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第一章 原作前
第3話 修行を始めよう
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「お水をお持ちいたしました」
ナイスタイミングだメイドさん! 気まずくなり始めたところだったから助かっ――このタイミングだと聞かれた?
いやでも別にメイドさんに聞かれてもかまわない。のか?
なにか複雑そうな顔をしているが、よどみ無い動きで、新しく持ってきたポットとカップをテーブルに――
ガチャ。
――『はぁ』とかため息を吐きながら乱雑に音を大きく立てて下ろす……。
結構乱暴だな。
適当に水を二つのカップ注ぐと元あったポットを持ってさっさと部屋を出ていった。
……気まずい。が、なにか怪しいからとりあえず鑑定のスキルがあったよな。それで確認だけでも……鑑定。
鑑定結果は――
遅効性毒物入り水差し
遅効性毒物入りカップ
遅効性毒物入り水
――おい。毒耐性があるから一万歩くらい譲って俺用のはまあいい。いや、駄目だけど!
「きょっ、今日はもうおいとまいたしますわ! ド、ドライ、ご、ごきげんよう!」
勢いよくベッド立ち上がったリズは、テーブルのカップを手に取り一気に飲んで――しまう前に止めた。
ギリギリ間に合った。カップを包み込むように、リズの手ごとつかんだかたちになっている。
「ごめんリズ。コレ、毒入りだ。なんでこんなことに……」
それも至近距離、もう一歩も近づけない距離だ。顔と顔も三十センチあるかなしだ。
「ドライ……そんな急に手を握られ、せまられますと、その、わたくし、とても嬉しいのですが、できれば先に言ってもらえれば、口づけももちろんやぶさかで……え? 毒入り?」
吸い込まれそうな潤んだ瞳に俺が映り込んでいたのに、今度は恐怖で涙が溢れ、俺がさらにハッキリと映り出された。
「うん。だから飲まないで」
「ふえっ。わたくし……わたくしはここにいてもやっぱり……やっと寄り添ってくれる人がいる居場所を見つけたと思ってましたのにぃ!」
ぶわっと湧き水のように溢れ頬を濡らした涙は顎を伝い、精一杯おめかししたであろうドレスにシミを広げていく。
下唇を噛み嗚咽を我慢してる。こんな時男ならどうすれば――そうだ!
「リズ! 君のことは俺が絶対守る! 絶対だ! たとえ全世界が敵にまわろうとも死なせやしない!」
これは原作の主人公が、学園入学後すぐに言うセリフ。
リズが家族に暗殺されそうになったところを偶然通りかかり助けるシーンのだ。
「だから泣かないで。いつもの可愛い笑顔を見せて欲しいな」
このシーンのあと、原作主人公との距離が急激に縮まるんだ。
「どぉりゃい……どぉりゃぁーい!」
どぉりゃい? ……ドライか! って抱きついてきましたよ!
憶えている。あのシーンの続きは――
そっと抱き返し、優しく背中をさすってあげるんだ。映画のシーンだからじゃない。本心でそうしてやりたくなったから。
そこで気がついたんだけど、思ったよりドレスはボロボロのようだ。
ピンクブロンドに隠れていたけど……つぎはぎを隠すように施されてる飾りのレース……か。
これ、たぶんリズのお母さんが直してるってことだよな。お母さんとは良好なんだ。……まわりが全部悪意を持っていないのが救いだけど……。
そうだ、ストーリーの中では本妻と義理の兄や姉にもいじめられていた設定だった。
……まあ、暗殺なんてことも起こるんだから、服なんて中々買ってもらうこともできないだろうし。
こんなの知っちゃってるから放っておくこともしたくないし、するつもりもない。
俺の胸ですすり泣くリズ。主人公のセリフをなぞって絶対守ると言ったのは、すでに本心と言っても良い。
俺、チョロいな。でも嫌じゃない。もしかしたら元のドライもそうだったのだろう。
なら、どうすれば……リズを守れ、るか。
原作通りなら……なにか……って! そうだよ聖騎士! そうだリズは聖騎士になるんだよな!
腕の中のリズ。カタカタと震え、十歳のドライに抱き着き、今にも消え入りそうな女の子。
でも、そんな姿からは想像もできないけど王女を護る聖騎士で近衛に抜擢されるんだった。
ストーリーが始まってすぐに病状の悪化した母親を治そうとしていて聖魔法のスキルに覚醒する。
薬も効きづらくなり、教会の回復魔法でもお手上げと言われた母親を治しちゃうんだよな。
そのことと、王女と同い年。まあ、俺とも同い年になるんだが、王女のお願いに王が許可を出すことになる。
聖魔法か。それをなんとか早く覚醒してもらい、騎士になれるほどの剣術も身に付けてもらえば良いじゃないか?
ちょうど良い。俺も五年で死亡フラグを跳ね返せるように強くならないと駄目なんだ。
俺一人より、リズと二人で頑張ればどんな困難でもはね除けられる!
