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トラヴェエ王太子の責務と恋
□予期せぬお泊まり
しおりを挟むううむ、一体何がいけなかったのだろうか……何故か余計に不機嫌になってしまった。
悪いことをした訳でもないのに、何となく気まずい空気が流れて居た堪れなくなった私は話題を変えようと、兄の執務室でも疑問に思った事をきいてみる事にした。
「でも、何故今回の訪問は王女殿下なのでしょう?前回までは王太子殿下が訪問されていたと思うのですが……何か理由でもあるのですか?」
この私の発言にヒュー兄様ハッキリと驚きの表情を見せた。やはりこれには何か理由があるのだろうが、もしかしたら地雷だったのかもしれない。
おいおい分かるとは言われていたがどうやら兄もヒュー兄様も知っていることは間違いなさそうだ。だけど、当事者の私が理由を知らないのは些か不服で、私は畳み掛けるようにヒュー兄様に詰め寄った。
「ジュー兄様はおいおい分かると仰ってたけれど、ヒュー兄様も理由を教えて下さらないの?」
そう言って恨みがましい目で睨め付けるも、どことなくヒュー兄様は上の空で、時折何かブツブツと呟いたり黙り込んだりと何かを深く考えて込んでこちらの話は聞いていない様子だ。
「兄様?……ねぇ、兄様?」
目の前で手をひらひらと振っても気が付かない程考え事に没頭しているヒュー兄様はいつになく目が真剣でちょっと怖かった。
しかしながら、いつまでもこのままの状態は私も辛い。
「もう!ヒュー兄様ったら!!!聞いてますか!?」
意を決して少し語気を強めて声を掛けると、ヒュー兄様ははっとした表情をして戻ってきた。
「あ、あぁ……すまない少し考え事をしていた。」
ヒュー兄様はそう小さく呟くと、徐にソファから立ち上がり、側近を呼び付け何やら指示をするとまたゆるりとソファに腰を下ろした。
畏まりました、と側近が下がると今度はニッコリと綺麗な笑顔を私に向けてこう言った。
「ねぇ、リーナ。今日はもう遅くなってしまったから、王城に泊まるといい。お腹が空いたろう?夕食を運ばせるから一緒に食べよう。昔みたいに。」
「でも……」
「ねぇ、リーナ。ひとりで食べる夕食ほど味気ないものはないんだよ。ね?いいでしょう?」
ヒューゴがこの笑顔で言葉を発する時は、こちらには拒否権はない。決定事項である。
逆らおうものなら………考えただけで恐ろしい。
なので、こうなった以上、私は屋敷に王城に泊まることを知らせるために使いを送る他に取れる手段はなさそうだ。
仕方がないので、今日は王城の客室を用意してもらおうと、早々と諦めてヒュー兄様の提案を受ける事にした。
それに、先程からヒュー兄様のことが気になって仕方がない。
綺麗な笑顔なのに、何か物悲しく見えるのは気の所為だろうか。先程から度々考え事をしているのか、時折意識が外に向いているのも少し気になる。
今まで見たことのないヒュー兄様の姿に心がザワザワして落ち着かなかった。
私が返答をしないままあれよこれよと思考を巡らせているのを見てNOと受け取ったのか、ヒュー兄様は綺麗な笑顔を崩さないままトドメの一言を言い放った。
「心配しなくてもそろそろ使いが公爵家に到着した頃じゃないかな?王太子から直々の使いだ。宰相である君の父は承諾せざるを得ないよ。だから大丈夫。安心してここににいてくれていいからね。」
正式に抗議するには色々と面倒だからね、とさらりと付け加えると、こちらの意向は関係無いと言外に示して優雅に笑う。
この短時間でなんという手回しの速さだろう。
既に父にも兄にも、ヒュー兄様と一緒で王城の客室に宿泊する件が伝わっているのであれば思い悩む必要もない。
私は苦笑いを浮かべながら同意の意味を込めて頷いた。
「わかりました。今日はお言葉に甘えて……」
「そう。よかった。じゃあ昔みたいに私の膝においで?食べさせてあげよう。」
私が言い終わらないうちに、ヒュー兄様の言葉が頭上から聞こえたかと思ったら、次の瞬間には横抱きに抱き抱えられて膝の上に乗せられていた。
混乱する私に、ヒュー兄様はまたもや有無を言わせないあの綺麗な笑顔でこう言い放った。
「リーナはここが好きだったよね?」
えぇと…それはいつのお話でしょうか…
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