35 / 82
第二章:ゲヘゲラーデン、責任を感じてビダーヤ村を去り旅路に着くのこと。
第十四節:ゼスとクヴィェチナ、一度はレイ・チンを退けるのこと。
しおりを挟む
その晩、クヴィェチナはゼスの家に二泊目の宿を取った。
「クヴィちゃん……、クヴィちゃんってば」
ゼスを起こすクヴィェチナ。時刻はおおよそ深夜、まだ月の光が輝いている頃のこと。
「だから、クヴィちゃん言わないでよ、ゼス……。
何よ、こんな夜更けに」
「しっ。……妙な気配、しない?」
こそこそとした声でクヴィェチナの耳元で囁くゼス。
「……ゼス、まさか……」
「うん、ひとまず、やり過ごそう」
「やり過ごすって、どうやって?」
「もしもーし、誰かいらっしゃるかしらー?」
その禍々しくも涼やかな声は、明らかにレイ・チンであった。
「やばっ、もう表玄関まで来てるじゃない!」
「しっ。……窓から地面まではそんなに高くないと思う、行くよ」
「う、うん……」
子供の身には多少高いながらも、越えられないほどの高さではない窓から二人は脱出した。
「おかしいわねえ、確かにあの子の家に行ったと思ったんだけど……」
そして、表玄関から不法侵入をしていたレイ・チン。鍵を魔法であけたのか、あるいはゼスの家の者を洗脳したのか。ずかずかとゼスの家を物色して、あることに気付いた。
「……ははぁん、頭隠して尻隠さず、よねえ……、可愛らしいんだから……」
「ししょーの所に行くのね、ゼス」
「それも考えたんだけど……」
外へ駆け出す二人。目指すはゲヘゲラーデンが一応の住まいとして鎮座している村はずれの洞窟。だが……。
「あら、ごきげんよう」
レイ・チンは、すぐそこにいた。だが、その姿はどう取り繕っても人間とは言い難かった。月に照らされたその瞳は明らかに目の色が反転しており、どす黒い尻尾が生え、そして何よりも禍々しい気を沸き立たせていた。
「何、してるの、こんなところで」
警戒心も顕わにレイ・チンに問いかけるクヴィェチナ。
「あらあら、ご挨拶ね。私は貴女を探しに来たのよ?お父様、心配してらしたわよ?」
「お生憎様、父は貴女が洗脳したじゃないっっ!!」
と、あらかじめ魔法を唱えていたのか、クヴィェチナは間髪入れずレイ・チンめがけて攻撃魔法を放った!
「くっ、ゼロ距離射撃とは、やるわねお嬢ちゃん」
「私を甘く見ない事ね!ゼスっ!!」
「うんっ!」
「ッ!?」
レイ・チンへの攻撃魔法はフェイントだったのか、レイ・チンの背後にはゼスがいた。慌てて背後への構えを取ろうとするレイ・チンに対して、ゼスの剣が光った。
「……っっ、おこちゃま二人だと甘く見てたわ……」
慌ててゼスの剣を避け、そのせいか体勢を崩すレイ・チン。しかし、
「そこっ!」
そこにここぞとばかり唸るゼスの剣。その回転斬りはゼンゴウの資格を取ったと言える見事な腕前と言えた。
「ぐうっ!?」
明らかに深手を負ったレイ・チン。人間ならば明らかにそれは致命傷であった。……そう、人間ならば。
「「!?」」
首と胴が泣き別れになってもなお、意識を保っているレイ・チン。それは明らかに人ならざる者の生命力であった。
「ちぃぃっ、覚えてなさいよ!」
切られた首を拾い、レイ・チンは去っていった。
「クヴィちゃん……」
「ゼス……」
どちらからともなく、声を掛け合う二人。
「ごめん、逃がしちゃった」
「ううん、それはいいのよ。あんなの見たら誰だって怯んじゃうし。とはいえ……これでわかったわね」
「うん、あのレイ・チンって人は間違いなく悪魔。とはいえ、それをどう知らせたらいいか……」
