【R18】黒猫は月を愛でる

夢乃 空大

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第一章 黒猫の恋

第7話 黒猫の部屋は見覚えのあるマンション-前編-※

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 あれから店を出てタクシーで数分。
 私は見覚えのあるタワーマンションの前で立ち竦んでいた。

 間違いない、忘れもしない……
 あの日ワンナイトやらかした現場である。

 あのやらかした朝に飛び出したぶりに訪れたマンションは、相変わらず豪華で、あの日を思い出し、思わず遠い目になる。


「ん?何か思い出した?」


 表情なく遠い目をしている私の頭の上から、笑いを噛み殺したようなバリトンボイスが聞こえる。声の表情からして明らかに面白がっていることが伺えた。


「い、いえ、何も……立派なタワマンだなぁって……思って…」

「ふぅん。それはありがとう。」


 私の嘘を見抜いているかのように、猫実さんは横で楽しそうにくつくつと笑う。
 気まずくなり目を逸らす私の腰に、猫実さんは当たり前のようにするりと手を回した。


「鞄、重いでしょ。持つからかして。」


 そう言うと私の腕から荷物を外し自分の鞄と一緒に左手に持ち、そのままぐいと私を抱き寄せ身体を密着させると、満足そうに猫実さんは微笑んだ。
 不意に抱き寄せられ、ふわっと猫実さんの香りが鼻腔を擽る。
 身体がピッタリと密着する事で、嫌でもこの後行われるであろう行為を想像してしまい顔が蒸気する。

 猫実さんはそんな私の様子をみて、目を細めるとそのままエントランスに進んだ。


「悪いけどオートロック開けてくれる?」


 私を抱き寄せたまま猫実さんは少しだけ前屈みになり、目線でシャツの左胸のポケットを指すと、すぐ横に猫実さんの綺麗な顔が来てドキリと心臓が跳ね上がった。恥ずかしすぎて顔を直視出来ない。
 バクバクと煩い心臓の音を気にしない様にしながら、おずおずとポケットを覗き込むとタバコの他に鍵らしきカードが入っていた。


「えと、これですか?」

「うん、それ。そこに翳せば開くから。」


 緊張で震える手でカードキーを取り出すと、言われるままオートロックに翳して施錠を解除する。
 猫実さんは私を抱き寄せたまま躊躇することなく、そのまま早足でずんずんとエレベーターホールまで足を止めることなく一直線に進んで行った。

 ちょっと待てちょっと待て!まだ全然心の準備出来てないんですけど!

 緊張と激しい動悸で上手く言葉が出ない中、精一杯の声で猫実さんを呼び止める。


「あ、あの………」

「ん?なぁに?」


 くるりと振り返った猫実さんの熱い眼差しに射抜かれてあわあわする私に、余裕たっぷりの笑顔で猫実さんは返事をした。
 上目遣いに見上げるも艶然と微笑まれ、更に私は萎縮する。


「あの………私…こ、心の準備が…出来てないっていうか、その………」


 もう、いっぱいいっぱいです………


 と、消え入りそうな声で何とか状況を伝えた。

 それはそうだ。一度身体を重ねたとはいえ、全く記憶にないのだから初対面といっても差し支えないだろう。それに、仕事においてはかなり…いや相当リスペクトしている憧れの人である。
 加えて、猫実さんは相当なイケメンである。イケメン耐性の無い私が緊張するのは当然だろう。


「ふぅん。そっか。」


 俯きうろたえる私を横目でチラリと見て、猫実さんはまたすぐにエレベーターの方に視線を戻し一言だけそう言った。
 心做しか、少しだけ腰に回した猫実さんの腕に力が入った気がした。
 チラリと横の猫実さんを見上げると、片方だけ口角を上げて薄く笑んでいる。

 チン、とベルが鳴り、到着したエレベーターの扉が開き、促されるようにエレベーター内に一歩歩を進めると、くるりと身体の向きを猫実さんの方に向き直され抱き締められる。
 抵抗する間もなく背中をエレベーターの壁に押し付けられ、そのまま猫実さんの檻に閉じ込められた。

