奴隷として売られていた僕がこんなに幸せでいいんですか?!

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 人が僕を覗き込む気配がした。……アルフォート! 飛び起きると、心配そうな顔で僕を見つめる大男の姿があった。

「………大丈夫か?」

 助けに来てくれた人だ。ホッと胸をなで下ろす。

 いきなり席を立つとすたすたと部屋を出て行ってしまった。

 少ししてから、木で出来た少し深さのある丸い皿を持って戻ってくる。並々ミルクが注がれている。

 男は僕のウエストくらいある腕のせいで小さく見えてしまうスプーンで、ミルクを掬っては僕に飲ませてくれた。全く話す気配がないので、待ちきれずに僕から尋ねた。

「お名前は? 僕はグエン」

「シシリアだ」

「……どうしてあの家に突入してきたの?」

「仕事だ」

 淡々と答えるだけで、それ以外にはなにも言わなかった。

 シシリアの感情を初めて見たのは、僕がシシリアの三つ下だと判明したときだった。

「……っ!」

 切れ長の目が少し見開かれたように見える。

「子供じゃなかったのか……」

「えっ!」

 今度はこちらが驚く番だった。シシリアは少し恥ずかしそうにポリポリと頭を搔いた。

「細くて小さい、から、」

「……子供だと思ったから飲ませてくれたのね? ンフフ」

 子供だと思って優しくしてくれたのにその相手が大人だなんて、シシリアがどれだけビックリしたか考えると笑えてきた。

「お腹は空かないか」

 そういえば、何にも食べていない。空腹感はあまりなかったが、シシリアが準備するというのでお願いすることになった。

 食事が出来たら持ってくるから休んでいろ、と言って出て行ったが、一人で待つのも飽きた。何か手伝おうと思って部屋を出た。

 物音がする部屋の前に着くとドアを開けた。

「シシリア! なにか…………っ」

 息を呑んだ。大きなノコギリ。血。頭の中が恐怖で支配され、身体が言うことを聞かなくなった。

 大きなノコギリを持った男がこちらへ向かってくる! 目を瞑って、手に触れたものを全て掴んでは投げつける。

「……ン、……グ…ン、………………グエン!」

 肩を揺すられ正気に戻る。シシリアの頭からは血が流れ出ている。

「シシリア、血がっ……」

「大丈夫だ」 

「血が、血がっ……。」

 上手く息が吸えなくなった僕を、シシリアがきつく抱きしめる。

「落ち着いたか?」

 シシリアの分厚い胸に抱かれ、優しく背中をトントンされているうちに平常心を取り戻した。

「……ごめん、痛いでしょう?」

 泣かないように頑張って堪える。ぽろり、と零れてしまった涙をシシリアが親指で拭う。

「大丈夫だ、大丈夫だから」

 低くて心地よくお腹に響くような声で囁かれた。

 
 


 








 
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