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第6話 KINDERGARTEN SISTER③
しおりを挟む「ねーねー。おねーちゃんはおなまえなんていうのー?」
「よしおかせんせーは?」
「るいくんがまさとくんぶったー!」
わらわらと園児たちがフランチェスカを取り囲むようにして群がる。
女児のひとりが修道衣の裾をくいくいっと引っ張る。
「はいはい。その前に自己紹介させてね? はじめまして、病気で休むことになった吉岡先生の代わりに来たフランチェスカよ。よろしくね」
にこりと営業スマイルで微笑む。
「ふらんしぇすかー?」
「なまえながーい」
「ふらんしぇんしぇー」
園児たちが思い思いに口にする。フランチェスカが制止しなければ永遠に続いたことだろう。
「OK。みんな落ち着いてね? まずはみんなのお名前を教えてちょうだい」
あらかじめ園長から園児たちの情報は得ているのと名札で名前は把握しているが、コミュニケーションを取ることで園児たちとの親睦を深めるためだ。
「はいはい!」と元気よく手をあげた女児が自己紹介をはじめる。
「えんどうりりなです! よろしくです!」
髪を左右に分けてリボンで留めた子だ。
「で、このこがゆなちゃん!」
隣のポニーテールの子に抱きつきながら代わりに紹介する。
「あたし、あや……」
最後の女児がか細い声で言う。
「おれ、れお! よろしくな!」
ひとりだけ園児服を着ていない子だ。
園長いわく園児服を着るのを嫌がって、仕方なく私服で登園させているのだそうな。
続いて園児のなかでは大柄な丸刈り頭の子どもと子分役の子だ。ふたりとも胸の前で腕を組んでいる。典型的ないじめっ子だ。
「あなたが類君で、きみがたかお君ね」
おう! と類と呼ばれた丸刈り頭の園児が威張って答える。
「で、最後が……」
最後に残った男児が手をもじもじさせる。
「まさとくんね?」
まさとと呼ばれた園児がこくんとうなずく。
「ふらんしぇんしぇー。あのね、まさとくんはねしゃべれないの」
りりなが説明する。
「そうなのね。よろしくねまさとくん」
これでカトレア組の七人の園児たちの紹介は終わりだ。
「さてと次は……」
園長からもらったメモを確認する。それによればお歌の時間だ。
ピアノは幼少のころにみっちり仕込まれたからある程度は弾けるけど、こういう時ってなにを弾けばいいのかしら?
「ねぇみんな、いつもはなんの歌を歌ってるの?」
「「「ドレミのうた!!!」」」
まさとを除いた園児たちが同時に答える。
「OK。ドレミの歌ね。それなら弾けるわ」
さっそくピアノの前に座る。ドレミの歌なら楽譜を見なくとも弾ける。
鍵盤に触れた途端、重要なことを思いだす。
そういえばドレミの歌って日本では歌詞が違うのよね……スペイン語と英語のは知ってるけど、日本での歌詞知らないし……。
「ん~」
考えた末にフランチェスカの頭にアイデアが閃く。
「ねぇみんな、今日は歌詞を変えて歌いましょ。よく聞いて後から続いてね」
「えー? いつものじゃないの!?」
「やりたいやりたい!」
園児たちのなかで賛成と反対が入り乱れる。
「いい? いくわよ」
フランチェスカの軽快なピアノの音に合わせて替え歌を歌っていく。ドーナツの代わりにドゥービー、レモンの代わりにレミー、ミックと、ファは飛ばしてゾンビ、ラッシュ、最後にシンデレラでしめる。
園児たちがあとに続いて歌う。慣れてくるとテンポを速めにしてリピートする。
「たのしかったー!」とポニーテールのゆな。
「すごい……こんなお歌聴いたことない」ゆなの隣であやが驚く。
「ねーねーどーゆーいみなの?」れおがピアノの横で聞く。
「偉大なアーティストたちの名前よ」
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