 うなじの辺りに猫実さんの熱い息がかかり、背筋がゾクリと疼いた。猫実さんは私の首筋に唇を落とし軽く吸い上げると、そのまま唇を耳まで這わせ耳たぶを食んだ。

 ぬるっとした感覚に身体がビクリと反応し熱くなってくる。
 猫実さんは、そんな私の変化を見逃す事なく、私の熱を更に煽るように耳たぶをねっとりと舐りながら、欲情をたっぷりと含んだ甘いバリトンボイスで恐ろしい事を囁いた。


「っ…余裕ない?でもごめんね。心の準備?そんなの待てないな。俺の事忘れちゃった君が悪い。だから、今日は絶対に忘れられないようにしてあげるから覚悟してね。」


 そう言い終わると同時に、噛み付くようなキスをされた。



 ◇◇◇



「あっ…ふっ……んうっ」


 狭いエレベーターの中で、猫実さんにたっぷりと唇と舌を舐られた。じゅるじゅると舌を吸われ、唾液を注がれる。
 ふたりの荒い息と鼻にかかった甘い声に腰が痺れ、足ががくがくするが、猫実さんは容赦してくれず、更に私の口腔の奥深くへ侵入してくる。

 呼吸が出来ず、口をぱくぱくするも、それすらも猫実さんの唇に捉えられてしまう。
 いつの間にか、私の両腕は猫実さんの首筋に回され、もっとと強請るように夢中に頭を押し付けている。
 猫実さんに与えられる刺激は蜂蜜のように甘く、先程までの私の優柔不断な思考を簡単に蕩かしていく。凄まじい程の快感に突き動かされ、猫実さんの唇を貪る。情欲に抗えない。

 激しいキスが止み、名残惜しそうに唇を離すと、猫実さんは切なげな表情をして、啄むキスを落とした。


「仲原さん、舌出して。ちゃんと見てるんだよ?いい?」


 苦しげに言われ、胸がキュンと締め付けられる。言われるままに目を開けて舌を出すと、猫実さんも長い舌を出して見せつけるように絡める。
 くちゅくちゅと淫らな水音が響き、舌と舌の先に唾液が糸を引いた。


「っは…ほら見て。繋がった。はぁ…堪らない…早くこっちも繋がりたいよ。」


 そう言って、私のスカートを捲り上げ、割れ目をストッキングの上から指でなぞる。


「あっ…んっ…」

「ふふっ、気持ち良さそうだね。沢山触ってあげるから、もう少し…ね。」

「いやぁ…はっ……んっ…」


 猫実さんは、私の痴態を欲情の篭もった目で眺め、熱い吐息と共に耳元で囁いた。


「嫌じゃないでしょ?こんなに濡らして…もうぐっちょぐちょなんじゃない?」


 その瞬間、ゾクゾクっと背筋に快感が走り、腰が抜けて猫実さんの胸にもたれかかった。
 その時、ちょうどエレベーターが目的階に到着し扉が開いた。
 猫実さんは私の額にキスを落とし、腰が抜けて立てない私を抱き上げてエレベーターを降りた。


 ◇◇◇


 ピーッ、ガチャ


 乱暴に玄関のドアを開けると、また激しいキスが降ってくる。
 荷物を投げ捨て、抱き上げたまま、片手で靴を脱がしていく。そのままストッキングをスカートごと引き抜き、床に落とした。

 性急な激しいキスに息が乱れるが、それよりも猫実さんと繋がりたい気持ちが勝ち、自らも腕を絡め猫実さんの唇を求めた。
 猫実さんは、堪らない、と熱い吐息を吐き、私の胸元を強く吸った。白い肌に赤い華が咲く。それを恍とした表情で眺め、また激しいキスをする。

