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13話
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結論から言うとベルトレッド様が勝った。
正確には気づいたらベルトレッド様が剣を殿下の首筋に当てていて、ネックレスが壊れていたのだ。
何が起こったのか正確に分かる人はベルトレッド様だけではないだろうか。
最初は殿下が火と雷で圧倒していたのだが、一瞬の隙をついてベルトレッド様が目が眩むほどの光を放ち殿下以外の生徒も視界が奪われた。
その一瞬で勝負が決まったのだ。
「お前....もうちょっと主人に花を持たせろよ...」
「全力でと言われただろ」
「チッ、真面目な奴だな」
殿下とベルトレッド様は何か話してるようだが周りもざわざわしていて聞こえなかった。
「本日の授業はこれで終了だ。負けた者は反省点と改善点を、勝った者も反省点を記述して明日までに提出するように」
この場で解散となった。
「なあ、反省会やろーぜ」
「いいね。どこでやる?」
「どっちかの部屋とか?」
「あー、ごめん。部屋には入れるなって兄さんに言われてるからルカの部屋でもいい?」
「....いや、やっぱどっか借りるか。お兄さんにバレたら殺されるかもだし」
「うん?なんの話?」
殺されるとか物騒だな。
「なんでもない。んじゃ先生んとこ行くか」
歩き出したところで声をかけられた。
「あのっ、その反省会、私たちもご一緒してよろしいでしょうか?」
えっ!?アレン!?
振り向くとアレンとラーフエルが立っていた。
えぇ....、なんで俺たち?モブなんですけど....。
「ああ、もちろん!客観的な意見もあった方が助かるし!フィルもいいよな?」
うっ、そんなふうに言われたら頷くしかないじゃないか。
あんまり関わりたくなかったけど仕方ない。
「うん」
「ありがとうございます!」
そんなわけで4人で先生のもとへ向かった。
◇◇◇◇
「アレン、雷すごかった!可愛い顔してるのに威力やばいな」
実習室で机を囲むなりルカが開口一番そう言った。
いや、顔は関係なくないか?
「ありがとうございます」
「小さい時から一緒に訓練しているんですが勝てたことがないんですよ」
「え!一度も!?」
「はい。なので他の方の意見をどうしても伺いたくて....」
「まぁでも雷だからなぁ....。正直俺もどう戦えばいいか全くわからん」
「そうですか....。あの、フィルローゼ様はいかがでしょうか?」
できれば聞き役に徹したかったのだが話かけられたら仕方ない。
「そうですね...。接近戦になった時点で腕や脚に土魔法で簡易防具を施すべきでしたね。そうしたら一発で負けることはなかったはずです」
「たしかに.....」
「あとはもう少し発動を速くできるように練習あるのみです。後半は後手後手にまわっていたので」
「........」
「........」
「........」
俺の言葉に3人とも無言になってしまった。
え、なに?俺なんか変なこと言った?
「お前そんなこと考えながら見てたのか?」
「ありがとうございます!勉強になります!」
「フィルローゼ様は魔法の発動がとても速いですよね!使い方もとても面白いです」
ちょ、ちょっと待って。皆さん落ち着いてっ。
なぜか皆興奮して身を乗り出してくる。
「魔法のこと考えるのは癖みたいなものだから」
「お役に立ててよかったです」
「えっと、ありがとうございます?」
圧倒されながらもそれぞれに返事を返す。
「っていうかお前はなんで敬語なんだよ」
「え、....なんとなく」
あんまり仲良くなりたくないってのもあるけど....。
「まあいいや。それよりもフィル!なんで俺があの時右側に居るってわかったんだよ!」
「私も気になっていました。迷わず向かわれてましたよね?」
「自然の風に魔力を込めたんだよ。そうすれば魔力の揺らぎでどこに居るかわかるから」
「はぁ!?そんな使い方聞いたことないわっ」
「あの状況でずっと使っていたのですか!?」
「そうなの?」
あ、でもベルトレッド様も知らなかったな。
「お前もう学ぶことなんてないんじゃないか?」
「なんでよ。家では実戦形式で魔法使えないし。っていうか負けたの俺だからね?学ぶことだらけだよ」
その言葉にまた3人とも無言になってしまった。
え、今度はなんですか。
「待て、じゃあ実戦はあれが初めてってことか....?」
「ん?そうだけど?」
「まじかよ....。完全に俺の負けじゃん....」
いや、だから負けたの俺だって。
「初めてであの動き....」
それは独り言ですか?
