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ハイデリガ王女の決意
オラダス帝国の侵攻
しおりを挟む平和だった日常に嵐は突然やってきた。
妹姫のフローリアと中庭でお茶をしている時のこと、急に騎士団に招集がかかったようで城の方が一気にバタバタと騒がしくなり、一気に護衛達に緊張感が走った。
「クロード……一体どうしたのかしら…?」
私は守護騎士であり護衛でもあるブルーム騎士団団長のクロードをに視線を送る。
すると、伝令係の兵士が慌てた様子で中庭に飛び込んできた。
「火急の事態の発生故、御無礼をお許しください!!!ブルーム騎士団、アエラス騎士団、シエル騎士団の3騎士団の団長と副団長に招集がかかっております!!!バリー団長、至急謁見の間においでください!!!」
「姫様、申し訳ございませんが、少し席を外さねばならなくなりました。」
「わかったわ。急いで行ってきて。」
「はい、申し訳ございません。代わりの護衛を置いて行きますが、何かあればお呼びください。何を差し置いても必ず馳せ参じますので。」
そう言って、クロードはマントを翻し早足で謁見の間へ向かって言ったら。
私は何か良くない事が起こっている、そんな胸騒ぎがして落ち着かなかった。ピリピリした空気にフローリアもどことなくソワソワし始め、お茶会どころではない事を理解する。
「とりあえず、お茶会はここまでに致しましょう。」
◇◇◇
暫くして謁見が終わり、護衛に着く為戻ってきたクロードは、眉間に深い皺を寄せて険しい顔をしていた。
「クロード、一体何が起こっているの……?」
「姫様……」
事情を聞くと、クロードは重たい口を開いて、今の現状を話してくれた。
先程の招集は国境地帯のマルグリア城の砦からの援軍要請の早馬だったとの事だった。
ハイデリガ・リトヴィエ・オラダスの3国の国境を接する山間の辺境の砦マルグリア城が、北側のオラダス帝国の奇襲を受けたそうだ。
マルグリア城は北方の要塞で、王都ハイデンベルグからは馬車で7日程、馬で寝ずに駆けても3日はかかる。
と言うことは、少なくとも奇襲があったのは3日以上前になる。
マルグリア城はオラダス帝国との国境にあり、いままでも好戦的なオラダス帝国の侵攻を幾度となく防いだ我が国最強の砦だが、今回はちょうど任期を終えた警備兵と新たに赴任する警備兵が入れ替わる時期で、どうやらその警備の手薄な時期を狙われたようで苦戦を強いられているようだ。
このまま行くと近々王都も戦になるかもしれない、とクロードは苦しそうに言った。
王都も戦に巻き込まれる……
先程まで幸せな気持ちが消え、頭から血の気が引いていく。
「戦……になるの?」
「今はまだ何とも…まずはマルグリア城へ援軍を送る事を決定しました。明日出立となります。」
明日出立……援軍は誰が行くのだろうか。
気になった私はクロードに訊ねた。
「クロード、貴方の騎士団が出るの?」
「いえ、今回は王太子殿下がアエラス騎士団を率いて向かわれるとのことです。」
「お兄様が?戦況は?良くないのかしら…ねえクロード、私に何か出来る事はない?」
「姫様……姫様がお気になさる必要はございません。」
「でも……!!!」
「この話は終わりです。俺が必ず貴女をお守りしますので、どうぞごゆるりとお過ごしください。」
そう言うと、クロードはそれっきり口を閉ざし警護に戻ってしまった。
私はクロードの横顔を見つめながら、クロードの出陣がなかった事に不謹慎にもホッと胸を撫で下ろした。
私の守護騎士のクロード・バリーは幼馴染で近衛騎士団の団長だ。
クロードは近衛騎士団所属なので、王族の警護が主な任務である。団長であり幼馴染であり、側近として本当は兄に随行したかったはずなのに、クロードが立てた誓いによって私がクロードのことを守護騎士として縛り付けてしまっている。
私は少し後ろに控えるクロードを振り返り見つめた。
ねぇ、クロード…あなたは私の気持ちに少しでも気がついているのかしら?
私はこの国の第一王女。
王族の私は貴方にとっては警護対象でしかないのはわかっているけれど……
クロード、少しでもいいの、私の事を貴方の瞳に入れて欲しい…
私は切ない気持ちで難しい顔をして何やら考えているクロードを見つめづつけた。
その視線が決して交わらないことはわかっているのに……
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