 キスをしながら、スーツの上着、ブラウスを次々と剥ぎ取りながら寝室へ向かう。そして、生まれたままの姿でベッドに横たえられる。

 ひんやりとしたリネンが肌に触れ、リネンから覚えのある猫実さんの香りが漂う。まるで猫実さんに抱かれているような感覚に頭がぼぅとした。

 猫実さんは、私の頬を愛おしそうにひと撫ですると、顔中にちゅっちゅっとキスの雨を降らせる。熱っぽい瞳で見つめると、ちょっと待ってて、と少し乱暴にジャケットを脱ぐ。
 しゅるっとネクタイを抜き去って、メガネを外し髪を掻き上げる…ただ、それだけなのに、その姿がとても濃艶で思わず見蕩れていると、猫実さんはシャツの前を肌蹴させながら、こちらをみて艶然と笑んだ。


「ふふっ、仲原さん、蕩けそうな顔してるね。」

「猫実さん…私…何か変なの。」

「うん?何が変なの?どこも変な所なんてないよ。」


 全部綺麗だ、そう言って、猫実さんは目を細め、私の上にのしかかり、額にキスを落とす。
 先程のように顔中にキスを落とし、やがて唇にちゅっと音を立ててゆっくりとキスをする。啄むようなキスから始まり、だんだんと深まり、貪るようなキスに変わる。


「んぅっ…猫…さん、激しい」

「っ…早く君と繋がりたいからね。」


 猫さんは首筋に唇を這わせ、強く吸い上げる。場所を変えながら、首筋、胸元を強く吸い上げ、赤い華を咲かせていった。猫実さんは、私に咲かせた沢山の所有の印を見て、満足そうに微笑むと、やわやわと胸を揉みしだいた。
 私の口から甘い溜息が漏れる。


「はっ…あん……」

「仲原さん、ここ、ぷっくりしてきたよ。もしかして、期待してるのかな?」

「いやぁん、意地悪言わないでぇ…」

「ふふっ、意地悪好きなくせに。可愛い。」


 そう言って猫実さんは、ぷっくりと色づき膨らんだ胸の頂を口に含み、ねっとりと舌で転がすように舐めた。
 突如与えられた強い刺激に、背筋がビクビクと仰け反る。思わず、猫実さんの頭を掻き抱き、ふわふわの髪を乱す。結果、猫実さんの顔に胸を押し付けるような形になり、更に刺激が強くなった。


「ふふっ、気持ちいい?もっと舐めてあげるよ。」


 猫実さんは、私の反応を愉むように、執拗に胸の頂きを弄り続けた。わざと音を立ててじゅるじゅる吸ったり、もう片方の胸の膨らみを空いた手でグリグリ摘んだり、手のひらで軽く摩ったりする。
 ちりちりとした甘い刺激が断続的にやって来て、快感に身体をビクビクと震わせる。
 でも、物足りない、もっと下の方にも触れてほしい。体の中心が疼いて仕方がなく、焦れったい気持ちになる。


「猫っ…さぁ、ぁんっ……そこ…いやぁ…」

「仲原さん、嫌なの?ほら、気持ち良いでしょ?」

「あぁぁぁっ……ん…」


 そういって、猫実さんは胸の頂きにカリッと歯をたてた。
 その瞬間頭の芯が痺れ、背筋に快感が走り、お腹の奥がギュッなった。背中を仰け反らせて快感に溺れる。
 ちゅぱっと音を立てて胸から口を離すと、猫実さんは意地の悪い笑みを浮かべて言った。


「あぁ、胸だけじゃ物足りないんだね。腰が揺れてるよ。」


 猫実さんの言葉に顔が熱くなる。
 その通りだけど…言葉にされると恥ずかしい。羞恥に顔を背けると、情欲に濡れた目で覗き込まれる。


「言葉にしてくれないと、わからないよ?どこを、どうして欲しいの?」

「む、無理ぃ……恥ずかしい…」

「ふぅん。じゃあ、言いたくなったら言って。それまで触れてあげないから。」


 猫実さん意地悪そうにそう言い、するりと太ももの内側を撫でた。
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