「判断力も優れてるんですね....」
誰のこと?
なんか皆どんよりしてぶつぶつ言ってるけどどうしたんだろう。
実戦したことないのがそんなに珍しいんだろうか。
そんな時、ノック音が響いた。
「あ、私が」
真っ先にアレンが立ち上がり扉を開けてくれた。
「で、殿下!?」
アレンの焦った声に3人とも一斉に振り向く。
殿下!?もしかしてイベント発生!?
俺ここにいていいの!?
椅子から立ち上がり殿下の入室を頭を下げて待つ。
「邪魔して悪いな。楽にしてくれ」
その言葉に顔を上げると殿下の他にベルトレッド様もいた。
ブルーの瞳と目が会い、どくん、と心臓が跳ねる。
「ここで反省会をしていると聞いてな。混ぜてもらいたいんだが」
えぇー....。
皆一様に驚いていたが断れるはずもなく、一も二もなく頷いた。
場違い感半端ねー....。
アレンはいいよ?可愛いし。
ラーフエルもカッコいいしね?
でもどう見ても普通の俺やルカは場違いだ。
まあまだ1人じゃないだけましだけど。
「ところで、誰と誰が恋仲なんだ?」
はい?恋仲?なんの話?
唐突に殿下がぶっ込んできた。
反省会に参加するんじゃなかったの?
「い、いえ....。私たちは特に....」
「うん?そうなのか?」
「あ、いえ。私とアレンは恋人同士でございます」
「え!?」
ラーフエルの言葉に、一際大きな声を出してしまい皆こっちを見るがそれどころではない。
え?もう恋人なの!?
そんなことあるの!?まだ1日目なんですけど!?
それかそもそもそういう設定なの!?
略奪もの!?そういうこともあるの!?
こういうゲームやったことないからわかんないけど!
「そっちの2人は違うのか」
「え、ええ。私とフィルは友人です」
そんなやりとりも俺の耳には入ってこなかった。
略奪ものだったらドロドロ系ってこと!?
そんな事を考えていたら受け答えもしたはずなのに内容はほとんど覚えていない。
正確には気づいたらベルトレッド様が剣を殿下の首筋に当てていて、ネックレスが壊れていたのだ。
何が起こったのか正確に分かる人はベルトレッド様だけではないだろうか。
最初は殿下が火と雷で圧倒していたのだが、一瞬の隙をついてベルトレッド様が目が眩むほどの光を放ち殿下以外の生徒も視界が奪われた。
その一瞬で勝負が決まったのだ。
「お前....もうちょっと主人に花を持たせろよ...」
「全力でと言われただろ」
「チッ、真面目な奴だな」
殿下とベルトレッド様は何か話してるようだが周りもざわざわしていて聞こえなかった。
「本日の授業はこれで終了だ。負けた者は反省点と改善点を、勝った者も反省点を記述して明日までに提出するように」
この場で解散となった。
「なあ、反省会やろーぜ」
「いいね。どこでやる?」
「どっちかの部屋とか?」
「あー、ごめん。部屋には入れるなって兄さんに言われてるからルカの部屋でもいい?」
「....いや、やっぱどっか借りるか。お兄さんにバレたら殺されるかもだし」
「うん?なんの話?」
殺されるとか物騒だな。
「なんでもない。んじゃ先生んとこ行くか」
歩き出したところで声をかけられた。
「あのっ、その反省会、私たちもご一緒してよろしいでしょうか?」
えっ!?アレン!?
振り向くとアレンとラーフエルが立っていた。
えぇ....、なんで俺たち?モブなんですけど....。
「ああ、もちろん!客観的な意見もあった方が助かるし!フィルもいいよな?」
うっ、そんなふうに言われたら頷くしかないじゃないか。
あんまり関わりたくなかったけど仕方ない。
「うん」
「ありがとうございます!」
そんなわけで4人で先生のもとへ向かった。
◇◇◇◇
「アレン、雷すごかった!可愛い顔してるのに威力やばいな」
実習室で机を囲むなりルカが開口一番そう言った。
いや、顔は関係なくないか?
