin.
若者達を冒険の道へと駆り立てた情熱も御伽噺として人々の心の奥に静かに宿る微かな火種となって久しい時が過ぎた。
しかして、下級兵士と追放令嬢の遺志がこの世から霧散した訳ではなく、志を継いだ者、憧れたを抱いた者、そして愛を胸に立ち上がった者達がこの世の有り方を変えて人々の営みの中に確かに息づいている。
時は移ろいゆく、民をただ搾取していた貴族主義の封建国家の数も減り、様々な政治形態に名を変え形を変えて声無き者達の声も陽の目を見るに至った。
しかし、だからと言ってこの世は二人の夢の理想郷ではない。
争い、差別、貧困と言った文明の原罪は、いまだこの世界の闇から日々生まれ出でて消える事なく蔓延っている。
だが、二人の魂はその事に嘆くことは有れど、絶望などしない……なぜなら……。
「おーい、交代の時間だぞ」
ここは時代遅れにもいまだ貴族が権威と格式と言う名の暴力をもって支配するとある王国の国境付近。
高い石造りの壁にて街をぐるっと覆われた城郭都市だ。
まだ日は浅く辺りは朝日を待ち望むかのようにひっそりと静まり返っている。
少しばかりくたびれた革鎧に身を包んだ中々精悍な顔付きの兵士と思しき中年男が、街の入り口である大きな門の上に備えられた鐘楼を見上げながら声を上げた。
「やっと交代か~。ふぁ~あ。ずっと立ってたから身体中かちこちだよ」
鐘楼の上からまだ少年の色を濃く残した若い男の声が聞こえてくる。
その言葉からすると、どうやら門番として夜通し街への訪問者を見張っていたのだろう。
訪問者と言っても、この様な辺境とも言える場所に来る者は旅人だけではない。
泥棒や山賊と言った街を狙う武装集団、それに魔物と呼ばれる闇の住人達の望まれぬ来訪に目を光らさなければならなかった。
だが、かつては人類の敵とされた屈強なオーガや暴食のオーク、狡賢いゴブリンさえも亜人として人類と共存するに至った現代。
その様な種族の垣根を越えて手を取り合った者達の奮闘によって多くの魔物達は、その生存圏を更なる深淵へと身を潜めている。
伝説に謳われるドラゴンも既に滅びたのかもしれない。
人食い鬼としてついには人類と相容れなかった恐るべきトロールも、一軍に匹敵すると言われた森の暴君アウルベアも、その他多くの凶悪な魔物達も姿を消した。
たまに目撃した噂が流れてくる事はあれど、この街の住人の多くにとって日常とは別の話である。
しかしながら、いまだに人類の脳裏には、そんな死と隣り合わせだった頃の魔物に対する恐怖が遺伝子レベルで刻み込まれており、夜への警戒を怠る事は出来ないようであった。
「昨夜は何か異常は無かったか?」
鐘楼の梯子を下りてくる若者に中年男が引継ぎ報告を促した。
「なーんもなし。そもそもこんな辺境に好き好んでくる奴なんていないよ」
梯子を下りる若者は眠たげな声でそう答える。
その顔は声同様とても眠たそうに目を細めており、長身でがっしりとした身体つきに比べ、あどけなさが残っていた。
その顔だけを見るとまるで少年のようだ。
実際に先月この国での成年と認められる15歳を迎えたばかりであった。
その年齢差的に少々生意気な口振りだが、中年男はそんな若者の言葉遣いには特に気にする様子は見せない。
どうやら二人はそれなりに気心の知れた間柄で普段からこうなのだろう。
「まぁ分かるがそう言うな。最近は平和になったからと言って気を抜いたらダメだぞ。俺の爺さんの子供の頃にはここら辺にも悪い奴らや魔物達がわんさといたらしいからな」
中年男は若者の言葉に苦笑しながらも注意を促した。
