最愛の敵

ルテラ

文字の大きさ
上 下
23 / 115
アデリア戦

22話 罠

しおりを挟む
「あれは何だ?」
 ラズリ達もあっさりアデリアの部隊を制圧し、敵の上官と思われる奴らに巨大な大砲について尋問していた。
「あれは貴様らごときが理解できるものではない」
 敵の1人がきみの悪い笑みを浮かべて言う。
「あれは神が我々にくださった。神器」
「それを人を殺すために使うとは呆れたものですね」
「黙れ!貴様らが人なわけがあるか。我々は神の子。貴様らゴミが我々と同じなど片腹痛いわ」
 ズキ 
 頭痛がする。
『殺して』
「始まる」
「何?」
 レオが問う。
「神の裁きが始まる」
「神の裁きとは何だ?」
 レオは敵の足に剣を刺す。
 ‘ギヤァァァァァ’
 レオは胸ぐらを掴む。
「答えろ!」
 ラズリがその手を掴む。
「ラズリ!!」
「お前らの言う“神”とは何だ。貴様らの背後には誰がいる」
「“あのお方”が現れてから我々は絶大な力を手に入れた。皇帝すらも跪く。貴様らはあのお方になすすべなく殺される。このゴ・・・」
 ラズリは言い終わる前に奴の右肩から胸までを切り裂く。
「・・・始ま・・・る・・・あなたの・・お役に・・・“ソロモン様”」
「何?今おい・・・」
「ラズリ!」
 異様な魔力の流れを感じ、テントを出ようとする。しかし、
「ラズリ、閉じ込められた!」
 出口に向けて、魔法を撃ち込む。しかし、強力なため壊れない。
 レオは既に息絶えた敵を揺さぶる。
「チッ。おい開けろ」
 他の捕虜に聞く。だが、誰も知らない様子だった。
「どけ」
「ダメだ。ラズリここでは」
「やるしかない」
 ガシャン
「急げ!止めるぞ」
 2人は急いで大砲の方に行く。
「やばい、間に合わない」
 魔法でレオが矢を作り、大砲に向けて放つ。保護魔法がかけられているため。破壊することができない。
「逃げろーーー」
 ラズリは味方に聞こえるはずのない叫びをする。
 ピーーン 
『守れ』
 ラズリはその瞬間に大砲から放たれる光線の前に立ち、シールドを作る。しかし、一瞬で作ったため強度が足りず、ヒビができる。だがラズリは諦めない。
『守れ!』
『守れ!お前ははその為に生まれてきた』
 2人の男が交互に現れる。
「ラズリ・・・ラズリよせ!!」
 レオはラズリを抱きつき共に横に転がる。そして、それは味方やイニティームへ真っ直ぐ打ち込まれる。
「邪魔にするな。レオ!」
 レオはラズリを押さえつける。
「ラズリ、ダメだ」
「触るな!邪魔をするならしゃべるな、阻むな、目を背けていろ!」
「(また守れないのか)」
 ラズリの脳内に一人の血まみれの者が写し出される。
「ダメだ・・・ラズリ死なないで」
 レオは離さず、涙を流しながら懇願する。
 ラズリは力を抜く。レオの腕に優しく手を添える。
「さん・・・ラズリさん」
 何処からか叫ぶ声が聞こえた。2人には聞こえない。
「ラズリ!レオ!」
「おい!」
 肩を掴まれようやく我にかえる。
「え?みんな?どうして?」
 そこには死んだと思ったみんながいた。
「何素っ頓狂な顔してんだよ。レオ」
「まさか私たちが死んだと思った?」
「まぁ、俺たちもトートの情報がなかったら危なかったけどね」
「どういうことですか?トート」
「『影』さんが教えてくれたんです」

ー数時間前ー
「トート様でしょうか?」
 自分は背後から声がしたので振り向く。全身紫黒のマントに身を包んだ男がそこにはいた。
「どちら様でしょうか?」
「ライの部下です」
「ライの?」
「時間がありません。手短に用件を伝えます。アデリア帝国に怪しい通路を発見致しました」
「通路?」
 紫黒装束の男頷く。
「中を確認できませんでしたが、通路の方向からしてここイニティームに伸びてる可能性があるとのことです。我々は騙されたのかも知れません。急ぎパイロンにお伝えください」
 自分に一礼すると影に溶けるように消えていった。
 自分は全ての魔力を足に集中されて走り出す。走りながら腰にある銃に触れる。
「(間に合え)」

「おいマジかよ・・・」
 アイシャと合流したフィールは驚きに満ちていた。本当に人っ子1人いない。
「後はあそこか」
 フィールは白い建物を見る。
「そうね。行きましょう」
「だが、引っかかるんだよな」
「何が?」
「仮にあそこに住民がいたとしてどうしてこうももぬけの殻なんだ?」
「避難したんだからもぬけの殻でもおかしくないんじゃない?」
「避難させたんだから兵を配置したりするだろう。それに速すぎる」
「確かに、ここは鎖国状態だったんだから外部の情報は一切入って来ないはず。何処から私たちが進軍してくるって知ったんだろう。ライの話じゃ人の出入りはなかったはず」
「一旦撤退しよう」
しおりを挟む

処理中です...