勇者失格

墨汁らぼ

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15… 勇者の友

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ジェイドはレオンが化け物を倒したところを見届けた後、アスカが待つテントに急いだ。

アスカは、父親の事、レオンの事、村のことが心配でテントの中をウロウロ動き回っている。

(父さんは・・・レオンは・・・!)

さっきジェイドに無理矢理飲まされたお酒のため、歩き回ると全身に回ってクラクラしたが、とてもジッとしていることなどできなかった。


ザッ

テントの入口が乱暴に開かれる。ジェイドだった。

「ジェイドさん・・・!村は・・・みんなはどうなったんですか?!」
誰よりも美しく、愛らしいアスカの瞳が真っすぐにジェイドを見つめる。

マントだけを羽織った体は布の隙間から、なまめかしい白い肌と誘うような香りを放っていた。

あまり表立っては知られていなかったが、人魚の村の女が異常な高値で売られる理由は、その希少性と他の人間にはない特殊なフェロモンにあった。

特に人魚の実を食べて完全に体が変化する半年間は、そこにいるだけで男が欲情すると言われているので、家族はなるべく家から出さないようにするのだ。

ジェイドはアスカをテントに作ってあるベッドに押し倒す。

「ジェイドさん!お願いします!・・・ボクに何をしてもかまいません、村がどうなったのか・・・どうか教えてください!」

ジェイドは手袋を歯で咥えて脱いだ。服や腰の剣はそのままで。

「ジェイドさん・・・!お願い・・・!」

「そうだな、失う前に教えてやろう。勇者レオンの話を。」

「勇者…レオン・・・?!」

「レオンは燃えさかる人魚の木から、勇者の証である煉獄の剣を取り出した。そして村に上がって来た化け物をその剣で倒したのだ。村長は言っている。レオンは世界を救うと。それだけだ。」

「レオン・・・ああレオン!やっぱりボクが思っていた通りだったんだ・・・!
レオンは普通の人間じゃない、何かをするために生まれてきたんだって!」
アスカの胸は高鳴った。夢が突然現実になったかのように。

そのレオンと共に旅に出るという夢は断たれてしまったが、それよりもレオンが勇者だったということの方が嬉しかった。

会って彼を抱きしめたいと心から思ったが、アスカに覆いかぶさって来たのはジェイドだった。

「・・・・」

アスカは覚悟を決めて目を閉じる。

肌に、ジェイドの青い服が擦れて動く。

腰に刺したままの剣が、アスカのあらわになった太ももに、カチカチと音を立てながら当たる。

ジェイドの指は長くて形が綺麗だな・・・レオンの指に似ている・・・そう思った瞬間、アスカは急に吐き気がこみ上げてきた。

レオンに抱かれている自分、を想像してしまったからだ。

(ボクはなんてことを考えたんだ・・・!親友なのに・・・!レオンを汚してしまった・・・!)
涙が溢れる。

「なぜ泣く。」
ジェイドが乳房をまさぐる手を止めた。

「・・・」

アスカは答えられない。

「恋しい勇者のことを考えていたのか?」

「ちがいます!ボクたちはそんなんじゃない!」

「忘れろ。お前はこれから女として汚辱にまみれた日々を過ごすんだ。レオンが勇者として栄光の日々を送っている間にな。」

「・・・・あなたは・・・どうしてボクを憎んでるの・・・?初めからあなたは・・・」

ジェイドの表情が初めて陰りを見せた。そしてそれまでの行為をやめ、アスカの足の間に乱暴に押し入ろうとしたその時、


ヒュー


どこからか空中を切るような音がした。


バサッ


白いテントの扉が切り下ろされる。

「アスカ!」

その声の主は・・・

「レオン!」

燃えるような紅い髪、煉獄の剣を手にした勇者だった。
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