22 / 25
番外編 親の心子知らず
しおりを挟む
「お初にお目にかかります。マクファイン子爵家次男、フィルローゼ・マクファインと申します。本日は———」
「堅苦しい挨拶はいらん」
ベルのお家に呼ばれ、腰を折ってお父様にご挨拶をするも途中でピシャリと止められてしまった。
戸惑いながらも顔を上げるとベルと同じ黒い髪とブルーの瞳が思ったよりも近くにある。
ベルも歳をとったらこんな感じになるんだろうか。
声もベル程ではないが低く、響くような良い声だ。
あまりのイケオジっぷりに見惚れていると顎に指が添えられた。
ベルよりも大きな身体をかがめて顔が近づく。
「ふむ...。思ったより普通だな。色は...ネイビーか?」
お、親子揃って距離感バグってますね....!
至近距離のイケオジに固まっているとベルが間に入ってくれた。
「父上、近いです」
「ほぅ?」
た、助かった....。距離感バグってるのは遺伝だったのか...。
「ベルトレッド、お前は出ていろ」
「は?なぜです」
「お前がいるとゆっくり話せんだろ」
「ゆっくり話す必要などありません」
「それを決めるのはお前ではない。私だ」
突然始まった親子喧嘩のような雰囲気に口を挟めるはずもなく見守っているとベルと目が合った。
大丈夫、と伝わるように笑顔で頷く。
「.....分かりました。何かあればお呼びください」
ベルは納得いかないながらもため息をついて部屋から出て行った。
「ふっ、少しは人間らしくなったな」
ベルが出て行ってから侯爵様が少し目を細めながら言った。
言葉の意味がわからず首をかしげる。
「あいつ、クソ真面目でつまんねぇだろ」
「え?いえ。確かに真面目ではございますが...」
つまらないとはどういう意味だろう?
「なるほどなぁ...。属性は風だったな?随分と変わった使い方をするようだが」
「はい。変わった使い方かどうかはわかりませんが....」
「ほぅ....。驕らないか。見せてもらうことはできるか?」
「はい。もちろんです」
部屋は広いがさすがに走るのは無理なので天井ギリギリまでのジャンプの補助と、風の弾を窓から外に向けて撃つのを見せると目を見開いて驚いていた。
「....聞くのと見るのとではまるで違うな...。こうも自在に操るとは...。属性が風しかないとわかったときは落胆しなかったのか?」
「いえ。全く。むしろ嬉しくて使いすぎてしまって家族に叱られました」
「ははっ、そうか。あいつも周りの声なんざ気にするなつってんのになぁ...」
「たしかに、ご自身の属性を使えない、だなんて仰っていました。なにかあったのですか?」
「大した事じゃない。どっかのバカが3つもあるのに使えない属性ばかりで気の毒だのなんだの話してるところを聞いたらしい」
なんだそれ!ただの僻みだろ!ほんとにそんな事気にしなくていいのに!
思わずむっとしてしまう。
「まあ、でも今はお前さんのおかげで前向きになってるようだし。感謝してるよ」
「い、いえっ、私はなにもしておりません。それよりも私のせいで家督を放棄させるような事態になってしまい、誠に申し訳ございません」
「あいつの人生だ。あいつが選んだんだからお前さんのせいじゃない。それに、以前のままのあいつにはどの道家督は継がせなかっただろうよ」
「え...」
「やる気のないやつに継がせたって意味がないだろ?まあなんだ、融通利かないとこもあるがあいつのこと頼むな」
優しくふっと笑って目が細められた。
「は、はい!ありがとうございます!」
これは認めてもらったってことでいいのかな?
