年下上司の愛が重すぎる!

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6話

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「......そういえば、新しい情報は?」

暫く歩いてからはっと気づく。早くあの場から離れたくて、無言で足を進めていたので聞くのを忘れていた。

「......すみません...。...あれは...嘘です」

「嘘?」

「すみません...。嫌がっているように見えたので、咄嗟に....」

少し前を歩いているので顔は見えないが、背中は丸まり、目に見えてしゅんとしている。

「あー....、いや、助かった」

素直にお礼を言うと、弾かれたように後ろを向いた。驚いたように目を丸くしているが、お礼を言われるとは思わなかったんだろうか。失礼な。

すぐにふにゃりとした笑顔に変わり、気まずくなって視線をそらす。その直後、佐原の携帯が振動した。影山さんからです、とわざわざ言ってから電話に出ると、短いやり取りで電話を切る。

「姫崎さん、さっきの話、本当になりました。とりあえずここに向かってほしいってことだったんですが...」

目的地を見ると、ここからそう遠くない場所だ。

「詳細は着いてからまた連絡する、とのことでした」

「着いてから....?」

今までそんな事は一度もなかったので少し引っかかる。だが、単純にもう少し情報を集めてから、という事かもしれないと思い直し、目的地へと向かった。



場所を見てもしや、とは思っていたが、やはり課でよく行く居酒屋だった。
警察学校の同期だった奴がやっている店、というのもあるが、飯も酒も美味い。と言っても俺は弱いのであまり飲めないが。

猛烈に嫌な予感がして、くるりと背を向けた。

「姫崎さん....?」

「俺は帰る」

「えっ!?ちょ...姫崎さんっ!?」

慌てた声とともに手首を掴まれる。振り解こうとしたが案外力が強く、振り解けなかった。内心舌打ちをして、強引に振り解く。

「多分新しい情報ってのは嘘だ。歓迎会かなんかだろうよ」

そのまま伝えたら俺が来ないとでも思ったんだろう。まあ、その通りだが。

「正解でーす!」

「うわっ!」

突然第三者の、影山の声が聞こえ、先程掴まれていた腕とは反対側にがっしりと抱きつかれた。

「ってか今タメ口で話してましたね?」

指摘され、ドキリとする。
いや、別に後ろめたいことなんてないだろ。向こうが良いって言ったんだし!

「俺が良いって言ったんです」

そうそう。

「ふーん?」

納得したのかしてないのか、顔を覗き込んでにやにやしてくる。
その顔やめろ、鬱陶しい。

「帰るなんて言いませんよね?」

「わかったから!腕離せ!」


店に入ると神野さんも千葉も居て、既に始めていたようだ。美味そうなつまみがずらりと並んでいる。

「怪我はどうだった?」

「問題ないそうです」

そう答えたのに、神野さんはちらりと後ろに視線を向ける。多分、佐原が頷いたのだろう、それならよかった、とにっこり笑った。
どうやら信用をなくしてしまったらしい。意地になりすぎた自覚があるだけに、居心地が悪い。

だが、明るい声が乱入したことによって、それは打ち消された。

「姫ちゃん怪我したんだってー?」

両手にビールと..ウーロン茶?を持って入ってきたのは、この店の店主である森元だ。

「その呼び方やめろって言ってるだろ!」

「それ毎回言ってて飽きない?」

「飽きるとか飽きないとかの問題じゃねえんだよ...!」

警察学校で初めて会った時から、何度言っても呼び方を変えない。
お前だって言われんのわかってんだからいい加減やめろよ!言う方の身にもなれや。
なぜか俺の方がしつこいと思われているようで納得がいかない。

そして、もう興味は俺から佐原に移っている。
昔からそうだった。女の尻ばかり追いかけ、なぜ警察官になろうと思ったのかわからないばかりか、交番勤務の際に出会った女とすぐに結婚を決め、その奥さんの実家でもあるこの店を継いだ。

俺のことも女だと思って近づいたらしい。確かめようとされたので、もちろん投げ飛ばしてやったが。

それからまた興味が俺へと移ったのか、こちらへ向き直る。

「で?どこ怪我したの?」

「関係ないだろ。さっさと仕事戻れよ」

「冷たっ!心配して言ってんのに!」

大袈裟なリアクションで、とても心配しているとは思えない物言いだ。面倒なことになる前に戻ってほしかったのだが、千葉が「腹だってさ」と勝手に言いやがった。
こいつ今朝からやたらケンカ売ってくんな。そんなに買ってほしいのか?

「まじ?見して」

「わっ、ちょ、やめろ!わかったから引っ張るな!」

やっぱり面倒なことになった、とため息をついて服を捲る。

「触んなよ」

「うわー、痛そー」

「いっ...!おい!触んなって....!」

少しは人の話を聞け!
服を下ろし、尚も突こうとしてくる手を払いのける。それでも触ろうとしてくるので、さすがに怒鳴りつけてやろうと思ったが、先に佐原が声を上げた。

「あ、あの!乾杯!しませんか?」

その声と共に掲げたビールに目を向けると、泡が半分以上減っている。こりゃまずい、と各々飲み物を持ったのだが——

「おい、それ俺のビールだろ」

森元がなぜか俺のビールを持って、当然のように乾杯に参加しようとしている。

「だって姫ちゃん怪我してるから飲まない方がいいでしょ?」

「このくらい問題ない。返せ」

「だーめだって。お酒そんな強くないんだから」

お前、それ自分が飲みたいだけだろ。

「百歩譲って俺が飲まないとして、なんでお前が飲むんだよ。仕事しろ、仕事」

「神野さんが一杯奢ってくれるって言うんで~」

なん、だと...!?
ちらりと神野さんを伺えば、少し申し訳なさそうに笑った。
チッ。あのウーロン茶俺のだったのかよ!...元々参加したくなかったのに酒も飲めないとか最悪だ。こうなったら飯だけ食って早く帰ろう。

「それでは改めまして!佐原警部の幽霊課配属を祝いまして~、かんぱ~い!」

影山の音頭で仕方なくウーロン茶で乾杯をして、森元は一気にビールを飲むと仕事に戻って行った。
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