「ありがとうございます」
「小さい時から一緒に訓練しているんですが勝てたことがないんですよ」
「え!一度も!?」
「はい。なので他の方の意見をどうしても伺いたくて....」
「まぁでも雷だからなぁ....。正直俺もどう戦えばいいか全くわからん」
「そうですか....。あの、フィルローゼ様はいかがでしょうか?」
できれば聞き役に徹したかったのだが話かけられたら仕方ない。
「そうですね...。接近戦になった時点で腕や脚に土魔法で簡易防具を施すべきでしたね。そうしたら一発で負けることはなかったはずです」
「たしかに.....」
「あとはもう少し発動を速くできるように練習あるのみです。後半は後手後手にまわっていたので」
「........」
「........」
「........」
俺の言葉に3人とも無言になってしまった。
え、なに?俺なんか変なこと言った?
「お前そんなこと考えながら見てたのか?」
「ありがとうございます!勉強になります!」
「フィルローゼ様は魔法の発動がとても速いですよね!使い方もとても面白いです」
ちょ、ちょっと待って。皆さん落ち着いてっ。
なぜか皆興奮して身を乗り出してくる。
「魔法のこと考えるのは癖みたいなものだから」
「お役に立ててよかったです」
「えっと、ありがとうございます?」
圧倒されながらもそれぞれに返事を返す。
「っていうかお前はなんで敬語なんだよ」
「え、....なんとなく」
あんまり仲良くなりたくないってのもあるけど....。
「まあいいや。それよりもフィル!なんで俺があの時右側に居るってわかったんだよ!」
「私も気になっていました。迷わず向かわれてましたよね?」
「自然の風に魔力を込めたんだよ。そうすれば魔力の揺らぎでどこに居るかわかるから」
「はぁ!?そんな使い方聞いたことないわっ」
「あの状況でずっと使っていたのですか!?」
「そうなの?」
あ、でもベルトレッド様も知らなかったな。
「お前もう学ぶことなんてないんじゃないか?」
「なんでよ。家では実戦形式で魔法使えないし。っていうか負けたの俺だからね?学ぶことだらけだよ」
その言葉にまた3人とも無言になってしまった。
え、今度はなんですか。
「待て、じゃあ実戦はあれが初めてってことか....?」
「ん?そうだけど?」
「まじかよ....。完全に俺の負けじゃん....」
いや、だから負けたの俺だって。
「初めてであの動き....」
それは独り言ですか?
「判断力も優れてるんですね....」
誰のこと?
なんか皆どんよりしてぶつぶつ言ってるけどどうしたんだろう。
実戦したことないのがそんなに珍しいんだろうか。
そんな時、ノック音が響いた。
「あ、私が」
真っ先にアレンが立ち上がり扉を開けてくれた。
「で、殿下!?」
アレンの焦った声に3人とも一斉に振り向く。
殿下!?もしかしてイベント発生!?
俺ここにいていいの!?
椅子から立ち上がり殿下の入室を頭を下げて待つ。
「邪魔して悪いな。楽にしてくれ」
その言葉に顔を上げると殿下の他にベルトレッド様もいた。
ブルーの瞳と目が会い、どくん、と心臓が跳ねる。
「ここで反省会をしていると聞いてな。混ぜてもらいたいんだが」
えぇー....。
皆一様に驚いていたが断れるはずもなく、一も二もなく頷いた。
場違い感半端ねー....。
アレンはいいよ?可愛いし。
ラーフエルもカッコいいしね?
でもどう見ても普通の俺やルカは場違いだ。
まあまだ1人じゃないだけましだけど。
「ところで、誰と誰が恋仲なんだ?」
はい?恋仲?なんの話?
唐突に殿下がぶっ込んできた。
反省会に参加するんじゃなかったの?
「い、いえ....。私たちは特に....」
「うん?そうなのか?」
「あ、いえ。私とアレンは恋人同士でございます」
「え!?」
ラーフエルの言葉に、一際大きな声を出してしまい皆こっちを見るがそれどころではない。
え?もう恋人なの!?
そんなことあるの!?まだ1日目なんですけど!?
それかそもそもそういう設定なの!?
略奪もの!?そういうこともあるの!?
こういうゲームやったことないからわかんないけど!
「そっちの2人は違うのか」
「え、ええ。私とフィルは友人です」
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