彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

断章

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「とっても言いにくいんだけど…。その、私と付き合ってくれない?」

気づいた時にはその言葉が口から零れ落ちていた。
意図せず、ぽろっと。
水滴が落ちるように。

「まだ会ってから半年も経ってないけど、蔭西くんのことが好きで。大好きで。だから…」

なんか色々てんぱって、変な事を言ってしまう。
言った後すぐに恥ずかしくなってしまった。
緊張のあまり呼吸が浅くなり、蔭西くんの顔を見ることさえできない。

返事が返ってくるまでがとてもとても長く感じる。

「…ちょっと待ってくれないか?考える時間が欲しい」
「えっあっ、いいよ」

……………。
だ、だよね。
いきなりそんなこと言われてもびっくりするよね。
私も理解出る。
理解できる、けど…。

「ありがとう。そしてその間にもどかしい思いをさせてごめん」
「いや、そんな。別に…」

別に…。
あぁ、自分はダメなのかな。

自分らしくもないネガティブな考えが頭をよぎる。

怖くなってうつむき、深呼吸をする。
いつものように口角を上げて、あくまでも自分は明るい、そんな人でありたい。

「大丈夫だよ。いくらでも待つ」

待つから。

「そっ、か。じゃあ帰ろうか」

その言葉はとても優しかった。
この関係が壊れてしまうのではないか、距離を置かれるのではないか、
と勝手に恐怖している自分を優しくすくい上げてくれるような。

………………。

違う。
そう考えないと、不安と恐怖で押しつぶされそうになっちゃいそうなんだ。
言い方は優しかったけど、私はその優しさが少しだけ怖い。

ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと考えていると、駅に着いてしまった。

「じゃあ、返事待ってるね」
「あ、ああ。また明日」

そう言い電車のドアが閉まった。
少し階段を上がり改札から出る。

「はぁ…」

深く息を吐く。
それでも不安と恐怖は消え去らない。
思わず走りはじめる。
この甘酸っぱい不安や恐怖から逃げるために。

「はぁ、はぁ。ただいま」

息が切れながらもガチャリと家のドアを開けて、自身の帰りを知らせる。
しかし返事はない。

「………」

蔭西くんには、おばあちゃんが他界した、と言ったが、
病弱だったお母さんも昨年に他界してしまった。
そのため今は父との二人暮らし。
しかも父は私を贅沢に養おうと、朝から夜遅くまで仕事で家を留守にする。
父のおかげで私は今の学校にも入れたし趣味も楽しめている。
けど…。

「たまには、一緒にいてよ」

自分の部屋に入り、アクセサリーが入っている引き出しを開ける。
そこから大事にハンカチで包んでいる蔭西くんに買ってもらったヘアピンを取り出した。

「ふー。ふふっ」

こんな感情初めてで、自分自身ビックリしている。
ドラマや漫画で見る「恋」とはこういうものなのか、と今改めて実感する。
眠くなってきて先ほどの不安や恐怖をあまり感じなくなった。

髪につけているヘアピンを触り、これが夢ではないことを確認する。
これまでの事が夢ではない、と自分に言い聞かせる。
ふぅ、と一息つくといつの間にかにポカポカと暖かい気持ちになっていた。

まだ私の夢のような日々は続いている。

「おやすみなさい」

部屋の明かりを消し、目を閉じる。
目を閉じると今日あったことが鮮明に思い浮かぶ。

もし蔭西くんと付き合えたら、こんなことをしたい。
あんなことをしたい。
と考えていると、途中でコテンと寝てしまう。

今日はいろいろあったけど、とても、とっても楽しかったなぁ。
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