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第二章
勘違いからの始まり②
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何度も心の中で祈りながら、慣れ親しんだ駅への到着を待つ。こんなに不安な気持ちで新幹線に乗るのは初めてだ。
そんな私の必死な願いも虚しく到着した病院では、すでに父は永遠の眠りについていた――
「うそ! うそよ! 嘘だと言ってよ!」
「凪紗……」
久しぶりに会う母の目は真っ赤で、泣きはらした後だとわかる。兄の目元も赤くなっていた。漁に出ていて、突然の高波にのまれたらしい。海に慣れていても突然帰らぬ人となってしまったのだ。
兄が喪主として、お通夜から葬儀までを取り仕切っている。その様子を、どこか他人事のように眺めているしかできない私。今にも、『凪紗!』と父の豪快な声が聞こえてきそうで、お別れの実感がない。
たくさんの漁業仲間や地元の仲間達に慕われていた父の葬儀は、生前の父らしくにぎやかに見送られた。きっと父の性格を知っている仲間達の思いやりだったのだろう。涙よりも父の思い出話と笑顔で溢れていた。
実感のないまま戻った実家は、静かで物悲しい。
父の笑い声が聞こえない……
一人になると涙が溢れて止まらなかった――
父の葬儀から一週間――
抜け殻の今の私では、とてもじゃないけどお客様を相手に美容師としては使い物にならない。美容室に連絡を入れて、店長へ素直に状況を報告した。
「事情はよくわかったわ。休職扱いにしておくから、しっかり気持ちを切り替えることができたら、いつでも戻って来なさい」
「店長……。ありがとうございます」
「大丈夫よ。お客様もわかってくれるわ」
「はい……」
辛い時に優しくされると、また涙が溢れてくる。この一週間、何度涙を流したかわからない。母も辛いはずなのに、私よりもしっかりと現実を受け止めていた。
突然の父との別れに、私だけが時が止まった感覚になっている。
「凪紗! いつまで落ち込んでるの? ほら、少し散歩でもしてきなさい。お父さんも天国で心配してるわよ」
「ええ~」
「帰って来てからほとんど出掛けてないじゃない」
半ば追い出される形で散歩へ行くことになったのだ。
まさかこの後、運命の出会いをするとは思いもしていない私は、「気分じゃないのに……」とブツブツ文句を言いながら海へ向かう。
そんな私の必死な願いも虚しく到着した病院では、すでに父は永遠の眠りについていた――
「うそ! うそよ! 嘘だと言ってよ!」
「凪紗……」
久しぶりに会う母の目は真っ赤で、泣きはらした後だとわかる。兄の目元も赤くなっていた。漁に出ていて、突然の高波にのまれたらしい。海に慣れていても突然帰らぬ人となってしまったのだ。
兄が喪主として、お通夜から葬儀までを取り仕切っている。その様子を、どこか他人事のように眺めているしかできない私。今にも、『凪紗!』と父の豪快な声が聞こえてきそうで、お別れの実感がない。
たくさんの漁業仲間や地元の仲間達に慕われていた父の葬儀は、生前の父らしくにぎやかに見送られた。きっと父の性格を知っている仲間達の思いやりだったのだろう。涙よりも父の思い出話と笑顔で溢れていた。
実感のないまま戻った実家は、静かで物悲しい。
父の笑い声が聞こえない……
一人になると涙が溢れて止まらなかった――
父の葬儀から一週間――
抜け殻の今の私では、とてもじゃないけどお客様を相手に美容師としては使い物にならない。美容室に連絡を入れて、店長へ素直に状況を報告した。
「事情はよくわかったわ。休職扱いにしておくから、しっかり気持ちを切り替えることができたら、いつでも戻って来なさい」
「店長……。ありがとうございます」
「大丈夫よ。お客様もわかってくれるわ」
「はい……」
辛い時に優しくされると、また涙が溢れてくる。この一週間、何度涙を流したかわからない。母も辛いはずなのに、私よりもしっかりと現実を受け止めていた。
突然の父との別れに、私だけが時が止まった感覚になっている。
「凪紗! いつまで落ち込んでるの? ほら、少し散歩でもしてきなさい。お父さんも天国で心配してるわよ」
「ええ~」
「帰って来てからほとんど出掛けてないじゃない」
半ば追い出される形で散歩へ行くことになったのだ。
まさかこの後、運命の出会いをするとは思いもしていない私は、「気分じゃないのに……」とブツブツ文句を言いながら海へ向かう。
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