彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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二章

56話 自覚

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「その、ありがとう」

すっかり日が暮れ、俺と桜さんは家へ帰るためにタクシーに乗った。
姉はまだ日本にいるようで、ディナーを食べにどこかのホテルに行くようだ。

「楽しかった?」
「もちろん。でも、ちょっと買いすぎたかな」

桜さんと俺の隣には大小さまざまな紙袋が6、7つある。
服に日常用品、ちょっとした家具と色々なものを買った。

自然と手を絡ませる。

「………」
「……」

この幸せを嚙みしめる。
今でも恥ずかしいが、それよりも「幸せ」が勝つ。
照れるというよりも、だらしない表情を浮かべてしまう。

しばらくそんな時間が続き、家に着く。
支払いを済ませてから荷物を持ちタクシーを降りる。

「…どうやって家の中に入ろう」
「どうしよ…」

二人とも紙袋で両手がいっぱいいっぱいで、カギを開ける余裕がない。
とりあえず紙袋を地面に置いてバッグからカギを取り出して開けた。

「ありがとう」
「どういたしまして~」

紙袋をもう一度手に持ち、家に入る。

「ふぅ。先にお風呂入ろうかな」

桜さんは紙袋を置くと、そう言って脱衣所へと入っていった。

「じゃあ片付けとくよ」
「ありがとう」

俺はとりあえず手を洗い、クローゼットを開ける。
中には制服と私服が2着しかなかった。
そこに今日買った服をかけていく。
3着、4着、5着と増えていき、なぜか感慨深いものを感じた。

感じる物の多さとは裏腹に、手だけは淡々と片づけをしていく。
服はクローゼット、ティッシュは一番下の棚、フライパンはコンロ下の引き出し。

「あがったよ~」

そう声がして時計を見る。

もう7時半か。

「りょうかーい」
「その、ごめんね」

お風呂から唐突にそう言われる。

どうして、謝るんだ?

「私だけ楽しんで、お金いっぱい使って…」
「俺も楽しかったよ」
「でも…。そんな、他人のお金を」

他人…。
確かにそうだ。
何を自分は勘違いしていた。
関係が少し特別なだけで、恋人など所詮は他人。

「他人じゃなければいいの?罪悪感は生まれない?」
「えっ?」

自分は何を焦っているんだ?
何を言おうとしている?

パジャマを着た桜さんが脱衣所から出てくる。

「…ごめんね。そんな顔をさせて」

こっちこそだ。
また悲しそうな、申し訳なさそうな顔をさせてしまった。

「ならさ、結婚しない?成人してからの話だけど、そう遠い話ではない」
「え…」

支離滅裂だ。
何を自分は言っている。

「きっとお金に困ることもないし、それに…」
「ちょっと考えさせて」

桜さんは怖い声で言った。

「…ごめん。お風呂入ってくる」

俺はそう言って桜さんの横を過ぎて、脱衣所に入る。
自然と涙が頬を伝って下に落ちる。

本当に、何を言っているんだ俺は。

「ははっ」

自分のバカさ加減に色のない笑いが出る。



人間は物語のようにうまくは出来ていない。
気持ちが一定であるなんてことないし、ちょっとしたことでその気持ちは大きく揺れ動く。
すべてに悲観的になり、勝手に自分の中で「救い」を作ることもある。
理性が自分についてこなくなって、そんな自分が怖くなる。



しかし、それを自覚して乗り越えることで人間は成長する。
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