それからベルが部屋に戻ってきてなんか変なことされなかったか?とか言われなかったか?とかしつこく聞いてきた。
「おい、信用ねえな」
「初対面であんなに近づいたら警戒もするでしょう」
「ベ、ベル、大丈夫だったから....」
それからお昼までご馳走になった。
「今度は騎士団の方へも来てくれよ。もちろん2人で」
帰り際、侯爵様が嬉しそうにそう言ってくれた。
「はい!是非!」
ベルはなにも返さずさっさと馬車へ乗り込んでしまったので侯爵様にお辞儀をしてから慌てて後に続いた。
「堅苦しい挨拶はいらん」
ベルのお家に呼ばれ、腰を折ってお父様にご挨拶をするも途中でピシャリと止められてしまった。
戸惑いながらも顔を上げるとベルと同じ黒い髪とブルーの瞳が思ったよりも近くにある。
ベルも歳をとったらこんな感じになるんだろうか。
声もベル程ではないが低く、響くような良い声だ。
あまりのイケオジっぷりに見惚れていると顎に指が添えられた。
ベルよりも大きな身体をかがめて顔が近づく。
「ふむ...。思ったより普通だな。色は...ネイビーか?」
お、親子揃って距離感バグってますね....!
至近距離のイケオジに固まっているとベルが間に入ってくれた。
「父上、近いです」
「ほぅ?」
た、助かった....。距離感バグってるのは遺伝だったのか...。
「ベルトレッド、お前は出ていろ」
「は?なぜです」
「お前がいるとゆっくり話せんだろ」
「ゆっくり話す必要などありません」
「それを決めるのはお前ではない。私だ」
突然始まった親子喧嘩のような雰囲気に口を挟めるはずもなく見守っているとベルと目が合った。
大丈夫、と伝わるように笑顔で頷く。
「.....分かりました。何かあればお呼びください」
ベルは納得いかないながらもため息をついて部屋から出て行った。
「ふっ、少しは人間らしくなったな」
ベルが出て行ってから侯爵様が少し目を細めながら言った。
言葉の意味がわからず首をかしげる。
「あいつ、クソ真面目でつまんねぇだろ」
「え?いえ。確かに真面目ではございますが...」
つまらないとはどういう意味だろう?
「なるほどなぁ...。属性は風だったな?随分と変わった使い方をするようだが」
「はい。変わった使い方かどうかはわかりませんが....」
「ほぅ....。驕らないか。見せてもらうことはできるか?」
「はい。もちろんです」
部屋は広いがさすがに走るのは無理なので天井ギリギリまでのジャンプの補助と、風の弾を窓から外に向けて撃つのを見せると目を見開いて驚いていた。
「....聞くのと見るのとではまるで違うな...。こうも自在に操るとは...。属性が風しかないとわかったときは落胆しなかったのか?」
「いえ。全く。むしろ嬉しくて使いすぎてしまって家族に叱られました」
「ははっ、そうか。あいつも周りの声なんざ気にするなつってんのになぁ...」
「たしかに、ご自身の属性を使えない、だなんて仰っていました。なにかあったのですか?」
「大した事じゃない。どっかのバカが3つもあるのに使えない属性ばかりで気の毒だのなんだの話してるところを聞いたらしい」
なんだそれ!ただの僻みだろ!ほんとにそんな事気にしなくていいのに!
思わずむっとしてしまう。
「まあ、でも今はお前さんのおかげで前向きになってるようだし。感謝してるよ」
「い、いえっ、私はなにもしておりません。それよりも私のせいで家督を放棄させるような事態になってしまい、誠に申し訳ございません」
「あいつの人生だ。あいつが選んだんだからお前さんのせいじゃない。それに、以前のままのあいつにはどの道家督は継がせなかっただろうよ」
「え...」
「やる気のないやつに継がせたって意味がないだろ?まあなんだ、融通利かないとこもあるがあいつのこと頼むな」
優しくふっと笑って目が細められた。
「は、はい!ありがとうございます!」
これは認めてもらったってことでいいのかな?
それからベルが部屋に戻ってきてなんか変なことされなかったか?とか言われなかったか?とかしつこく聞いてきた。
「おい、信用ねえな」
「初対面であんなに近づいたら警戒もするでしょう」
「ベ、ベル、大丈夫だったから....」
それからお昼までご馳走になった。
「今度は騎士団の方へも来てくれよ。もちろん2人で」
帰り際、侯爵様が嬉しそうにそう言ってくれた。
「はい!是非!」
ベルはなにも返さずさっさと馬車へ乗り込んでしまったので侯爵様にお辞儀をしてから慌てて後に続いた。
152
あなたにおすすめの小説
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
タチですが異世界ではじめて奪われました
雪
BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります!
読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです!
俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。
2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。
丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。
「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です!
もちろんハルトのその後なんかも出てきます!
ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる