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11話
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「よっ、フィル。おはよう」
「おはよー」
「ところであの噂本当なのか?」
朝一番にルカが聞いてきた。
「噂?なんのこと?」
「ベルトレッド様にお姫様抱っこされたって」
「なっ.....!」
なんで噂になってんの!?
実はあの後、腰が抜けて立てなくなった俺をベルトレッド様が寮まで運んでくれたのだ。
目立つから嫌だと言ったのに全く聞いてもらえなかった。
顔隠してれば大丈夫だろ、って言うから顔隠してたのに!
バレてるじゃん!
「本当なんだな?いつの間に仲良くなったんだ?」
俺の顔色を見て肯定だとわかったのかルカがぐいっと近いてくる。
「い、いやー、人違いじゃない?」
「嘘下手すぎだろ」
くっ....!駄目かっ。
「具合悪くなったところにたまたまベルトレッド様が通りかかって寮まで運んでくださったんだよ...」
俺はこの説明を今日だけで何十回もするはめになった。
平穏な壁ライフは取り戻せるのだろうか。
ん?待てよ?壁ライフまだ始まってなくないか!?
辛い。
よし、今後はなるべく接触しない方向でいこう。
そうしよう。
そう思っていたのに初めての授業でベルトレッド様がなぜか隣に座ってきた。
教室内がざわざわと騒がしくなる。
えぇー....。なんでこの人隣座ってんのぉー....。
話しかけるわけでもなく黙って隣に座っている。
ますますわけがわからん。
意を決してギギギ...とベルトレッド様の方へ向き、話しかける。
「あの、ベルトレッド様?なぜこちらの席に....」
「どこに座ろうが自由だろ?」
自由ですよ!?自由ですけど....!
階級が上の人は前の席って暗黙のルールがあるんですよ!
知ってますよね!?
ほら!伯爵家の方々が困ってるじゃないですかっ!
ベルトレッド様が後ろの方に来てしまったもんだから自分たちも後ろに行った方がいいのか、でも子爵家の後ろに行くのも嫌だし。って感じでキョロキョロしている。
左隣のルカを振り向くとあきらめろ、と首を左右に振った。
そんなわけで楽しみにしていた初めての授業は全く集中できなかった。
しかもその後の授業でも隣に座るのだ。
さすがに周りの目が痛い。
それにもなんとか耐え抜いてようやくお昼の時間がやってきた。
「つ、疲れた.....」
ルカしか居ない教室で机に突っ伏した。
ベルトレッド様は殿下たちに呼ばれて教室を出て行き、他の生徒もそれにくっついてお昼に行ったのだろう。
「お疲れ」
肩をぽんぽん、と叩いて労ってくれた。
まだ半日しか経ってないんですけど。
これが明日からも続くんですかね....?
どんよりした気持ちで食堂へと向かった。
「んで?実際のとこどうなんだよ」
「なにが....?」
「ベルトレッド様とのこと。付き合ってんのか?」
「つ!?ない!ないから!」
「でもなんかあったんだろ?」
「ルカ、他人事だと思って楽しんでない?」
ルカをぎろりと睨むと唐突に大声で名前を呼ばれた。
「フィル!」
「えっ?兄さん!?」
上級生から順に食堂が使えるようになるので食事は終わっているはずなのだが。
隣にはグリード様もいる。
「フィル!なにもされていないかい!?」
「うぐっ」
両頬を包まれぐりんと兄さんの方へ引っ張られた。
「おい、首とれるぞ」
「ああっ、ごめんよ、フィルっ」
「大丈夫です。でもなぜここに?」
「そんなことより!あの噂は本当なのかっ!?」
ああ、その件ですか....。
「少し、ほんの少しだけ体調が悪かった時にベルトレッド様がたまたま通りかかり親切に寮まで運んでくださったのです」
やましいことなどなにもありませんよ、とにっこり笑ってみせる。
「はぁ....。一日中張り付いていたい」
ぎゅっと抱きしめながら怖い事言わないでください。
「お前が言うと冗談に聞こえないな」
「冗談じゃないからな」
「兄さん、大丈夫ですので。目立ちますし....」
これ以上目立ちたくないんです....!
「おい、もう邪魔になるし行くぞ」
グリード様が兄さんをずるずると引きずるようにして引き剥がしてくれた。
「フィル、何かあったらちゃんと言うんだよ」
兄さんは名残惜しそうに声をかけてくる。
「はい。グリード様もありがとうございます。兄さんのこと、よろしくお願いします」
「シュリ!これで家族公認だね!」
「フィル、こいつに敬称など必要ないよ」
相変わらず言っていることがバラバラだ。
「あの2人、案外相性いいのかもな」
「うん。俺もそう思った」
騒がしくしてしまったことで居心地が悪くなり、残りを急ぎめで食べて食堂を後にした。
午後の授業も憂鬱だったがベルトレッド様は隣に座って来なかった。
殿下たちになにか言われたのだろうか?
ほっとしてその後の授業は集中できた。
そして今日最後の授業は魔法の実習だ。
「こちらで選んだ者同士で試合をしてもらう。実力を測るので本気で挑むように。試合をする者にはこちらをつけてもらう」
かかげた手に持っているのはネックレスだ。
「これはある程度の攻撃をはじく結界の魔道具だ。これが壊れるか、降参した方が負けとなる」
ようやくみんなの魔法が見れるのか!
わくわくするなぁ。
怪我の心配もなさそうだし楽しみ!
まずはアレンとラーフエルの2人。
雷は強力だが土属性相手には相性が悪い。
さて、どう戦うのだろうか。
「おはよー」
「ところであの噂本当なのか?」
朝一番にルカが聞いてきた。
「噂?なんのこと?」
「ベルトレッド様にお姫様抱っこされたって」
「なっ.....!」
なんで噂になってんの!?
実はあの後、腰が抜けて立てなくなった俺をベルトレッド様が寮まで運んでくれたのだ。
目立つから嫌だと言ったのに全く聞いてもらえなかった。
顔隠してれば大丈夫だろ、って言うから顔隠してたのに!
バレてるじゃん!
「本当なんだな?いつの間に仲良くなったんだ?」
俺の顔色を見て肯定だとわかったのかルカがぐいっと近いてくる。
「い、いやー、人違いじゃない?」
「嘘下手すぎだろ」
くっ....!駄目かっ。
「具合悪くなったところにたまたまベルトレッド様が通りかかって寮まで運んでくださったんだよ...」
俺はこの説明を今日だけで何十回もするはめになった。
平穏な壁ライフは取り戻せるのだろうか。
ん?待てよ?壁ライフまだ始まってなくないか!?
辛い。
よし、今後はなるべく接触しない方向でいこう。
そうしよう。
そう思っていたのに初めての授業でベルトレッド様がなぜか隣に座ってきた。
教室内がざわざわと騒がしくなる。
えぇー....。なんでこの人隣座ってんのぉー....。
話しかけるわけでもなく黙って隣に座っている。
ますますわけがわからん。
意を決してギギギ...とベルトレッド様の方へ向き、話しかける。
「あの、ベルトレッド様?なぜこちらの席に....」
「どこに座ろうが自由だろ?」
自由ですよ!?自由ですけど....!
階級が上の人は前の席って暗黙のルールがあるんですよ!
知ってますよね!?
ほら!伯爵家の方々が困ってるじゃないですかっ!
ベルトレッド様が後ろの方に来てしまったもんだから自分たちも後ろに行った方がいいのか、でも子爵家の後ろに行くのも嫌だし。って感じでキョロキョロしている。
左隣のルカを振り向くとあきらめろ、と首を左右に振った。
そんなわけで楽しみにしていた初めての授業は全く集中できなかった。
しかもその後の授業でも隣に座るのだ。
さすがに周りの目が痛い。
それにもなんとか耐え抜いてようやくお昼の時間がやってきた。
「つ、疲れた.....」
ルカしか居ない教室で机に突っ伏した。
ベルトレッド様は殿下たちに呼ばれて教室を出て行き、他の生徒もそれにくっついてお昼に行ったのだろう。
「お疲れ」
肩をぽんぽん、と叩いて労ってくれた。
まだ半日しか経ってないんですけど。
これが明日からも続くんですかね....?
どんよりした気持ちで食堂へと向かった。
「んで?実際のとこどうなんだよ」
「なにが....?」
「ベルトレッド様とのこと。付き合ってんのか?」
「つ!?ない!ないから!」
「でもなんかあったんだろ?」
「ルカ、他人事だと思って楽しんでない?」
ルカをぎろりと睨むと唐突に大声で名前を呼ばれた。
「フィル!」
「えっ?兄さん!?」
上級生から順に食堂が使えるようになるので食事は終わっているはずなのだが。
隣にはグリード様もいる。
「フィル!なにもされていないかい!?」
「うぐっ」
両頬を包まれぐりんと兄さんの方へ引っ張られた。
「おい、首とれるぞ」
「ああっ、ごめんよ、フィルっ」
「大丈夫です。でもなぜここに?」
「そんなことより!あの噂は本当なのかっ!?」
ああ、その件ですか....。
「少し、ほんの少しだけ体調が悪かった時にベルトレッド様がたまたま通りかかり親切に寮まで運んでくださったのです」
やましいことなどなにもありませんよ、とにっこり笑ってみせる。
「はぁ....。一日中張り付いていたい」
ぎゅっと抱きしめながら怖い事言わないでください。
「お前が言うと冗談に聞こえないな」
「冗談じゃないからな」
「兄さん、大丈夫ですので。目立ちますし....」
これ以上目立ちたくないんです....!
「おい、もう邪魔になるし行くぞ」
グリード様が兄さんをずるずると引きずるようにして引き剥がしてくれた。
「フィル、何かあったらちゃんと言うんだよ」
兄さんは名残惜しそうに声をかけてくる。
「はい。グリード様もありがとうございます。兄さんのこと、よろしくお願いします」
「シュリ!これで家族公認だね!」
「フィル、こいつに敬称など必要ないよ」
相変わらず言っていることがバラバラだ。
「あの2人、案外相性いいのかもな」
「うん。俺もそう思った」
騒がしくしてしまったことで居心地が悪くなり、残りを急ぎめで食べて食堂を後にした。
午後の授業も憂鬱だったがベルトレッド様は隣に座って来なかった。
殿下たちになにか言われたのだろうか?
ほっとしてその後の授業は集中できた。
そして今日最後の授業は魔法の実習だ。
「こちらで選んだ者同士で試合をしてもらう。実力を測るので本気で挑むように。試合をする者にはこちらをつけてもらう」
かかげた手に持っているのはネックレスだ。
「これはある程度の攻撃をはじく結界の魔道具だ。これが壊れるか、降参した方が負けとなる」
ようやくみんなの魔法が見れるのか!
わくわくするなぁ。
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