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一章
8話 誘い
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次の日、高校生になってから初めての授業が始まった。
始まったと言っても初回授業なのでそんな大した内容ではない。
おかげで全く疲れずに済んだ。
すでに入学三日目というのもあり、段々と仲のいいグループができてきている。
俺はまだ桜さんとしか話していない。
自分が中学生の時は家柄のせいなのかわからないが、先生含めあまり人が寄ってこなかった。
小学校の頃仲良かった友達も中学生になり、少し大人になった瞬間に俺から離れていった。
さらに、女子から告白され断っていくたびに俺と他の生徒との溝が深く広くなっていた。
そんな感じで中学校三年間を過ごしてきたせいで、邪魔者扱いされるボッチ生活には大分慣れている。
「あの…」
きっと来週には桜さんも仲のいい友達を見つけ、その子とつるむんだろう。
そして俺はまたボッチ生活がが始まる。
これは俺の考えでしかないのだが、中学生よりもさらに視野が広くなった高校生はきっと俺との距離をさらに取ることだろう。
別にそれが嫌なわけではないが、集団で何かをするときに予期せず何かの障害になってしまうと人間はなぜか八つ当たりするようにその「障害」を責める傾向にあるのでそれだけは避けたいと思っている。
「あの、すみません。聞いていますか?」
「え、あ、はい。考え事してました」
「今日この後。つまり放課後ですね。少し私に付き合ってはくれませんか?」
「え?」
それはつまり俺に寄り道をしろと?
というか、何をするのか。
そもそも俺にそんな時間はないのだが。
「すみません。他の人を誘ってください」
「そうですか…。また日を改めます」
そう言うと、一人足早に教室を出て帰っていった。
俺はやんわりと断ったが、何か用事があったと思ったらしく次の日も、また次の日も誘ってきた。
「なんでそこまで私に固執するのですか?」
しびれを切らした俺はややキレ気味に聞いた。
「なんでもいいじゃないですか。たまには息抜きもいいですよ」
「…は?」
あまりにも馬鹿らしい理由。
ありえない。
なぜ自分の時間を無駄にしなければいけない。
わからない。
「なぜ息抜きなどしなければいけない?」
「息が詰まるからですよ。蔭西くんは慣れているみたいですけどね」
息が詰まる?
そんなの言っていたらきりがないではないか。
俺にとって勉強は息抜きだ。
勉強しておけば家族に何も言われないうえに、一人の世界に入ることができる。
しかも好きで勉強をしている俺を見て、息が詰まっていると遠まわしに言った。
「私がお手本を見せてあげますよ」
「つまりその誘いに乗らないと乗るまで毎日誘ってくると、そういうことですか?」
「そうですよ」
呆れた。
どれだけ暇なんだ。
俺がいつ誘いに乗るか分からないせいで、だいぶ迷惑をかけている。
そう思うと、何故か罪悪感が生まれてきた。
「仕方ない。今日だけですよ」
「私から誘うのはですけどね」
私から誘う、というとは俺から誘う時が来るということだろうか?
それは無いだろう。
どうせ桜さんも俺から離れていく。
桜さんは満面の笑みを浮かべると、急かすように俺の手首を掴んだ。
動く度にふんわりと花のいい匂いが香る。
俺はそんな彼女を可愛いと思うと同時に、純粋な彼女に後ろめたさを感じていた。
始まったと言っても初回授業なのでそんな大した内容ではない。
おかげで全く疲れずに済んだ。
すでに入学三日目というのもあり、段々と仲のいいグループができてきている。
俺はまだ桜さんとしか話していない。
自分が中学生の時は家柄のせいなのかわからないが、先生含めあまり人が寄ってこなかった。
小学校の頃仲良かった友達も中学生になり、少し大人になった瞬間に俺から離れていった。
さらに、女子から告白され断っていくたびに俺と他の生徒との溝が深く広くなっていた。
そんな感じで中学校三年間を過ごしてきたせいで、邪魔者扱いされるボッチ生活には大分慣れている。
「あの…」
きっと来週には桜さんも仲のいい友達を見つけ、その子とつるむんだろう。
そして俺はまたボッチ生活がが始まる。
これは俺の考えでしかないのだが、中学生よりもさらに視野が広くなった高校生はきっと俺との距離をさらに取ることだろう。
別にそれが嫌なわけではないが、集団で何かをするときに予期せず何かの障害になってしまうと人間はなぜか八つ当たりするようにその「障害」を責める傾向にあるのでそれだけは避けたいと思っている。
「あの、すみません。聞いていますか?」
「え、あ、はい。考え事してました」
「今日この後。つまり放課後ですね。少し私に付き合ってはくれませんか?」
「え?」
それはつまり俺に寄り道をしろと?
というか、何をするのか。
そもそも俺にそんな時間はないのだが。
「すみません。他の人を誘ってください」
「そうですか…。また日を改めます」
そう言うと、一人足早に教室を出て帰っていった。
俺はやんわりと断ったが、何か用事があったと思ったらしく次の日も、また次の日も誘ってきた。
「なんでそこまで私に固執するのですか?」
しびれを切らした俺はややキレ気味に聞いた。
「なんでもいいじゃないですか。たまには息抜きもいいですよ」
「…は?」
あまりにも馬鹿らしい理由。
ありえない。
なぜ自分の時間を無駄にしなければいけない。
わからない。
「なぜ息抜きなどしなければいけない?」
「息が詰まるからですよ。蔭西くんは慣れているみたいですけどね」
息が詰まる?
そんなの言っていたらきりがないではないか。
俺にとって勉強は息抜きだ。
勉強しておけば家族に何も言われないうえに、一人の世界に入ることができる。
しかも好きで勉強をしている俺を見て、息が詰まっていると遠まわしに言った。
「私がお手本を見せてあげますよ」
「つまりその誘いに乗らないと乗るまで毎日誘ってくると、そういうことですか?」
「そうですよ」
呆れた。
どれだけ暇なんだ。
俺がいつ誘いに乗るか分からないせいで、だいぶ迷惑をかけている。
そう思うと、何故か罪悪感が生まれてきた。
「仕方ない。今日だけですよ」
「私から誘うのはですけどね」
私から誘う、というとは俺から誘う時が来るということだろうか?
それは無いだろう。
どうせ桜さんも俺から離れていく。
桜さんは満面の笑みを浮かべると、急かすように俺の手首を掴んだ。
動く度にふんわりと花のいい匂いが香る。
俺はそんな彼女を可愛いと思うと同時に、純粋な彼女に後ろめたさを感じていた。
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