【R18】漆黒の王太子の一途で重い純愛〜痴情の果てに初恋の姫を溺愛する

夢乃 空大

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トラヴェエ王太子の責務と恋

■爆ぜた想いと決意2

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 気がついた時には私は衝動的にアイリーンを胸に引き寄せ強く抱きしめていた。
 腕の中の柔らかな肢体から甘い香りがふわりと香り、鼻腔を擽る。
 それだけで私の心はどうしようも無く高鳴った。

 長い間想い続けて押し込めていた気持ちが、いとも簡単に爆ぜた事に自分でも驚きを隠せなかったが、それと同時に胸の中には歓喜の波が止めどなく押し寄せ酷く興奮した。

 高鳴る鼓動は一向に鳴り止まず、戦場を駆け回っている時よりも激しい激情に支配され、どうにかなってしまいそうだった。


 好きだ
 幸せだ
 愛している
 どうしようもなく君が欲しい


 気持ちがとめどなく溢れでて、その流れは留まることを知らず濁流の如く私の理性を飲み込んでいく。
 堪らなくなり、髪に顔を埋め深く息を吸い込むと、アイリーンの甘い匂いが鼻腔と肺を満たしていき、頭がクラクラする程の何とも言えない幸福感に包まれた。
 腰まである美しいプラチナブロンドの髪は指で梳くと、サラサラと手から零れ落ちていく。
 絹糸シルクのような心地の良い感触を味わっていると、ふと、髪を梳いていた指が耳たぶに触れるとアイリーンの口から甘い声が漏れた。


「んっ……」


 その甘い声に頭の芯が痺れ、危うく理性が飛びそうになる。
 プラチナブロンドの髪の隙間から見える耳が真っ赤に染まっている事を確認すると、もう気持ちをおさえられなかった。

 私はもっとアイリーンの甘い声が聴きたくて、そっと撫でるように首筋に指を這わせると、堪らないというようにアイリーンは甘い吐息を吐いた。


「…っうんっ…」


 蕩けてしまいそうな程甘く熱い吐息に、わずかに残っていた理性はあっけなく瓦解した。

 アイリーンの何もかもが甘い
 匂いも柔らかな身体も笑顔も
 そして洩らす吐息ですら……

 その甘さが私の思考をドロドロに蕩かしていく。もうこのままどろどろに溶けてしまいたいと、私は腕の中にある甘い彼女の身体にに暫し陶酔した。

 ふいに顔が見たくなり、抱きしめる腕の力を緩めゆっくりと身体を離すと、アイリーンは俯いたまま小さく震えていた。
 私は俯くアイリーンの細い顎を指で掬い上げ瞳を覗き込む。
 アイリーンの美しい碧い瞳は涙で潤み、羞恥と驚愕の色に染まりゆらゆらとゆれていて、私はその瞳に一瞬で捕えられた。

 そのまま、私は顎から頬へするりと指を滑らせていくと、アイリーンは目を閉じぴくりとぷるんと唇を震わせ、艶の含んだ吐息を漏らした。


 今この時、時間が止まればいいのに…
 そうすれば永遠にアイリーンと共にいられるのに…


 自分の中に情欲の火が灯った事を自覚し、徐々に縮まっていく距離…
 鼻と鼻が触れ合う程距離が縮まった時、ふいにアイリーンが腕の中でビクリと震えた。


「……ヒュー…兄様……?」


 アイリーンの戸惑いを含んだ声に、私ははっとした。
 私は今何をしようとしていたのか。


「……すまない。どうかしていた。」


 私は咄嗟にアイリーンからバッと身体を離すと、真っ赤になって固まっているアイリーンをあやすようにぽんぽんと撫でながら、私自身も気持ちを落ち着かせるように、深く息を吐いた。
 そして、彼女をゆっくりとカウチへ座らせ自分は向かい側のソファに腰を下ろすと、私は扉の向こうの侍女に声を掛けた。

 お茶の支度を急がせると、控えていた侍女達によって慌ただしく目の前に飲み物と菓子が並べられていく。

 どうしようもなくほてった身体と昂った気持ちを鎮めるように、ティーカップを口に運ぶ。
 乾きが潤い、紅茶のいい香りが鼻を抜けていく。
 その香りが、先程まで鼻腔を支配していたアイリーンの甘い香りを掻消し、同時に頭にかかっていたモヤが消え、すっと冷静になる自分がいた。


 今はこれでいい。これ以上怯えさせるわけにはいかない。
 だが、やはり私はアイリーンが欲しい。
 寧ろアイリーンしか欲しくない。


 先程アイリーンと抱き合った際に感じた得も言われぬ幸福感を今更手放す気はない。

 どんなに時間がかかったとしても、どのような手段を講じても、必ずどんな卑怯な手を使ってでもアイリーンを手に入れる。

 私としては婚約などではなくすぐにでも婚姻を結びたいところだが、立場上それは不可能だろう。
 それであれば、まず婚約を結ばねばならない。王家からの正式な打診であれば公爵家は断る事はないだろうから、婚約成立は堅い。
 後はアイリーンの気持ちの確認だが、例え婚約が成立したとしても、婚儀までは早くても1年はかかるだろうから、それまでにゆっくりじっくり時間をかけてアイリーンには私の所に堕ちて来て貰えばいい。

 そう決意をしたら驚く程心が軽くなった。私は幼いに誓いを立てた時のような高揚感を感じた。

 問題はどうやって周りを納得させてアイリーンを手に入れるかだ。
 方法は……ひとつある。


「……ヒュー兄様?どうされたのですか?」


 難しい顔をして黙り込んでいる私にアイリーンは可愛らしく小首を傾げて訊ねる。
 そんな可愛らしいアイリーンには今の私の心の内は見せられない。
 私は狂おしいほどの情欲と荒れ狂う感情を綺麗に隠して、アイリーンに出来るだけ優しく微笑んだ。
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