その言葉に若者は「へいへい」と気の抜けた返事を返す。
「お前明日は非番だろ。今日は帰ってゆっくり寝な」
鐘楼への梯子を上り始めた中年男は、門の横の兵士詰所へと着替えに入った若者にそう声を掛ける。
「う~ん、そうしたいのはやまやまだけど、食料切らしてんだ。ちょっと今から森に行ってメシ獲ってくるよ」
兵士装備の革鎧を脱いだ若者が自身の得物である小剣を腰に差し短弓を肩にかけて詰所から出てきた。
どうやら夜勤明けのまま狩りに行くようだ。
「おいおい。今からって寝ずにか? はぁ仕方ねぇな」
鐘楼に登りきった中年男がこちらを見上げている若者を見下ろしながら、かつて己もそうだった若さを少し羨ましく思う。
そして腰に下げた袋から非常食として入れておいた干し肉の包みを若者に向かって放り投げた。
「おい、徹夜のまま何も食わねぇとか倒れちまうぞ。それでも食ってろ」
「ありがと、おっちゃん。たくさん獲れたらおすそ分け持ってくから期待しといて」
若者は笑顔で干し肉を受け取り手を振っている。
中年男はそんな若者の言葉にあきれ顔で声を掛けた。
「とか言って俺のカミさんに獲ってきた獲物を料理して貰おうと思ってるだろ」
「へへへ~バレたか。んじゃ行ってくるよ」
「ったく。まぁ気を付けてな」
そう言って大門横の通用口から近くの森へ向かって駆け出して行った若者の後姿を見送っている中年男だが、実はそれほど心配はしていなかった。
なぜなら若者は、若い頃から腕に自信が有った中年男でも一目を置く強者だ。
年齢に見合わぬ体躯は持って生まれた才能であり、その狩りの腕はこの街の狩人でさえ舌を巻く腕前だった。
若者が言ったように今晩の夕飯は鹿の肉か猪の肉でも食卓に並ぶのだろう。
だからこそ中年男は残念に思う、貴族が幅を利かせているこの国でなければ、若者はこんな片田舎で門番に甘んじる生活など送ってはいなかった筈だ。
父の話では以前はここまで貴族主義ではなかったらしい。
二代前の王位継承の際に大きく政変が行われたとの事だ。
「本当に勿体無い」
中年男は自国の有様に空しさを覚えながらそう呟く。
だが、いずれはこの国から旅立つ為の後押しをしてやろう。
中年男は常日頃そんな夢を自分の妻と語り合っていた。
そう……かつて自分が憧れたあの御伽噺の中の下級兵士のように……。
そんな未来の話を考えて少し顔をにやけさせていた中年男は、視界の端に少し違和感を覚えた。
それは森の奥にある山の中腹辺り、十数羽と言ったところか。
鳥の群れが一斉に飛び立つ姿が見える。
この遥か先には王都があるが、山と森を縦断するような道も無く、往来はそれらを大回りする街道に頼っていた。
この森を通る者は余程の物好きか、それともどこかから流れて来た魔物だ。
そう考え中年男は警戒して危険を知らせる信号ラッパを手に構えたが、暫く経ってもそれ以外に何も起こらない。
中年男は鳥が羽ばたいたのはたまたまだろうと緊張を解き、やがてその事を取るに足らぬことだと忘れた。
◇◆◇
「さ~て、俺のメシになってくれる奴はどこかな~」
森に着いた若者は、そう言って肩に担いでいた短弓を手に持ち矢を掛ける。
先程貰った干し肉は既に胃袋の中。
若い彼にはそれくらいの食糧では満足できなかった。
兎でも鹿でもいい、取りあえず丸焼きにしてかぶりつきたい。
そんな事を考えながら周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいた。
中年男は若者にこの国から旅立たせたいと思っていたが、若者は違った。
