彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

30話 テスト当日

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今日から中間テストが始まる。
テストが始まる前の時間はとても憂鬱で、長く感じてしまう。
そのせいで余計に緊張してしまう。
しかし、いざテストが始まると時間は何倍ものスピードで流れていく感覚に陥る。

「ふぅ…」

お昼になり、一時的に気を抜ける空間になる。
テストで抑圧されていたのか一気にクラス、いや学校が騒がしくなった。

「どうだった?」

桜さんはお弁当を持ちながら人混みをかきわけ、俺の席まで来た。
その顔はテストのせいか少し疲れている。

「ごめんね。テストなのにお弁当作ってもらって」
「大丈夫だよ。これは私が好きでやってることだから」
「そっか。ありがとう」

俺はお弁当を開き、最初に卵焼きを口にした。
いつもよりほんのり甘い。

「今日の卵焼きは少し甘いな」
「口に合わなかった?」
「いえ、美味しいですよ。疲れた頭には甘い物ともいうし」
「良かったぁ」

桜さんの作ってくれるお弁当はどれも自分で作るお弁当よりもはるかにおいしく、
栄養バランスを考えられている。
にしても、ほぼ毎日作ってくれていてなぜだか罪悪感が湧いてきてしまう。

「その、材料費とかだすよ」
「大丈夫です。材料費込みで『お弁当を作る』ですから」
「それならいいけど…」

前にも聞いたことはあったが、同じような理由で拒否された。
作ってもらっている側なので強く出ることができない。

「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです」
「お粗末様です。明日のお弁当も楽しみにしていてください」
「いつもありがとう」

気づいたら、俺の毎日の楽しみの一つに「桜さんのお弁当」が追加されていた。
きっと桜さんのお弁当には、「桜さんと食べるお弁当」という意味もあるのだろう。
なんだかんだでこの時間が日常的に味わえている幸せな時間だ。

「中学生の頃の定期テストは3日ぐらいに分割されてるのに、高校になったら一気にやるんだね」
「多分、この高校だけ」
「えっ…。疲れるからやめて欲しいなぁ」
「でも、そのかわり明日の土曜日が休みだよ」

自分が中学生の頃は土曜日も学校だったからか、この土曜日も授業があるという習慣に慣れている。
対して、桜さんの通っていた中学校は土・日と休みだったらしい。

「それは嬉しいかも」

チャイムが鳴り、全員が席に着く。
残るはあと3科目。
英語、古文、物理だ。
なかなかにハードだが、明日が休みだと考えれば楽に思える。

明日…。
そういえば明日は桜さんとどこかに行くんだっけか。
テストのせいですっかり忘れていた。

「…………」

昨日の夜のことを思い出してしまい、テストとは別の緊張が俺の思考を麻痺させる。
深呼吸だ。焦るな。今はテストに集中しろ。

先生が問題用紙と解答用紙を持って教室に入ってくる。
それらを配り終わり、開始の時間になった。

「始め」

先生の低い声が教室内に響くと同時に、問題用紙をめくる音と解答用紙に書き込む音が聞こえてくる。




「終わった~。一日で全部やるのはきついなぁ」
「確かに。大分疲れたな」
「今日は帰ったらもう寝ようかな」
「俺もそうすると思う」

テストが終わり、駅までの道で明らかに疲れている桜さんにいつものような元気はなかった。
喋れないぐらいに着かれているようで、さっきの会話から電車に乗るまで桜さんは言葉を発さないでいる。
しかし電車に乗ると思い出したかのように携帯をいじり始めた。

ピロンと音が鳴り、俺は自分の携帯を見る。

「今日の写真。蔭西くんも大分疲れてるよ」
「ああ、確かに」

送られてきたのは学校から駅までの道で撮られたであろう、生気のない自分の写真が送られてきた。
この写真からは自分が自分で思っている以上に疲れていることがわかってしまう。

「そうだ。明日は朝10時に昨日私がいた場所集合ね」
「ん?ああ」

昨日の場所、とは昨日桜さんが待っていた待合所のような所の事だろうか。

「明日、特別楽しみにしててね」
「わ、わかった」

そう言って、桜さんは電車を降りた。
特別楽しみに待っててね。
そう言った桜さんからはいつもとは違う、雰囲気があった。
それはひとえに疲れているから、ということではなさそうだ。

…なぜだか動悸が止まらない。
ドキドキしてるのに、なぜだかワクワクしている。
そしてとても心が温かい。
あぁ、明日が待ち遠しい。
明日が楽しみでたまらない。

「…楽しみだなぁ」

思わず気持ちが溢れて言葉が口から洩れた。
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