ボスルートがあるなんて聞いてない!

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24.犯罪です!

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 あの後、ハンスさんに無理言ってお肉を譲ってもらって事なきを得た。だが、毎回融通してもらうわけにもいかないので今日は朝からギルドへ向かっている。その道すがら、

『ますたー、なんか見られてる』

「だねぇー。きっとハクが可愛いからみんな見てるんだよ」

『かわいい?』

 実際、尻尾を振りながら俺の隣をてくてく歩く姿は控えめに言って悶絶するほど可愛い。これでテイマーの魅力も伝わるだろう。

 意気揚々とギルドに入ればまたも視線が集中するが、気にしない。むしろもっと見ていいんだよ?なんなら触ってもいいんだよ?

「ローニャさん、おはようございます」

「サクヤさん。おはようございます。......あの、そちらはもしかして魔狼ですか.....?」

「はい。昨日テイムして。ハクっていいます」

 可愛いでしょう?

「珍しいですね....。もしかしてサクヤさん、森の奥まで行ったんですか?」

「いや、まさか。俺が1人で森の奥まで行ったら即死案件ですよ」

 自分で言っといてなんだが、ですよね、と頷かれるのはちょっと悲しい。
 ではなぜ?と首を傾げられたので昨日起こったことを全て話した。


 ヴァルクのことは、"黒の悪魔"と言って伝えた。本当はそんな呼び方したくないけど、そう言わないとわからないので仕方なく。
 ローニャさんは案の定、驚いた顔をしている。ロベルトからヴァルクの事を聞いていたとしても、すぐに飲み込める話ではないんだろう。

 ちょっと複雑だけど、地道にわかってもらうしかない。

「.........なぜ魔熊が.......」

 .....ん?驚いてたの、ヴァルクについてじゃない.....?
 ぽつりと呟いた言葉はヴァルクの事ではなく魔熊の事だ。

「魔熊がどうかしたんですか?」

「.....今まで、森の中で確認されたことはあっても、人通りのある場所で確認されたことはないんです」

「そうなんですか?」

 知らなかった。

「はい。しかも魔狼を襲うなんて......。サクヤさん、その魔熊は今どちらに?」

「え、ヴァルクが持っていきましたけど.....」

 肉は食料に、毛皮はコートにすると言っていた。

「そうですか.....。情報提供、ありがとうございます。今後もこういった情報を報告してくださると助かります」

「わかりました」

「ありがとうございます。先にこちらの話をしてしまって申し訳ありませんでした。本日はどのようなご用件でしたか?」

 ヴァルクの事は一切聞かず、話が終わってしまった。嘘だ、と言われないことはよかったのだが、何も聞かれないなら聞かれないでちゃんとわかってるのか少し不安になる。めんどくさいのはわかってます。

「....あの、ヴァルクのことは信じてくれるんですか?」

「え?あ、はい。ギルド長からもある程度伺っていましたし、サクヤさんが嘘をつくようには見えませんので」

 ローニャさん....!!なんて良い人なんだ!知ってはいたけど!
 拝みながらお礼を言い、依頼を受けてからギルドを後にした。


 依頼を終えて戻ると、明日はギルドは休みだと言われた。素材の換金などは行っているが、依頼の受注は行わないらしい。
 明日は何が起こるかわからないから、とダンジョンへ行く人たち以外は外出禁止となっているので当然と言えば当然か。



 そして翌日。
 いつものようにハンスさんのご飯を食べてギルドへと向かう。ハンスさんの街の外には行くなよ、と投げる声に曖昧に返事をして宿屋を出た。


 ギルドへ入ると、いつもより重々しい空気が漂っている。そんなに緊張しなくてもいいのにな、と思いながら辺りを見回してロベルトを探す。

「どうした坊や。迷子か?」

「うわっ!」

 突然後ろからがばりと抱きつかれ、柔らかいものが背中に当たる。大きい声を出してしまったせいでみんなの視線が集中した。
 だ、誰だ?ってかなにこの柔らかいやつ!

