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第九章

初デート⁇②

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「なんか信じられない……」
「お母さんは持ってなかったから見せてもらったことしかないけど、小さな画面に文字が入るんだから驚いたわ」
「見てみたいかも……」

 由奈が生まれた頃にはすでにスマホが出始め、物心つく頃にはある程度普及していて、スマホが当たり前のアイテムだったのだ。

 スマホがない時代は想像も出来ない。

 スマホがないと不便なことばかり浮かぶが、便利に比例して厄介なこともあることを思い出す。

「お母さんが子供の頃は、交換ノートとかしてた?」
「小学校の時は交換日記って言ってたわ。すごく流行っていて、仲良かった子としてたわよ」
「そうなんだ」
「今は簡単に連絡できるからあまり聞かないわよね。みーくんみたいにみんなが持っていても、持たないと言える意志と考えは素晴らしいと思うわ」
「みんなが持っているのに自分が持っていないと不安に感じるもん」
「その気持ちもわかるわよ。だから、由奈を信用して持たせてるんだもん」

 母からの信用しているという言葉が胸に響く。悪いことをするつもりは全くないが、絵理香達を見ていると怖くなるのだ。

 

◇◇◇

 待ちに待った八月の最後の日曜日――。

 由奈は数日前から服装に悩み、昨夜は緊張でなかなか眠れなかった。

 地元の駅の噴水前に十時に待ち合わせをしているが、朝七時には目が覚めた。いつもはスマホのアラームを掛けて起きているが、今日は鳴る前に目覚めた。

 由奈のスマホは、夜十一時から朝の七時までは、通話以外の動作は出来なくなっている。高校生になるまでは、解除してもらえない。

 由奈自身、夜に使うことがないので困ることはない。朱里も同じ制限が掛かっているし、緊急の時は電話をしたらいいのだ。

 夜中まで通知音で起こされることもなく不満はない。

 リビングに行くと両親の姿があり、日曜の朝早くに起きてきた由奈に驚いた様子だ。

「どうしたんだ?早いなぁ。今日は何かあるのか?」
「う、うん……」

 父から聞かれたが何と答えていいか微妙だ。

「あなた、年頃の女の子なんだから、色々あるわよ」
「えっ?!まさか、デートか?!」
「……。デート……ではないと思う」
「なんだ?はっきりしないなぁ」


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