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第八章

夏休み③

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 これはデートなのだろうか。仲良しの男子と遊びに行くのは、デートとは言わないのだろうか。

 告白したわけでもないし、瑞希の気持ちもわからない。瑞希にとっては、ただの幼馴染みの女の子かもしれない。

「お母さん、八月の最後の日曜に瑞希くんと水族館に行ってくる」
「フフッ、デート?いつから瑞希くんって呼ぶようになったの?」
「最近?かな」
「お母さんも一緒に行きたいわ」
「もう、止めてよ」
「冗談よ。それまでに宿題終わらせないとね」
「わかってる。朱里ちゃんと図書館行ってかなり進んでるよ」
「由奈はお友達に恵まれてるわね。大切にするのよ」
「うん」

 少し前の由奈なら、深く考えず聞き流していただろう言葉だが、今ならわかる。

 由奈自身が大丈夫と思っても、一人で生きているわけではないのだ。特に、学生時代は友人関係が大きく影響する。

 由奈達のクラスでも、すでに不登校の子もいるのだ。その子は、部活で先輩後輩の関係を拗らせて、学校に来られなくなった。

 小学校を卒業したばかりの子供が、中学校に入れば今までなかった上下関係にぶち当たる。

 悩みごとの種も一気に増え、ややこしくもなる。

 公園で男女関係なく鬼ごっこをしていた頃とは大きく変化してしまうのだ。

 スマホでの犯罪の加害者、被害者共に低年齢化しているとニュースで見た。小さな機械で中学生でも加害者になることがあるのだ。

 グループのメッセージでは入っているメンバーしか見られないが、絵里香達はSNSを始めたのだ。

 安易に投稿すれば、一瞬で世界のどこまででも届いてしまう。

 親が設定した年齢制限を、由奈や朱里は解除していないが、絵里香達は確実に解除していそうだ。

 知らなかったでは済まされない世界に足を突っ込んでいる。しかも無自覚に……。

 グループメッセージには、どこからの情報かわからないが、絵里香達が万引きしていたらしいや、パパ活っぽいことをしているのではないかとまで言われている。根拠なく言われていたら悪質だが、疑われるような状況にあるのだろう。

 テレビのニュースで見るような話が身近でも現実に起きているしれないというだけで、恐怖を感じる。





 
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