かつては冒険に夢を抱いていた事も有ったが、今ではこの平和な街で悠々自適な人生を送るのも悪くないと思っている。
そう思うようになった切っ掛けはこの国の貴族社会に寄るものだったが、何より彼には心から熱くなるように思える物と出会ったことが無かった為であった。
腰を下げ茂みに身を隠しながら辺りに獣の気配に意識を集中させる。
…………、
…………、
…………おかしい。
若者は森に漂ういつもとは違う異様な空気に気付いた。
おかしい……若者はもう一度声には出さず頭の中で呟く。
普段ならこのように意識を集中させると森に住む獣の息遣いが読み取れた。
しかし、今日は違う。
獣が消えた訳ではないが、何かを警戒して息を潜め身を隠している……そう感じた。
「これ魔物のせい……? じゃないね。魔物とは別の……ん?」
ひっそりと静まり返っているお陰か若者は遥か遠く森の更に奥、その場には似つかわしくない微かな雑音を若者は聞き取った。
幾つかの足音や金属が擦れ合う音、そして誰かが助けを求める……。
若者は弓の構えを解き全速力でその音源目掛けて駆け出した。
◇◆◇
「ハァ……ハァ……クッ」
森の中を少女は走る。
その身は薄汚れた外套を纏い、その隙間からはズボンとシャツ、そのどちらも同じく薄汚れていた。
その所々はくたびれてボロボロに擦り切れ穴が開いている所もある。
どうやらその有様からすると少女は何者かに追われ逃亡生活を続けているようだ。
それを証明するかのように少女の背後から数人の足音が聞こえる。
こちらは白く輝く金属で補強された革鎧を身に纏った屈強な男達。
それら全てが統一された型式からすると、この男達は山賊などの無頼な輩には見えなかった。
どことなく門番の二人が身に着けていた革鎧に似ている事から、この王国に所属する正式な兵士達のようだ。
身に付けている装備の重さに森の移動に苦労している様子だが、少女と屈強な男では体力の差は明らかだ。
徐々にお互いの距離が縮まっていく。
「そろそろ諦めたらどうだ! もうお前に逃げ場はないぞ!」
先頭を走る一人の男が目の前を息絶え絶えに走る少女に向けて叫んだ。
男の腕には赤い腕章が付けられてあった、どうやらこの集団のリーダーなのだろう。
しかし少女はチラと目を向けただけで、その言葉に答えずに無言で走る。
だが、この一瞬目線を正面から外したことが、少女に不幸を招いた。
「あっ! キャッ!」
ここは草木が生い茂る森の中。
足元は不安定で木の根が地面に露出している場所も数多い。
今まではそれらが味方して男達から逃げられていたのだが、今度は男達の味方となったようだ。
少女は運悪く落ち葉に覆われ隠れていた木の根のうねりに足を取られて勢いよくその場に倒れ伏してしまった。
しかも転倒の際に酷く足を挫き激しい痛みに起き上がれない。
「ははははっ! マヌケな奴め。そんな様でよくも王国の目を欺き生き延びていたものよ」
「クッ……」
長く続いたこの追跡劇がようやく終わると安堵した男達は、走るのを止め勿体振るかのようにゆっくりと倒れ込んだ少女に近付いていく。
少女は足の痛みにその顔を歪めながらも男共から逃れようと地面を這いながら進もうとするが、その気力とは裏腹に既に疲労困憊な身体は『もう終わりだ』と諦めたかのように動いてはくれなかった。
「こんなところで……終わってしまうの?」
地面に爪を立て藻掻く腕に力が入らない、無事な方の足でさえまるで棒の様にピクリとも動かない。
少女は地に伏して絶望した。
