人間兵器

ツチノコのお口

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本編

第6話 戦略の話

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 ステル隊長に耳打ちをした。この程度のことなら、義務に違反はしないだろう。
 ステル隊長は目をかっ開き、小声でなにかぶつぶつ喋ってる。「なるほど。」「でも、そうなると...」とか言ってたのは聞こえてた。
 そして、今度は俺の方に耳打ちしてきた。
「その案で行こう。ただ、これで上手くいかなかった場合は、全責任お前が償え」
 まぁ、そんぐらいは覚悟してた。ただ、絶対に失敗しないだろう。少なくとも、俺が奴隷なら、まんまと引っかかって、俺の思い描いてるあの行動をとる。

 ステル隊長が、
「この国を潰したい奴は、カチュカン帝国民になることを許可する。わが帝国では、奴隷として差別しないことを絶対約束しよう。」
と、始めた。少し歓声が聞こえた気がした。気のせいだろうけど。しかし、続けて
「ただし人間兵器として、奴隷戦争で戦うことを義務付ける。戦死した場合も、他の民と平等に、我々は責任を取らない。それでもいいやつは、武器を地面に置くんだ。」
 友樹は、数人こっちがわに来てくれたら儲けもんだと思っていた。1人増えるだけでも、結構強いと思ったからだ。きっとステル隊長も同じだろう。
 ただ、還ってきたのは大声の歓声だけだ。みんな笑い、そして踊る奴もいた。
 強制労働によって、歯向かうことを忘れていたようだが、結局はこんな国、一番潰したいと思っていたのは奴隷だろう。だから、こんなにヒャッハーしてるのだ。
 ということで、反発したのは約500人中2人ぐらいだった。技術云々というより、人数的にも簡単に倒すことができた。

 そっからは意外とあっけなかった。
 人数の暴力と、貴族の運動不足によって速攻で全滅まで持っていけた。ブリエシタンの領土は全てカチュカンが手に入れることができ、最小の国というイメージは消えることとなった。
 また、ブリエシタンの生き残り貴族からは、たんまり賠償金を請求し、その後ちゃちゃっと、牢獄に入れたりした。奴隷よりマシな制裁だろう。

 さあ。そんなことは置いといて、意外とあっさり終わった奴隷戦争では、あの訓練の意味を疑うほどの規模の戦争だったため、凄くお得に第2貴族にさせてもらえ、喜んでる人も多かった。
 そして、勝利に貢献した功績を称え、友樹は第2貴族のトップともいえる、「第2貴族第一階層」に入れてもらえた。無謀な作戦だったのは批判されたけど、あの場で戦ってたら、負けてたかもしれないというふうにも言われた。
 ちなみに彼は実際には、昔読んだ本に全く同じ戦略があったのを思い出しただけで、ただ運が良かっただけなのは、生涯内緒になることだろう。

 ひとつ、カチュカンで問題となる話題が出た。
「ブリエシタンのあった領土を俺らが手に入れよう」
と、世界中の国で運動が起こったからだ。
 ほとんどの人がこの動きに恐怖や嫌悪を示した。
 しかし、友樹は別だった。あんだけ訓練頑張ったのに、ちゃちゃっと戦争が終わってしまったのだ。
 友樹は訓練によって、少し変わってしまった。実は心の底では、戦争を楽しみにしていた。自分も気づかぬ内に。
 それが、すぐに戦争が終わってしまったがために、あまり楽しくなくなってしまった、というわけだ。
 今のうちに、人間兵器を確保しておこうという国の考えで、意味はないが人間兵器志願の応募をした。意味はないと思っていた。
だが、、、
 歴代初、人間兵器として戦場に出ることを自ら望んだやつがいる。これから、数々の伝説を作り上げた、本当の人間兵器として恐れられることとなる、手城友樹の誕生だった。
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