BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

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番外編 親の心子知らず

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「お初にお目にかかります。マクファイン子爵家次男、フィルローゼ・マクファインと申します。本日は———」

「堅苦しい挨拶はいらん」

ベルのお家に呼ばれ、腰を折ってお父様にご挨拶をするも途中でピシャリと止められてしまった。

戸惑いながらも顔を上げるとベルと同じ黒い髪とブルーの瞳が思ったよりも近くにある。

ベルも歳をとったらこんな感じになるんだろうか。
声もベル程ではないが低く、響くような良い声だ。

あまりのイケオジっぷりに見惚れていると顎に指が添えられた。
ベルよりも大きな身体をかがめて顔が近づく。

「ふむ...。思ったより普通だな。色は...ネイビーか?」

お、親子揃って距離感バグってますね....!
至近距離のイケオジに固まっているとベルが間に入ってくれた。

「父上、近いです」

「ほぅ?」

た、助かった....。距離感バグってるのは遺伝だったのか...。

「ベルトレッド、お前は出ていろ」

「は?なぜです」

「お前がいるとゆっくり話せんだろ」

「ゆっくり話す必要などありません」

「それを決めるのはお前ではない。私だ」

突然始まった親子喧嘩のような雰囲気に口を挟めるはずもなく見守っているとベルと目が合った。

大丈夫、と伝わるように笑顔で頷く。

「.....分かりました。何かあればお呼びください」

ベルは納得いかないながらもため息をついて部屋から出て行った。

「ふっ、少しは人間らしくなったな」

ベルが出て行ってから侯爵様が少し目を細めながら言った。

言葉の意味がわからず首をかしげる。

「あいつ、クソ真面目でつまんねぇだろ」

「え?いえ。確かに真面目ではございますが...」

つまらないとはどういう意味だろう?

「なるほどなぁ...。属性は風だったな?随分と変わった使い方をするようだが」

「はい。変わった使い方かどうかはわかりませんが....」

「ほぅ....。おごらないか。見せてもらうことはできるか?」

「はい。もちろんです」

部屋は広いがさすがに走るのは無理なので天井ギリギリまでのジャンプの補助と、風の弾を窓から外に向けて撃つのを見せると目を見開いて驚いていた。

「....聞くのと見るのとではまるで違うな...。こうも自在に操るとは...。属性が風しかないとわかったときは落胆しなかったのか?」

「いえ。全く。むしろ嬉しくて使いすぎてしまって家族に叱られました」

「ははっ、そうか。あいつも周りの声なんざ気にするなつってんのになぁ...」

「たしかに、ご自身の属性を使えない、だなんて仰っていました。なにかあったのですか?」

「大した事じゃない。どっかのバカが3つもあるのに使えない属性ばかりで気の毒だのなんだの話してるところを聞いたらしい」

なんだそれ!ただの僻みだろ!ほんとにそんな事気にしなくていいのに!
思わずむっとしてしまう。

「まあ、でも今はお前さんのおかげで前向きになってるようだし。感謝してるよ」

「い、いえっ、私はなにもしておりません。それよりも私のせいで家督を放棄させるような事態になってしまい、誠に申し訳ございません」

「あいつの人生だ。あいつが選んだんだからお前さんのせいじゃない。それに、以前のままのあいつにはどの道家督は継がせなかっただろうよ」

「え...」

「やる気のないやつに継がせたって意味がないだろ?まあなんだ、融通利かないとこもあるがあいつのこと頼むな」

優しくふっと笑って目が細められた。

「は、はい!ありがとうございます!」

これは認めてもらったってことでいいのかな?

それからベルが部屋に戻ってきてなんか変なことされなかったか?とか言われなかったか?とかしつこく聞いてきた。

「おい、信用ねえな」

「初対面であんなに近づいたら警戒もするでしょう」

「ベ、ベル、大丈夫だったから....」

それからお昼までご馳走になった。

「今度は騎士団の方へも来てくれよ。もちろん2人で」

帰り際、侯爵様が嬉しそうにそう言ってくれた。

「はい!是非!」

ベルはなにも返さずさっさと馬車へ乗り込んでしまったので侯爵様にお辞儀をしてから慌てて後に続いた。
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