祖父の無念を晴らす為、そしてこの国で苦しむ民を救う為、今まで王国の追手から逃れて身を隠し力を溜めて生きて来たのに……、いつの日か一族再興の悲願を果たすために……と。
その願いは父の側近の裏切りによって全て消え失せてしまったのだ。
一人生き残った少女はその悔しさに、今まで流すまいと堪えてきた涙を止めることが出来なかった。
もうおしまいだ、少女は近付いてくる男達の足音に自身の生涯の終焉を覚悟する。
最悪生き延びる事は出来るかもしれない。
少女の立場からすると本来見つかり次第父親やその仲間達の様に即座に殺されてもおかしくないのにも関わらず、追跡者は弓や魔法と言った殺しの手段を威嚇にしか使わず、わざわざ生きて捉えようと追ってきたのだから。
しかしそれは慈悲ではなく、ただ下卑た男の欲望を満たしたいだけだろう。
生き延びるとはそう言う意味だった。
それも数日程度の物だろうが……。
その証拠に近付く男達の下品な言葉や舌なめずりの音が少女の耳に届いていた。
少女はこれから我が身に降りかかるであろう地獄に恐怖し、思わず幼き日に母から聞いた御伽噺の一節を神に祈った。
『騎士様……どうか……私を助けて下さい』
何を馬鹿な事を……少女は恐怖による現実逃避で有り得ない言葉を思い浮かべた自分に呆れてしまった。
誰も助けてくれるはずがない、そんな事は分かり切っている。
だって、今まで誰も助けてくれなかった……。
だから……。
「ガッ! グェ……」
突然背後から強い打撃音とカエルを踏み付けたような悲鳴が聞こえて来た。
地に伏している少女は急な事態に混乱する。
何が起こったのか確認しようと振り返ろうとしても、その深く被った外套のフードの所為で見ることが出来ず、疲れから起き上がる事さえままならなかった。
少女は混乱しながらも耳を澄ませて状況を確認しようした。
すると追跡者の罵倒と剣戟の音が聞こえてくる。
誰かが追跡者と戦っているようだ。
「貴様! 俺達が何者か分かっているのか!」
「いや~こんな森の中、大勢で女の子を襲うなんて悪者以外ないでしょ」
聞こえて来たのは少年のような声だった。
自分と同じ年くらいの男の子と声? 一体誰なの? 少女の混乱はますます増していくばかり。
しばらく激しい怒号と剣戟が続いていたが、その声が一人減り、二人減り、やがては男達の声と剣戟は聞こえなくなった。
どうやら戦いは終わったようだ。
周囲に聞こえる音は、重い物を引き摺る音や衣擦れの音、あとは縄を結ぶ時に聞こえるようなキュッキュと言ったような音。
少なくともそれらは追跡者達の勝利とは思えない音ばかりだった。
いまだ混乱の中にいた少女は疲れ切って動かない身体に力を入れ起き上がろうとした。
少年のような声の人はどうなったのだろう? そもそも誰なのだろうか? 少女は声の主に想像を膨らませる。
今まで聞いた事のない声だった、だけど……どこか懐かしい……、胸の奥に湧く今まで感じた事のない不思議な高揚感に心臓が高鳴った。
もしかして……本当に御伽噺の……?
「あっ無理しないで。もうちょっとでこいつら縛り終わるからそれまで横になってなよ」
何とかフードを外し後ろを振り返った少女は声の人物の言葉に驚いた。
その者が言う通り、少女を追っていた追跡者達は全員猿轡をされており、あと一人を残して木に縛り上げられている。
本当に何が起こったの? 少女は目の前の光景が信じられず呆然と声の主が黙々と作業する様子を見つめていた。
わざわざそんな事をすると言う事は全員気絶していると言う事か?
