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エウダイモニア
63話 虚言
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「セリア」
レオが立ち上がっているセリアの肩に両手を置く。席を外しましょう、っといいセリアを外に連れて行く。メイド長にまかせ席に戻る。
セリアもまた貴族である伯爵家の娘としてい生まれ、自分の道ではなく親の引いたレールを歩まされようとしていた。だが兄が不便と思い、「権力不干渉」の軍事系学校に入学をさせてくれたのだ。
「すいません」
謝るものの、レオも納得していないようには見えない。
「いやいい」
つまり、ラズリがようやく口を開く。
「できないんだな?」
どれ程の時間が経っただろうか。自分は未だに閉じ込められていた。本当に後継ぎにするつもりがあるんだろうか?いやあの人が欲しいには後継ぎではなく“傀儡”が欲しいだけか。いっそう死ねば終わるだろうか。
しかしそんなことを考えるながらも食事は全て完食した。
「何なんだよ・・・」
笑う気力すらもない。その場に倒れる。
その後『影』からの情報を集まった。公爵家には魔法遮断装置が公爵家の敷地を覆っており、さらに警備が厳重のため侵入が難しく、下手に公爵を刺激してトートに危害が及んでは危ないと打ち切られた。
パイロンは制服に身を包み皇城の会議室へ訪れていた。アタナシアナはメイド長達が預かっている。
しかし会議というには名目で実際はパイロンと公爵家の裁判に近い状態だ。そして公爵の提案による異例の全国に生中継をされることとなった。会議には勿論、多くの貴族、皇帝も参加している。
「生中継って・・・」
フィールは呆れを隠せない。
「それだけ悪者にしたいんでしょう」
「悪者って・・・どうやってするつもりなんだか」
アイシャがため息混じりに言う。
「何でもいいさ。行くぞ」
『了解』
パイロン側からはラズリ、レオ、フィール、アイシャ。公爵家からはセト、妊娠中のネフティスが参加した。
「トートを出せ」
いきなり切り出す。
「トートは現在、後継者になるためのプログラムを行っているため無理です」
「後継者?人形の間違いだろう」
「まさか!大事な“息子”をそんなふうに扱う訳ないでしょう」
しかしその目には何の感情も無かった。
「今で手紙一つ寄越さなかったくせにトートがパイロンに入った瞬間に後継者扱い、しかも皇帝の娘と結婚させるつもりだとか」
貴族達の間でドヨメキが走る。皇帝の子供と結婚する。それは一族の地位や繁栄が確固たるものとなったも同然、その座を狙わない者はいない。
「結婚させようとしているのは息子の幸せのためです。皇族と結婚できて不幸な人間はいませんから」
仮面越しにパイロンの顔が歪む。しかしその怒りはセトだけに向けられたものではない。
セトの発言に多くに者が納得していることには腹がたった。今にでもこの場にいる全員を殺してそうな勢いだ。しかし、そうはしない。感情に任せた暴力ほど愚かなことかを知っているから。
「先ほどの質問がまだです。何故トートに手紙を寄越さなかったんですか?」
「それが負担になりたくてなかったからですよ。手紙を送ることで余計なプレッシャーを与えたくなかった。私なりの優しさですよ」
よくもそんなことが抜け抜けと
「それにこれは当たり前のことです」
「何?」
「貴族の結婚は全てが家のためです。誰一人自らの意思で結婚は出来ないんですよ。それが当たり前です。何も知らない者達が口を出さないで下さい」
公爵は冷淡な目でことらを睨めつける。
貴族達はそれを聞き、納得と言わんばかりに頷く。彼らには罪悪感などこれぽっちもない。そもそもそんなものを持っているのかどうかすら危うい。
「家がそんなに大事か?」
フィールの質問に目つきを変える公爵。
「当たり前でしょう。家門は先祖が弛まぬ汗と涙と血の結晶。こんな贅沢な暮らしができているのも全部、先祖のおかげだ。それにこれは子孫のためでもあるんです。思ったことはありませんか?一度でいいから金に困らない生活をして見たいと。だが人生は一度きり。後なんてないんです。だから私達の所に生まれてきた子達だけはせめて不自由なく暮らさせてあげたい。そう思うのは罪でしょうか?」
「(こいつ)」
それが常識であるかの様に一息で言う。公爵の発言にフィールは拳を握り何とか怒りを抑えつけることしか出来ない。
これが当たり前、貴族の世間の。
ラズリは仮面越しに皇帝を見る。皇帝の顔には何の表情もなかった。ただそこで座視をしていた。まるでタイミングを見計らう様に、そこにある光景を見ていただけだった。
どうしたものか。
レオが立ち上がっているセリアの肩に両手を置く。席を外しましょう、っといいセリアを外に連れて行く。メイド長にまかせ席に戻る。
セリアもまた貴族である伯爵家の娘としてい生まれ、自分の道ではなく親の引いたレールを歩まされようとしていた。だが兄が不便と思い、「権力不干渉」の軍事系学校に入学をさせてくれたのだ。
「すいません」
謝るものの、レオも納得していないようには見えない。
「いやいい」
つまり、ラズリがようやく口を開く。
「できないんだな?」
どれ程の時間が経っただろうか。自分は未だに閉じ込められていた。本当に後継ぎにするつもりがあるんだろうか?いやあの人が欲しいには後継ぎではなく“傀儡”が欲しいだけか。いっそう死ねば終わるだろうか。
しかしそんなことを考えるながらも食事は全て完食した。
「何なんだよ・・・」
笑う気力すらもない。その場に倒れる。
その後『影』からの情報を集まった。公爵家には魔法遮断装置が公爵家の敷地を覆っており、さらに警備が厳重のため侵入が難しく、下手に公爵を刺激してトートに危害が及んでは危ないと打ち切られた。
パイロンは制服に身を包み皇城の会議室へ訪れていた。アタナシアナはメイド長達が預かっている。
しかし会議というには名目で実際はパイロンと公爵家の裁判に近い状態だ。そして公爵の提案による異例の全国に生中継をされることとなった。会議には勿論、多くの貴族、皇帝も参加している。
「生中継って・・・」
フィールは呆れを隠せない。
「それだけ悪者にしたいんでしょう」
「悪者って・・・どうやってするつもりなんだか」
アイシャがため息混じりに言う。
「何でもいいさ。行くぞ」
『了解』
パイロン側からはラズリ、レオ、フィール、アイシャ。公爵家からはセト、妊娠中のネフティスが参加した。
「トートを出せ」
いきなり切り出す。
「トートは現在、後継者になるためのプログラムを行っているため無理です」
「後継者?人形の間違いだろう」
「まさか!大事な“息子”をそんなふうに扱う訳ないでしょう」
しかしその目には何の感情も無かった。
「今で手紙一つ寄越さなかったくせにトートがパイロンに入った瞬間に後継者扱い、しかも皇帝の娘と結婚させるつもりだとか」
貴族達の間でドヨメキが走る。皇帝の子供と結婚する。それは一族の地位や繁栄が確固たるものとなったも同然、その座を狙わない者はいない。
「結婚させようとしているのは息子の幸せのためです。皇族と結婚できて不幸な人間はいませんから」
仮面越しにパイロンの顔が歪む。しかしその怒りはセトだけに向けられたものではない。
セトの発言に多くに者が納得していることには腹がたった。今にでもこの場にいる全員を殺してそうな勢いだ。しかし、そうはしない。感情に任せた暴力ほど愚かなことかを知っているから。
「先ほどの質問がまだです。何故トートに手紙を寄越さなかったんですか?」
「それが負担になりたくてなかったからですよ。手紙を送ることで余計なプレッシャーを与えたくなかった。私なりの優しさですよ」
よくもそんなことが抜け抜けと
「それにこれは当たり前のことです」
「何?」
「貴族の結婚は全てが家のためです。誰一人自らの意思で結婚は出来ないんですよ。それが当たり前です。何も知らない者達が口を出さないで下さい」
公爵は冷淡な目でことらを睨めつける。
貴族達はそれを聞き、納得と言わんばかりに頷く。彼らには罪悪感などこれぽっちもない。そもそもそんなものを持っているのかどうかすら危うい。
「家がそんなに大事か?」
フィールの質問に目つきを変える公爵。
「当たり前でしょう。家門は先祖が弛まぬ汗と涙と血の結晶。こんな贅沢な暮らしができているのも全部、先祖のおかげだ。それにこれは子孫のためでもあるんです。思ったことはありませんか?一度でいいから金に困らない生活をして見たいと。だが人生は一度きり。後なんてないんです。だから私達の所に生まれてきた子達だけはせめて不自由なく暮らさせてあげたい。そう思うのは罪でしょうか?」
「(こいつ)」
それが常識であるかの様に一息で言う。公爵の発言にフィールは拳を握り何とか怒りを抑えつけることしか出来ない。
これが当たり前、貴族の世間の。
ラズリは仮面越しに皇帝を見る。皇帝の顔には何の表情もなかった。ただそこで座視をしていた。まるでタイミングを見計らう様に、そこにある光景を見ていただけだった。
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