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絶体絶命
しおりを挟むコンコン、と誰かが玄関のドアノッカーを叩く音がした。……助けてくれるかもしれない!
「だれか! たすけて! ここ「黙れッ!」
アルフォートの鋭いビンタが僕の頬に炸裂した。口の中が切れて、血の味が広がっていく。
僕の口に木の棒を噛ませると柱と一緒にぐるぐる巻きにされていく。猿轡されてるのと同じ状態だった。
再びコンコン、と音がしてアルフォートは舌打ちをしながら玄関に向かった。
アルフォートがいなくなった瞬間から全身全霊で脱出することに集中する。
ゴン!と金属に大きなものがぶつかったような音が玄関の方から響いてきた。
僕の希望であった来訪者になにかあったんじゃ……。絶望的な気持ちに襲われる。
ドスン、ドスン、と地面を鳴らすような大きな音が僕のいる部屋に近付いてくる。身体の震えが止まらなくなった。怖い。
物凄い勢いで扉が吹っ飛んだ。爆発が起こったのかと思ったくらい、すごい勢いだった。
「大丈夫か」
部屋に入ってきたアルフォートより二回りくらい身体の大きな男が低い声で尋ねた。
「んー!」
早く猿轡を外して欲しい、そう伝えたかった。
僕の意思をくみ取ってくれたのか、大男は僕と柱を結びつけている布に手をかけた。ビリビリッと布の破ける音がして僕の口が解放された。
「……ぁあ、あ、」
「話さなくていい、これも取るから少しだけ辛抱してくれ」
手枷を見ながら言った。難しい顔をしている。おもむろに手を伸ばすと、思い切り引っ張った。大男の顔が真っ赤に染まる。
ボゴンッ、という音と共に手枷がスッポリと抜け落ちた。他の枷も大男が力尽くで外してくれた。
身体が自由になり、アルフォートへの恐怖が蘇ってきた。そんな僕に気がついた大男は着ていた上着を僕の肩にかけてくれる。
「行こう」
大男の問いに頷いた。
家を出るとき、廊下からアルフォートらしき人が見えた。顔は真っ赤な血で染まり、足があらぬ方向を向いていた。半開きになった口からはまばらになった前歯が覗いてた。もしかしたら、死んでいるのかもしれない。
玄関でおかしな金属音がしたのはこのせいだったのだろうか。
恐怖よりも先に安堵の気持ちがわき上がってきた。
大男の手をしっかりと握る。
外に出るとたったさっきまで浴びていた日光がより輝いて見えた。
「俺は警察だ。もう安心してくれ。二度とあいつは現れない」
僕と同じ目線になるように膝を折り曲げている。相変わらず震えが止まらない僕の肩をさすりながら、言ってくれた。
こんな強い人がいるならもう大丈夫だ。そう思った途端、全身の力が抜けてしまった。視界がぐにゃり、と曲がり始める。
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