最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

91話 過去の真実(1)

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 まずは、あれを一度手放したことについてだ。心は手放させる為には一度、芽吹かせる必要があるんだ。心とは産まれた時から持っており、命あるものと共に過ごすことでそれは芽吹いてしまう。言ったろう?自然の摂理だって。
 だから、あれを育ってるに必要な2人だったのもあるが、あれの親というのもある。親と子は言葉でも数学でも言い表わすことの出来ない何にかで繋がっているんだそうだ。だから、それを利用し無意識に芽吹かせ、心とはこれ程苦しいものだと思わせて、拒絶させる。だがたかが一回、意味はない。だから2回目だ。

 爆破で研究所が吹き飛んだ時、嬉しさの余り叫びそうになった。ああ、あのソロモンは影武者さ。別の研究もしていたっと言ったろう。そっちに力を入れていて中々いけなかったんだ。あそこの研究所はあれを造るための専用施設ですかなかった。
「誰だ?」
 あれは生きていた。
「殺して下さい」
 成功した。
「どう・・・」
「どうすれば殺してくれますか?」
「仲間ですか?彼らを殺せば殺してくれますか?」
 自暴自棄になっていたがそれでよかった。それだけ拒絶しているということだからね。
「殺し・・・」
「黙れ!」
 まずは綺麗事を言う必要があった。心が傷付いている程よく響く。
「そんなこと言うな。何があったかは分からない。だがここにいると言うことは想像し難い何かがあったことは分かる。それを理解することは出来ない。でも、こんな子をほっとける程、僕は冷酷にはなれない。どうすればいい、教えてくれ」
「殺した」

『サマエル、私の命令に忠実であれ、それ以外のことはするな、考えるな』

「なんの命令も出されていないのに殺した」
 
『私の命令に背くことを許さず』
『お前はその為に生まれてきた』
『それがお前の存在理由だ』

「命令に背いた。価値はない」
「ふむ、なら僕が君の主人になろう。自分自身が生きたいと思うその時まで、僕が生きる理由になろう」
 もう一度、心を芽吹かせるためには私に依存させる必要があった。

 薬が突然切れたから、高熱にうなされた。流石に壊れてしまうのではないかとヒヤヒヤしたよ。
「大丈夫だよ」
「辛いなら我慢しなくていい」
「今はゆっくりお眠り」
 ここで壊れては今までの全てが水の泡だ。

「・・・うう“」
「ラズリ?ラズリ!」
 あれはようやく意識を戻した。柄にもなく喜んでしまったよ。ようやくこれで次のステップに行けるってね。

「ラズリ回復してきてるね」
「そうだね・・・」
「どうしたの?」
「上からラズリにあの日何があったのか聞けだって」
「そんな!まだ・・・」
「分かってるよ。まだ早い。だが上の気持ちも分かる。長年追っていたんだ。それがこんな形ではいい終わりはないだろう」
「分かったわ」
 ホルスがレアのおでこにおでこを合わせる。
「(そう分かっている。無理強いをすればあれは私に依存しなくなる。だが甘やかし過ぎれば弱くなる)」
「大丈夫だよ」
「(邪魔だけはしないでくれ。邪魔をすれば面倒だがお前を殺さなければならない)」
 んん“、っと誰かの咳払いして2人は離れる。
「部屋でやってくれるか、ここ通路」
「す、すまない。パーチミ」
「(そう、パーチミお前も邪魔だけはしないでくれ)」

「ああ、ラズリかい?回復は順調だよ」
「違う。おとなしいか聞いてんだ。たく驚いたぜ、突入するはずだった建物が爆発して、そしたらお前が突然走り出して、戻ってきたかと思えば子供を抱っこしてきて『俺が保護する』なんて言うんだから。上も下も真ん中も大騒ぎだ!」
「ご、ごめん」
「しかも魔力遮断を付けないって駄々をこねるし。おい妻どうにかしろ」
「無理、子供より手が掛かるのがホルスだから」
「えっ・・・」
「よかったな息子2人はお前に似なくてな」
「そんな・・・」
「(当然だ。あんな無能どもが私似な訳ないだろう。似てるっと言ったらお前を殺すよ)」

 数日後、ラズリはほぼほぼ回復した。そんなある日、いつもの様にホルスとレアが来る。そしてもう1人。
「彼はパーチミだ。僕の友人」
 心を確実に育てるには多くのものと触れる必要があったが、多すぎてはダメだった。適度が必要だ。
「ラズリ、そのどうかな?」
「心の方は大丈夫?」
 レアが慎重に話しかける。
「心とは何ですか?」
「心ってのは人が人である為に必要なものだよ」
「(だが、必要ない)」
「なら必要ありませんね」
「(それでいい。思い通りに造れた、なんて私は優秀だな)」
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