彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

断章

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部活で蔭西くんと二人きりになってしまった。
まさか二分化されるとは思っていなくて、とても気まずい。
でも、ここで気にしているような雰囲気を出すのは違うように思える。

「どこを、撮る?」

思わず言葉が突っかかる。

「え、ああ。所々で撮ろうかな」

どこか不自然さを感じる。
やっぱり私の事を意識してくれているのだろうか…。
それなら嬉しいけど、ただ気まずいだけなのは嫌だな。
そう思いつつも、その思いを紛らわすように道端のお花などを写真に撮る。

「今日はどんな写真を撮るの?」

この二人とも黙り込んでいる空気が嫌になり話し掛ける。

「えっと、特に決まってませんので行き当たりばったりで」

どこかよそよそしい物言いで、下を向いた。
私はどこか躍起になり、

「空がオレンジ色になってきたね」

と言う。
すると、ばっと顔を上げた。

「とても、綺麗ですね」

話すことを思い出したかのように、そう呟いた。
私も空を見上げる。
太陽が眩しくて反射的に手を上げて光を遮る。
確かに、とても綺麗な空だ。
青やオレンジ、赤のグラデーションがとても綺麗。
こんな空とはよく出会うが、今日の空は一段とキラキラとして美しい。
私はそっと蔭西くんを見ようとした。
が、蔭西くんと目が合ってしまった。

「とても、とても美しい」

途端、そんなことを言われる。
私の目を真っ直ぐ見て。

「え、あ、ありがとう」

あがってしまい、これしか言えなかった。
恥ずかしさと嬉しさで頭が爆発しそうだ。

「さ、桜さんはどういうのを撮るんですか?」
「こういうの、かな」

私は無造作にカメラを蔭西さんに渡した。
蔭西くんは渡すなり、私の撮った写真に見入っている。

「………」

恥ずかしい。

単純に恥ずかしい。
自分がキレイに撮ろうと頑張った写真たちをまじまじと見られる。
これまでは特に抵抗はなかったが、なぜか蔭西くんに見せるとなると恥ずかしくなってしまう。


「桜さん!」

長い間をおいて、唐突に力強い口調で呼ばれた。
反射的に振り返る。

「どう、しました?」

どこか緊張した雰囲気になる。

「返事を、聞いてくれますか?」
「は、はい!」

唐突に告げられた言葉。
希望と恐怖が同時に襲ってきてぐちゃぐちゃになる。
呼吸が荒くなるのが自分でもわかってしまう。

「その、返事ですが…」

生唾を飲みこむ。
いよいよ答えが告げられる。
そう思うと、血の気が引いていく。

「はい。僕と付き合ってください」
「もちろん!喜んでっ!」

頭で理解するより先に体が動く。
目の前にいる蔭西さんに思いきり、抱き着いた。

「本当に、嬉しい。ありがとう…」

嬉しすぎて声が震える。
泣きそうだ。

「こちらこそ、ありがとう」

耳元で優しくそう言われると、さらに泣きそうになってしまう。
私は彼から離れ、鼻をすするとおもむろに携帯を取り出して構えた。

「はい、ちーず!」

ぱしゃりと音が鳴った。

「ふふっ。今日の一枚」

撮った写真を見ると、蔭西くんはとても穏やかに優しく微笑んでいた。

「改めてよろしくね。蔭西くん」
「よろしくお願いします。桜さん」

私はすぐにホーム画面を今撮った彼との写真に変えた。
でもこのことは内緒にして欲しい。
なぜかって?
それは、とても恥ずかしいから。

今の私は幸福でいっぱいだ。
そしてとても甘酸っぱく、充実しているひとときを過ごしている。
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