……そして、よがあけた。
「クヴィちゃん……、クヴィちゃんってば」
ゼスを起こすクヴィェチナ。時刻はおおよそ深夜、まだ月の光が輝いている頃のこと。
「だから、クヴィちゃん言わないでよ、ゼス……。
何よ、こんな夜更けに」
「しっ。……妙な気配、しない?」
こそこそとした声でクヴィェチナの耳元で囁くゼス。
「……ゼス、まさか……」
「うん、ひとまず、やり過ごそう」
「やり過ごすって、どうやって?」
「もしもーし、誰かいらっしゃるかしらー?」
その禍々しくも涼やかな声は、明らかにレイ・チンであった。
「やばっ、もう表玄関まで来てるじゃない!」
「しっ。……窓から地面まではそんなに高くないと思う、行くよ」
「う、うん……」
子供の身には多少高いながらも、越えられないほどの高さではない窓から二人は脱出した。
「おかしいわねえ、確かにあの子の家に行ったと思ったんだけど……」
そして、表玄関から不法侵入をしていたレイ・チン。鍵を魔法であけたのか、あるいはゼスの家の者を洗脳したのか。ずかずかとゼスの家を物色して、あることに気付いた。
「……ははぁん、頭隠して尻隠さず、よねえ……、可愛らしいんだから……」
「ししょーの所に行くのね、ゼス」
「それも考えたんだけど……」
外へ駆け出す二人。目指すはゲヘゲラーデンが一応の住まいとして鎮座している村はずれの洞窟。だが……。
「あら、ごきげんよう」
レイ・チンは、すぐそこにいた。だが、その姿はどう取り繕っても人間とは言い難かった。月に照らされたその瞳は明らかに目の色が反転しており、どす黒い尻尾が生え、そして何よりも禍々しい気を沸き立たせていた。
「何、してるの、こんなところで」
警戒心も顕わにレイ・チンに問いかけるクヴィェチナ。
「あらあら、ご挨拶ね。私は貴女を探しに来たのよ?お父様、心配してらしたわよ?」
「お生憎様、父は貴女が洗脳したじゃないっっ!!」
と、あらかじめ魔法を唱えていたのか、クヴィェチナは間髪入れずレイ・チンめがけて攻撃魔法を放った!
「くっ、ゼロ距離射撃とは、やるわねお嬢ちゃん」
「私を甘く見ない事ね!ゼスっ!!」
「うんっ!」
「ッ!?」
レイ・チンへの攻撃魔法はフェイントだったのか、レイ・チンの背後にはゼスがいた。慌てて背後への構えを取ろうとするレイ・チンに対して、ゼスの剣が光った。
「……っっ、おこちゃま二人だと甘く見てたわ……」
慌ててゼスの剣を避け、そのせいか体勢を崩すレイ・チン。しかし、
「そこっ!」
そこにここぞとばかり唸るゼスの剣。その回転斬りはゼンゴウの資格を取ったと言える見事な腕前と言えた。
「ぐうっ!?」
明らかに深手を負ったレイ・チン。人間ならば明らかにそれは致命傷であった。……そう、人間ならば。
「「!?」」
首と胴が泣き別れになってもなお、意識を保っているレイ・チン。それは明らかに人ならざる者の生命力であった。
「ちぃぃっ、覚えてなさいよ!」
切られた首を拾い、レイ・チンは去っていった。
「クヴィちゃん……」
「ゼス……」
どちらからともなく、声を掛け合う二人。
「ごめん、逃がしちゃった」
「ううん、それはいいのよ。あんなの見たら誰だって怯んじゃうし。とはいえ……これでわかったわね」
「うん、あのレイ・チンって人は間違いなく悪魔。とはいえ、それをどう知らせたらいいか……」
……そして、よがあけた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる