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エウダイモニア
62話 誘拐
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一週間は何もなかった。まるで嵐の静けさのような。トートは不安が募る。
「・・・ト」
ドン
「い・・・スー」
「余所見すんな」
「すいません・・・」
「気持ちは分かりますが訓練は手を抜いてはダメですよ」
レオはアタナシアナの方を見る。つられてトートも見る。
アタナシアナはアイシャと共に魔力循環の練習をしていた。
トートはその光景を見た後、腰にある銃を取り出し眺め、仕舞い立ち上がる。
「もう一度お願いします」
トートは訓練を終え、一足先に屋敷へと戻った。
「ただいま帰りました」
「帰ったよー」
「おかえりなさいませ。皆さん」
「トートは何処に?」
レオが聴くと執事長とメイド長が顔見合わせる。全員に不安の表情が見える。
「帰ってきてないんですか?」
「どうした?」
ラズリが部屋から出てくる。
「ラズリ!トート見なかった?」
「いや」
全員が顔を見合わせる。
「俺は訓練所、付近探してきます」
「私も行く」
「俺はここら辺探す」
「執事長達はアタナシアナを頼む。ライの所に行く」
ー数時間後ー
パイロン、ライ、セリアが屋敷のリビングに集まる。
「今、『影』に情報収集させてるよ。でも・・・」
全員が分かっていた。トートは公爵家にいると。
バン ドン
「痛ってぇ」
「袋を取れ」
トートは顔の袋をされていた。それを勢いよく取られる。
「トート」
トートの目の前には公爵が高級なデスクに腕を突き拳にアゴを預け、椅子に座っていた。その目は相変わらず冷酷でトートを見ていなかった。
「縄を外せ」
「はっ」
手首に巻かれた縄を外される。
「何のようでしょう?」
トートは公爵に勝てる程の実力は十分にある。しかし長年の呪いがそれを許さない。あの人には絶対に逆らってはならないという呪縛。
「お前を嫡男として向かい入れてやる」
やるっか相変わらずだな。
トートは静かにため息を吐く。
「だが、その前に家族を蔑ろにした罰を受けて貰う」
えっ、トートは戸惑いの表情を浮かべる。
「連れれていけ」
トートの手首に魔力遮断の手錠を着けられる。
「離せ・・・離せ!」
抵抗しようとするが、何故か上手く力が入らない。
ドン バン ガチャ
トートは暗く、埃とカビの生えた部屋に閉じ込まれる。
「出して!!」
ドンドンドン
「出せ!」
バン
「出して・・・」
力なく蹲る。
そこはトートが昔、住まわされていた部屋。辛い過去。昔の自分ではないそう思っていた。しかし何に変わっていない。自分に嫌気がさす。
「まず、公爵家のことを話すね」
フェルナンデス公爵家、建国から皇帝に支えてる帝国唯一の公爵家。皇族の血も受け継いでる為、その権力は絶大で国の中枢を担っている。
現公爵家の家族構成は夫セトと後妻ネフティス、子供(トートを除く)息子と娘が一人ずつ。前妻は病死して、その後今の奥さんを向かい入れた。現在、奥さんは妊娠中。
前公爵とは違い現公爵は横暴で他者を見下す、不届者で公爵家の支持率は現在低迷中だ。
「つまり、トートを後継ぎにして、パイロンの後ろ盾を得て支持率アップをし、さらに皇帝の娘と結婚されることでその地位を絶対としようとしている?」
「またはトートを皇帝にして実権を握ろうとしているにかも」
ん~、全員が悩む。
「全部最悪だな」
ドドドン バン
メイド長が珍しくドアを勢いよく開ける。
「皇帝陛下がお越しになりました!」
全員がしっかり嫌な顔する。
「突然すまないな」
「失礼・・・」
執事長がお茶とお菓子を持ってきたがラズリが遮る。
「協力するのかしないのかはっきりしろ」
ラズリの態度に執事長が目を丸くする。
ヤーセ持ってきてくれ、っと皇帝が指示を出す。執事長がお茶を出し速やかに立ち去る。
「娘が歳の離れた男と結婚してもいいのか?」
フィールが確信を持って言う。
「何も分かっていないな」
ため息混じるに茶を啜る。
「何だと!」
フィールは立ち上がるがレオが制す。
「どういうことでしょう?」
皇帝が睨みながら問う。レオの殺意を感じ取ったフィールが静かに座る。
「(珍しく怒ってんな)」
ライは皇帝の哀れみも込めて静かに茶を啜る。
「貴族の結婚は仕事の一部だ。我はもちろん公爵も戦略結婚をした。愛など求めてどうする」
「(愛ね・・・)」
ライは茶を眺める。
バチン
皇帝が左を向く。その頬は赤く染まっていた。
「大人の都合に子供を巻き込まないで!」
ずっと黙っていたセリアが皇帝の頬を叩いた。
「仕事の一部?ふざけないで!産んだんだから感謝しなさい!?エゴを押し付けるくらいなら産まないで!」
声を荒げる。
「・・・ト」
ドン
「い・・・スー」
「余所見すんな」
「すいません・・・」
「気持ちは分かりますが訓練は手を抜いてはダメですよ」
レオはアタナシアナの方を見る。つられてトートも見る。
アタナシアナはアイシャと共に魔力循環の練習をしていた。
トートはその光景を見た後、腰にある銃を取り出し眺め、仕舞い立ち上がる。
「もう一度お願いします」
トートは訓練を終え、一足先に屋敷へと戻った。
「ただいま帰りました」
「帰ったよー」
「おかえりなさいませ。皆さん」
「トートは何処に?」
レオが聴くと執事長とメイド長が顔見合わせる。全員に不安の表情が見える。
「帰ってきてないんですか?」
「どうした?」
ラズリが部屋から出てくる。
「ラズリ!トート見なかった?」
「いや」
全員が顔を見合わせる。
「俺は訓練所、付近探してきます」
「私も行く」
「俺はここら辺探す」
「執事長達はアタナシアナを頼む。ライの所に行く」
ー数時間後ー
パイロン、ライ、セリアが屋敷のリビングに集まる。
「今、『影』に情報収集させてるよ。でも・・・」
全員が分かっていた。トートは公爵家にいると。
バン ドン
「痛ってぇ」
「袋を取れ」
トートは顔の袋をされていた。それを勢いよく取られる。
「トート」
トートの目の前には公爵が高級なデスクに腕を突き拳にアゴを預け、椅子に座っていた。その目は相変わらず冷酷でトートを見ていなかった。
「縄を外せ」
「はっ」
手首に巻かれた縄を外される。
「何のようでしょう?」
トートは公爵に勝てる程の実力は十分にある。しかし長年の呪いがそれを許さない。あの人には絶対に逆らってはならないという呪縛。
「お前を嫡男として向かい入れてやる」
やるっか相変わらずだな。
トートは静かにため息を吐く。
「だが、その前に家族を蔑ろにした罰を受けて貰う」
えっ、トートは戸惑いの表情を浮かべる。
「連れれていけ」
トートの手首に魔力遮断の手錠を着けられる。
「離せ・・・離せ!」
抵抗しようとするが、何故か上手く力が入らない。
ドン バン ガチャ
トートは暗く、埃とカビの生えた部屋に閉じ込まれる。
「出して!!」
ドンドンドン
「出せ!」
バン
「出して・・・」
力なく蹲る。
そこはトートが昔、住まわされていた部屋。辛い過去。昔の自分ではないそう思っていた。しかし何に変わっていない。自分に嫌気がさす。
「まず、公爵家のことを話すね」
フェルナンデス公爵家、建国から皇帝に支えてる帝国唯一の公爵家。皇族の血も受け継いでる為、その権力は絶大で国の中枢を担っている。
現公爵家の家族構成は夫セトと後妻ネフティス、子供(トートを除く)息子と娘が一人ずつ。前妻は病死して、その後今の奥さんを向かい入れた。現在、奥さんは妊娠中。
前公爵とは違い現公爵は横暴で他者を見下す、不届者で公爵家の支持率は現在低迷中だ。
「つまり、トートを後継ぎにして、パイロンの後ろ盾を得て支持率アップをし、さらに皇帝の娘と結婚されることでその地位を絶対としようとしている?」
「またはトートを皇帝にして実権を握ろうとしているにかも」
ん~、全員が悩む。
「全部最悪だな」
ドドドン バン
メイド長が珍しくドアを勢いよく開ける。
「皇帝陛下がお越しになりました!」
全員がしっかり嫌な顔する。
「突然すまないな」
「失礼・・・」
執事長がお茶とお菓子を持ってきたがラズリが遮る。
「協力するのかしないのかはっきりしろ」
ラズリの態度に執事長が目を丸くする。
ヤーセ持ってきてくれ、っと皇帝が指示を出す。執事長がお茶を出し速やかに立ち去る。
「娘が歳の離れた男と結婚してもいいのか?」
フィールが確信を持って言う。
「何も分かっていないな」
ため息混じるに茶を啜る。
「何だと!」
フィールは立ち上がるがレオが制す。
「どういうことでしょう?」
皇帝が睨みながら問う。レオの殺意を感じ取ったフィールが静かに座る。
「(珍しく怒ってんな)」
ライは皇帝の哀れみも込めて静かに茶を啜る。
「貴族の結婚は仕事の一部だ。我はもちろん公爵も戦略結婚をした。愛など求めてどうする」
「(愛ね・・・)」
ライは茶を眺める。
バチン
皇帝が左を向く。その頬は赤く染まっていた。
「大人の都合に子供を巻き込まないで!」
ずっと黙っていたセリアが皇帝の頬を叩いた。
「仕事の一部?ふざけないで!産んだんだから感謝しなさい!?エゴを押し付けるくらいなら産まないで!」
声を荒げる。
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