父親達でさえその男達に成す術なく殺されたと言うのに、そんな強者相手を殺さず気絶させる事が出来るなんて信じられない、その事に気付いた少女は驚愕の眼差しを浮かべ改めて声の主を見た。
声の主の身体は、追跡者達に負けず劣らず屈強ではあったがチラリと見えるその顔はまだあどけなさが見える。
どうやら声のイメージ通り自分と同じくらいの年齢だろうと少女は思った。
やがて作業を終えた声の主……若者は横になっていろと言ったのに起き上がったままの少女に少し呆れていた。
少女と追跡者の間に何が有ったのか分からないが、大の大人が雁首揃えて女の子を追い掛けるなんて見過ごせる訳がない。
例えそれが王国騎士団の特殊部隊だったとしても……。
「もう! 寝てろって言ったでしょ。その様子だとすごく疲れて……いるんだろうし……さ」
若者は自分の言葉に素直に聞かなかった少女に対して、少しばかり苦言を言おうと初めて自分が助けた相手の顔を見たが、そこで言葉が止まった。
その様子を怪訝に思った少女は若者に尋ねる。
「あの……どうしました?」
もしかしてこの人は私の正体に気付いたのだろうか? 少女は若者に警戒する。
だが、不思議と心の奥底では若者に対しての悪感情は湧いてこなかった……どこか安心するその声と姿……。
「……みつけた」
黙っていた若者が少女の耳には届かないほど小さい声でポツリと呟いた。
そう彼は見付けたのだ……心が熱くなる……その想いを。
「助けて頂いてありがとうございました。あの……私はこの王国の……」
少女は助けてくれた感謝の言葉と共に、自身の出自を正直に話そうとした。
一度は諦めたこの命、正体を明かしたことによって目の前の若者が懸賞金欲しさに己を王国へと連行しようとするかもしれないと言う恐れは有ったものの、彼によって救われたのだ。
少女は全てを話し若者の判断に身を委ねる事にした。
だが……。
「あぁ~そこら辺の話はいいよ。もう決めたから」
若者は少女の話を遮り笑顔を浮かべた。
何を決めたのだろう? 少女はその真意を読み取ろうと考える。
やはり正体に気付いており問答無用で王国へと突き出そうと言うのか。
そう考えると胸の奥がジクリと痛んだ。
しかし、若者から返ってきた言葉は別の言葉だった。
「君が何者だろうが俺は君を助けるって決めたんだ!」
「そ、そんな、なんで?」
若者の言葉は少女が神に祈っていた言葉だった。
騎士でこそなかったが、……いやそんな事はもうどうでも良かった。
だけど、理由が分からない。
少女はその訳を若者に求めた。
「いや……ほら王国騎士をボコボコにしちゃっただろ? 今更ごめんなさいしても許してくれないだろうしさ」
そう言って若者は背後の木に縛られている男達をチラリと見た。
なるほど……と、少女は素直に納得した。
これほど確かな理由は他にない……、そう思いながらもがっかりした気持ちが湧いてくる。
だけど、その答えに身体の緊張が解けて笑いがこみ上げて来た。
「あははは、確かにそうね。フフ、プフッ」
笑ったのはどれくらい振りだろうか?
父の側近の裏切りから今までの逃亡生活、笑うと言う感情は消えたかと思っていた。
少女はこの若者のお陰だろうか? と、心の中に広がる忘れていた暖かな感情の高鳴りに身を委ねた。
「やっと笑ってくれたね。まっ理由はそれだけじゃないんだけどさ」
若者はそう言うと少し頬を染めて目を逸らしながら頬を掻いた。
その様子に少女の心はトクンと跳ねる。
理由とは何だろう? 自分と同じ気持ちならいいのだけれど……、少女は淡い期待に胸を躍らせた。
「あ、あの……」
「それより君の名前を教えてくれる?」
理由を聞こうとした少女に被せるように若者が名前を聞いてきた。
そう言えば自己紹介がまだだった、少女は自分の名前を言った。
「私の名前はジョセ……、いえ、皆からはフィーネって呼ばれていました。貴方の名前は?」
少女の言葉に若者が笑顔で答える。
「フィーネ……、うん、いい名前だね。俺の名前はカナン」
これが新たなる英雄の小さな始まりの詩。
夢は終わらず、次の命へと繋がっていく。
その出会いを二人の魂は天空から暖かく見守っていた。
fin.
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