見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る

通りすがりの冒険者

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第41話 夏祭りと浴衣と花火と…… 前編

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 20:00 聖ミカエル教会本部。
 
 七月もすぐ終わろうというその日、教会の窓に雨がぽとぽとと垂れるなか、その執務室にてマザーは受話器を耳に当てて流暢な英語で対応を。

「そうですか。無事空港に到着されたのですね。ええ……はい、はい……わかりました。では明日の夜に」

 通話を終え、受話器を戻すとマザーは椅子に腰を下ろす。
 ふぅと溜息をついて、引き出しから一通の手紙を取りだす。ろうで封がされていた手紙だ。
 あらためて内容を読み、最後まで読み終えると老眼鏡を外す。
 そしてぽつりとお転婆な見習いシスターの名を呟く。

「フランチェスカ……」
 
 
 20:30 神代かみしろ神社。

 神社にある社務所兼自宅の自室にて、巫女の舞はベッドの上で一枚のチラシを見つめていた。
 それは神代神社とは別の大きな神社で行われる夏祭りのお知らせだ。
 夜空に花火をバックにして、縁日などでお馴染みの屋台が並んだイラストに可愛らしい少女が浴衣を着ているチラシを舞はごろりと横になって見る。

 ついに明日か……。

 先日、風邪をひいた安藤の見舞いに行ったときに一緒に行こうともちかけたのだが……。

 ちらりと枕の横に置いたスマホを見る。トントンとタッチしてラインを開く。
 安藤にメッセージを送ろうとして、ふと指を止める。思い直してグループチャットを開いた。

 あいつも誘わないと悪いか……。

 キーボードをタッチして入力。

『明日の夜ヒマ? 神社でお祭りあるんだけど、一緒に行かない?』
 
 メッセージとともに夏祭りのホームページのURLを添付し、最後に送信をタッチした。

「お風呂はいるか……」

 スマホを置いて舞は自室を出た。

 20:35 安藤の自宅。

 安藤次郎は自室の机に向かってノートに夏休みの課題の解答を書き記す。
 ひと区切りついたところで、んーっと両腕を伸ばしてほぐしていると、スマホが振動した。
 手に取って開いてみると通知が1件来ていたので、アプリを開く。
 安藤とフランチェスカと舞のグループチャットだ。メッセージは舞からで、神社のお祭りのお誘いだった。
 URLをタッチすると夏祭りのお知らせページに飛ぶ。それによれば当日は色々な屋台が出店し、メインイベントである花火が打ち上げられるそうな。

 明日は特に予定ないし、行ってみるか……。

『行きますよ!』

 メッセージの後にサムズアップのスタンプをタッチして送信。
 
 21:00 聖ミカエル教会

 教会の隣にある住居スペースにて、フランチェスカはちょうど風呂から上がったところだ。
 洗面台の前で髪をドライヤーで乾かし、胸に巻いたバスタオルを外して下着を身に付けていく。
 最後にパジャマ姿になると風呂場からキッチン兼ダイニングへぺたぺたと足音を立て、冷凍庫からお気に入りのアイスクリームを取りだす。
 テーブルの上にあるテレビをつけてアイスを食べながら見るのが彼女のルーティンだ。
 チャンネルを切り替えていると、テーブルに置いたスマホに着信を告げるランプが点滅していることに気づいた。
 暗証番号を入力して解除し、アプリを開く。

「まいまいからだ。珍しいな……って、お祭りやるんだ?」
 
 URLをタッチして開く。移動したページには日本に来て一度も祭りを体験したことのない彼女にとっては未知の世界だった。

「わ、面白そうじゃん! しかも花火まで!」
 
 ブラウザバックしてトークへと戻る。最後のメッセージは安藤からで、彼も来るようだ。

「アンジローが来るなら、あたしも行かないとね!」
 
 三秒後に彼女は『OK!』と送信する。

 21:05 舞の自室。

 風呂から上がって部屋に戻ると、着信音が鳴り響いていた。
 ベッド上に置いたスマホを手に取る。アプリを開くと、送ったメッセージに二件の既読。その下にふたりからのレスが。
 ふたりとも明日の夏祭りに来てくれることになり、舞はほっと一安心する。
 
『ありがとう! それじゃ明日の18:30に神社の前で待ち合わせね!』

 送信をタッチ。すぐに既読がつき、ふたりから了解の旨のメッセージとスタンプによる返信。

「うん。これでよし、と……」

 スマホを置き、クローゼットのほうへ歩いて、扉を開く。
 そこには紫色の布地に紫陽花あじさいをあしらった浴衣が。
 今回の夏祭りで事前に購入したものだ。ハンガーに掛けられたそれを手に取ってパジャマの上から羽織る。
 机の横にある姿見で前を合わせたり、後ろを振り向いたりと確かめていく。
 我ながらよく似合っていると思う。

「うん。似合ってるよね……?」
 
 満足すると脱いでハンガーに戻す。
 
 いよいよ、明日……あたしはアンジローに……。

 安藤の顔を思い浮かべると、思わず巫女は顔を赤くした。
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