【R18】漆黒の王太子の一途で重い純愛〜痴情の果てに初恋の姫を溺愛する

夢乃 空大

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トラヴェエ王太子の責務と恋

■謁見の間にて1

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 私の執務室へ謁見の間に来るようにと国王陛下父上から使いが来たのは数刻前。

 アイリーンの件で以前から国王陛下父上にお目通りを お願いしていたので、その呼び出しだろう。

 約束の時間は昼食後だ。

 時計を見るとお昼はとうに過ぎており、間もなく約束の時間になる。私は仕事を一時中断し、簡単な軽食を摂った後執務室を出た。

 謁見の間に向かう回廊を歩いていると、中庭が見えてくる。
 庭の木々の葉は色づき始め、一面の緑から赤や黄色等カラフルに様変わりしていた。

 木々の葉が完全に色を変え葉が落ち始めると、いよいよ私の生誕祭だ。
 その場でアイリーンを婚約者としてお披露目したいと考えていた私は、その前に求婚をすべく密かに根回しをし準備をしていた。
 準備は着々と進み、残すは国王である父へ願い出るのみである。

 長年降る様に舞い込む縁談を断り続けた王太子の結婚の願いなので、きっと父上も両手もろてを上げて賛成してくれるに違いない。

 王太子である私の婚約や結婚には国王の承認が必要であるため、数ヶ月前から内々にお目通り頂けるよう打診はしていたのだが、国王である父上はもちろん、私も日々忙しくしていたため、なかなかタイミングが合わなかったのか、謁見は叶わなかった。

 思えばこの5年間の事を振り返ると、彼女を手に入れるために、目に見えた成果を出す必要があると考えた私は、とにかく王太子として与えられた政務以上のものをこなしてきていたのだから、忙しさに忙殺されるの当然と言えば当然である。

 それに、内政以外にも潰しておかねばならない懸念事項があり、私は結婚前になるべくそういったものを排除すべく日々動いていたのだ。

 潰しておかねばならない懸念事項……
 それは、隣国オラダス帝国の侵略的南下である。

 我が国、リトヴィエ王国の北側に位置する大国オラダス帝国は、数年前に代替わりしてから積極的に他国へ侵攻し、領土の拡大を図っていた。
 もちろん、それは彼国の南側にある我が国に対してもである。

 代替わり後直ぐに条約を破棄した新皇帝は、領土拡大の為、国境付近に幾度となくオラダス軍を派兵して来ている。

 私は王国最強の我が軍エクレール稲妻を引連れて軍神さながら戦場を駆け抜け、連戦勝利を収めて阻んできた。

 その様から私は『漆黒の雷神』、また全ての戦で勝利を収めてきた結果『大陸最強王子』などとも呼ばれるようになっていた。

 アイリーンとの話を進めるに当たり、憂いごとはないに越したことはないので、戦争だけでなく積極的に政治にも参加をした。
 その結果、戦果を上げるだけではなく、他国に頼らずとも済むように外交や国防に力を入れ他国の侵略を牽制し、戦でも外交でも大陸最強国家と周辺諸国に言わしめる程にもなった。
 そうして、5年をかけて足場をしっかりと固め、やっと彼女へ求婚するための準備が整ったのだ。
 あとは国王である父へ、この胸の想いを打ち明け、彼女アイリーンを娶りたいと告げるだけだった。

 幼い頃から共に過ごし、勝手知ったる仲であるため、国王も宰相もきっと反対はしないだろう。もちろん、彼女は宰相の娘であるから家柄も問題ない。

 そう、私たちの結婚には何も障害がないのだ。

 私のアイリーン

 出会った時はまだ小さくて柔らかくて儚げで…天使のようだった。
 幼い頃に私が護ると誓った彼女は成長するにつれ、本当に美しくなっていった。
 社交界デビューの舞踏会でみた彼女は、耀くばかりの笑顔でその美しさで周囲の熱い視線を独り占めしていた。

 その熱視線に焼け付くような嫉妬を覚えた私は、周囲の男共をアイリーンに寄せ付けないための牽制の視線を送り続けた。

 その後も親友でありアイリーンの兄であるジュストに彼女の周囲を探らせ、私のアイリーンに近づこうとした男共を陰から排除してきた。
 その甲斐あってか、未だにアイリーンは婚約者はおろか恋人もいない。

 それも全てこの日のため。全ての状況を万全に整えてきたのだ。

 長年の想いが叶うまであと僅かだと思うと自然と頬が緩んでくる。
 しかし、このようなだらしのない顔では格好がつかないどころか、話が頓挫してしまう事も考えられる。
 ここはきちんと気を引き締めなければと、私は緩みそうな顔を引き締めて謁見の間に向かって歩を進めた。

 初めにお目通りをお願いしてから、数ヶ月。そろそろ強行突破をする頃かと思い始めていた時、ようやく念願のお目通りが叶う。

 やっとだ!やっと彼女が欲しいと告げることが出来る!

 私は高鳴る胸と逸る鼓動を抑えつつ、指定された時間に謁見の間に入ると、王座に座った国王陛下父上が何故か厳しい顔をしていた。隣の宰相も険しい表情で、ピリピリと空気が張り詰めているのを感じた。

 その空気に当てられ、私の先程までの浮かれた気分は段々と萎んでいく。

 私はこうべを垂れて国王陛下父上から声がかかるのを待っていたが、一向に声がかからない。

 一体何があったのだろうか。

 どちらからも言葉を発することはなく、お互い押し黙っている。重い沈黙のまま時間だけがいたずらに過ぎて行った。


 張り詰めた空気が一層重くなると、程なくして、先に沈黙を破ったのは国王陛下父上だった。

 ふぅと長い息を吐いた後意を決したのか、国王陛下父上はゆっくりと重い口を開いた。
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