 首を捻って後ろを見れば、すぐ近くに女の人の顔があった。金髪碧眼で癖のない長い髪をひとつに結んでいる。かなりの美人さんだ。

 .......ってことはこの背中に当たってるのって......。

 柔らかいものの正体に気づき、一気に顔が熱くなる。なにしてんのこの美人さん!
 未知の柔らかさにあたふたしていると、さらに押し付けられた。

「やだなにこの子、めっちゃかわいいんだけど」

「ああああの!どちら様ですかっ!?」

「あ、ごめんごめん」

 そう言って離れてくれたのにも拘わらず、刺激が強いことに変わりはなかった。
 先程背中に当たっていた豊満な胸は布面積が少なくて見事な谷間が隠れておらず、お臍も丸出しだ。

 ゲームではよくある露出の高さだが本当にいるとは。防御力ゼロだろうに。
 どこに目をやったらいいのかわからず、足元辺りに視線を彷徨わせる。

「え、もしかして女の身体初めて?かわいい~!胸触る?」

 何を思ったのか俺の右手首を掴み、自分の胸へと近づける。
 ちょ!痴女ですか!?こんな人前で!

 やめてくださいっ、と言いながら腕も引くが、今日ここに呼ばれているだけあって力が強い。


「ミーア、なにしてる」


 いつの間にか静かになっていたギルドに声が響く。そこまで大きな声ではなかったのに、腹にまで響いた。この声の主はロベルトだ。
 ロベルトの声で、ミーアと呼ばれた美女の握力がふっと緩む。そのお陰で双丘に触れる前に右手を回収できた。

「なにって、かわいこちゃん見つけたから愛でてただけだけど?」

 かわいこちゃん!?それ俺のこと!?

「ったく、場所を考えろ。お前もだ、サクヤ。なぜここにいる」

「え?いやだって——」

「サクヤっていうの?名前までかわいいじゃーん!ね、ね、付き合ってる人いるの?」

 美女——ミーアさんが再びぐいぐいと近いてくる。
 圧がすごいんですけど!
 ちょっと怖くなって後ずさると、ロベルトの人差し指がミーアさんの額を捉え、それ以上近づいてくることはなかった。止められたミーアさんはロベルトをキッと睨みつける。

「邪魔しないでくれる?」

「時と場所を考えろって言ってんだよ。もうすぐ出発の時間だぞ」

 ミーアさんの睨みは相当迫力があったが、それに怯むロベルトではない。ど正論に反論はできなかったようで、ため息をつきながらがっくりと肩を落とした。

「わーかーったーよー。ならさっさと行って片付けてこよ。サクヤ、それまでここで待っててね」

「え?俺も行きますけど....」

「そうなの?」

「はぁ!?」

 なぜかロベルトまで驚いている。俺的には行かないなんて選択肢はなかったんだけど。

「駄目だ」

「は!?なんで!」

「自分の身も守れない奴は連れて行けない」

「っ、でも、危ないことなんて——」

「それでも、だ」

 起こらないのに、と続けようとしたが言い終わる前に遮られてしまった。いつもはそんなことしない。話を全部聞いた上で判断するのに。ということはきっと何を言っても連れて行く気はないんだろう。

「..........わかった」

 なら勝手について行く。

 だが頷いた直後、視界が反転し浮遊感に襲われた。

「わっ!ちょ、ロベルト!なんでっ!」

 ロベルトは無言で俺を肩に担ぎ、どこかへ歩いていく。

「どうせ駄目だと言ってもついて来るだろ」

「なっ!」

 バレてる!なんで!?

「お前の考えることなど大体わかる。戻るまで部屋で大人しくしていろ。ローニャ、こいつ見張っとけ。俺が戻るまで絶対外に出すなよ」

「わ、わかりました」

「は!?やだっ!待って、ロベルト!」

 嫌だ嫌だと暴れたが、無理矢理二階の部屋に閉じ込められた。

 監禁は犯罪だぞ!!
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