BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

文字の大きさ
15 / 25

15話

しおりを挟む

次の日も、また次の日も返事を迫ってくるのだ。

「待ってくれるって言ったじゃんか!」
そう言っても、
「少しだけだと言ったろ」
と悪びれもせずに言い返される。

それでもなんとか1週間逃げきっていたのだが、とうとう捕まってしまった。

「おい、いつまで待たせる気だ」
「い、いつまでって....まだ1週間しか経ってない.....」

「十分待った」
「っ、そもそも、承諾以外認めないっておかしいでしょ!」

「断る気か?」

当たり前でしょっ。
なんでモブがメインキャラと付き合うのさっ。
俺は壁になれればそれでいいのに!

なんてことを言えるわけもなく黙り込むとため息をつかれた。

「.......わかった」

そう言うとあっさり背を向けて行ってしまった。

予想外の行動に、遠ざかる背中を呆然と見送ることしかできなかった。


その日から、ベルが迫ってくることはなくなった。


平和、というか静か、というか寂しい、というか.....。
ルカも喧嘩したのか、とか聞いてくるし。
喧嘩ではない、はず。

いやいや、むしろこれが正常!今までがおかしかったんだよ!

これで壁ライフを満喫できるかと思ったのだがそうでもなかった。

ベルはあまり喋らないのだ。
俺とはけっこう話すくせに。

殿下やレミオラ様に話しかけられれば応えはするがそれも一言二言。
その他の人に話しかけられれば基本無視。

自分から声をかける姿はこの1週間まるでなかった。

これじゃあ録音なんてできないよ!

自然とため息が漏れる。

「どした?フィルの好きな魔法の授業なのに浮かない顔だな」
「ううん!なんでもない!」

そうだ。今は授業中だった。集中しなくては。

今回は同じ属性を持った者同士の実戦形式。
なので複数の属性を扱える人でもひとつの属性しか使ってはいけない。

縛りがあるのもおもしろそうだよね!
まあ、俺はもともとひとつだから関係ないけど。

前回の試合を踏まえて先生がペアを決めたらしい。

ん?ちょっと待てよ....。
風属性って俺以外に使えるのベルしかいなかったような....?

そんでもって光属性もベルしかいなかったような....?


順番に名前が呼ばれていき———、案の定俺とベルがペアになった。


うう....。またしても勝てる気がしない.....。

しかもベルは前回の試合で風魔法を使っていない。
完全に未知数だ。

その他の組み合わせは、
ルカと同じ氷属性の人(名前は覚えてないです)
ラーフエルとレミオラ様
アレンと殿下だ。

ルカは難なく勝利、ラーフエルとレミオラ様は拮抗していたがレミオラ様の勝利。

そして、俺とベルの番が回ってきた。

なんかめっちゃ緊張する。
楽しみなような、気まずいような、少し複雑だ。

先生からネックレスを受け取って首にかけ、目を閉じて深呼吸をしてからベルを見る。

ブルーの瞳はこちらを見据えていた。

目が合ったのは1週間ぶりだ。
目が合うとやっぱりどきどきするが、嬉しさもあった。

「始め」

先に動いたのはベルの方だ。
すごい勢いでこちらに向かってくる。

風魔法使ってなくてこれですか!?

後ろに跳んで距離をとる。
同時に向かい風を発生させ、少しでもベルのスピードを落とした。

そして前回、距離が近くて威力が出なかったことを考慮して自分からではなく遠くの方で空気の弾を作る。

視線を向けるとバレるのでベルを見据えたまま自分とベルの間、ベルがこれから到達するであろう場所に向けて放った。

「!?」

当たる直前、高々と跳び上がった。
脚に何発か掠めたが当然ネックレスは壊れない。

でも、空中での動きは鈍くなるはずだ。
一気に懐まで距離を詰め、地面に叩けつけようと剣を振る。

だが、下からの突風によって勢いが死んでしまった。

キィン!

勢いが死んだ剣では叩きつけられるわけもなく難なく受け止められてしまう。

「くっ....!」

直後、お腹に衝撃が走った。
間髪入れず背中にも衝撃が続く。

ネックレスのおかげで痛みはないが衝撃までは殺せず、地面が近づいた。

風魔法で地面に叩きつけられることを防ぎ、すぐにその場から離れる。

予想通り、ベルが剣を突き立てながら落下してきた。

ガッ!

剣が地面へと突き刺さる。
すかさずそこへ空気の弾を放ったのだが.....

キン、キンッ

全て剣で器用に弾かれてしまった。
はい!?反射神経やばくない!?

ギィィン!

その一瞬の隙をついて距離を詰められ、重い一撃を受け止める。

だが、あまりに重い一撃に手が痺れ剣が手から弾き飛ばされてしまった。

剣先が自分の喉元に突き立てられ、切っ先が触れる。
弾き飛ばされた剣が地面に落ちたのと同時にネックレスが壊れた。

「や、やめ」

いつの間にか肩で息をしていた。

大きく息を吸ったとき、チリッとした痛みを喉元に感じた。
未だ突き立てられていた剣の切っ先が喉元を浅く裂いたのだ。

思わず身を引くとベルははっとした顔をして剣を落とした。

「悪い」
「いえ、たいした怪我ではない——、わっ」

顎を無理矢理上に上げられた直後、喉元が少し暖かく感じた。

え、もしかして治癒魔法!?
見たい!...じゃなくて!こんな小さい傷にそんなことしなくてもよかったのに!

「あの、ベルトレッド様...?ひっ、んっ」

ぬるりとしたものが首筋を這い、先程怪我をしたであろう部分をぢゅっと音を立てて吸われた。

なっ、なにしてんすかー!!
こんな公衆の面前で!!

幸いすぐに顔を離してくれたが心なしかほっとしたような表情をしている。

いや、ほっとしてる場合じゃないですよ!

「せ、先生!トイレ行ってきますっ!」

恥ずかしすぎてその場をダッシュで立ち去った。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

タチですが異世界ではじめて奪われました

BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります! 読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです! 俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。 2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。 丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。 「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です! もちろんハルトのその後なんかも出てきます! ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...