「リズ」
「どりゃい」
盛大に噛んで、抱き着く力が増してるけど、心は決まった。
「俺と一緒に強くなろう。誰にも負けないくらい強くなれば、こんなことがあっても怖くなくなる」
「ちゅよくなりゅ?」
「ああ」
ここでリズのステータスを覗くと十歳のこの時点でも確かに聖魔法の文字がある。
「リズには聖魔法のスキルがあるんだ。それを修行して行けばリズのお母さんだって助けられる」
俺の言葉におどろいたのか、スッと涙が止まり、嗚咽も引っ込んだ。
「聖……魔法? それでお母様を治せますの?」
「うん。俺が保証する。だから一緒に修行を始めよう」
目を見開いたリズ。止まっていた涙がまたまた溢れ出すが今度は悲しみの涙じゃなかった。
「やりますの! 修行! ドライと一緒に強くなりますわ! そしてお母様を!」
良かった。涙は止めどなく流れ続けているが、リズのその目は決意に燃え、顔は笑顔が溢れていた。
さあ修行を始めようか。
ナイスタイミングだメイドさん! 気まずくなり始めたところだったから助かっ――このタイミングだと聞かれた?
いやでも別にメイドさんに聞かれてもかまわない。のか?
なにか複雑そうな顔をしているが、よどみ無い動きで、新しく持ってきたポットとカップをテーブルに――
ガチャ。
――『はぁ』とかため息を吐きながら乱雑に音を大きく立てて下ろす……。
結構乱暴だな。
適当に水を二つのカップ注ぐと元あったポットを持ってさっさと部屋を出ていった。
……気まずい。が、なにか怪しいからとりあえず鑑定のスキルがあったよな。それで確認だけでも……鑑定。
鑑定結果は――
遅効性毒物入り水差し
遅効性毒物入りカップ
遅効性毒物入り水
――おい。毒耐性があるから一万歩くらい譲って俺用のはまあいい。いや、駄目だけど!
「きょっ、今日はもうおいとまいたしますわ! ド、ドライ、ご、ごきげんよう!」
勢いよくベッド立ち上がったリズは、テーブルのカップを手に取り一気に飲んで――しまう前に止めた。
ギリギリ間に合った。カップを包み込むように、リズの手ごとつかんだかたちになっている。
「ごめんリズ。コレ、毒入りだ。なんでこんなことに……」
それも至近距離、もう一歩も近づけない距離だ。顔と顔も三十センチあるかなしだ。
「ドライ……そんな急に手を握られ、せまられますと、その、わたくし、とても嬉しいのですが、できれば先に言ってもらえれば、口づけももちろんやぶさかで……え? 毒入り?」
吸い込まれそうな潤んだ瞳に俺が映り込んでいたのに、今度は恐怖で涙が溢れ、俺がさらにハッキリと映り出された。
「うん。だから飲まないで」
「ふえっ。わたくし……わたくしはここにいてもやっぱり……やっと寄り添ってくれる人がいる居場所を見つけたと思ってましたのにぃ!」
ぶわっと湧き水のように溢れ頬を濡らした涙は顎を伝い、精一杯おめかししたであろうドレスにシミを広げていく。
下唇を噛み嗚咽を我慢してる。こんな時男ならどうすれば――そうだ!
「リズ! 君のことは俺が絶対守る! 絶対だ! たとえ全世界が敵にまわろうとも死なせやしない!」
これは原作の主人公が、学園入学後すぐに言うセリフ。
リズが家族に暗殺されそうになったところを偶然通りかかり助けるシーンのだ。
「だから泣かないで。いつもの可愛い笑顔を見せて欲しいな」
このシーンのあと、原作主人公との距離が急激に縮まるんだ。
「どぉりゃい……どぉりゃぁーい!」
どぉりゃい? ……ドライか! って抱きついてきましたよ!
憶えている。あのシーンの続きは――
そっと抱き返し、優しく背中をさすってあげるんだ。映画のシーンだからじゃない。本心でそうしてやりたくなったから。
そこで気がついたんだけど、思ったよりドレスはボロボロのようだ。
ピンクブロンドに隠れていたけど……つぎはぎを隠すように施されてる飾りのレース……か。
これ、たぶんリズのお母さんが直してるってことだよな。お母さんとは良好なんだ。……まわりが全部悪意を持っていないのが救いだけど……。
そうだ、ストーリーの中では本妻と義理の兄や姉にもいじめられていた設定だった。
……まあ、暗殺なんてことも起こるんだから、服なんて中々買ってもらうこともできないだろうし。
こんなの知っちゃってるから放っておくこともしたくないし、するつもりもない。
俺の胸ですすり泣くリズ。主人公のセリフをなぞって絶対守ると言ったのは、すでに本心と言っても良い。
俺、チョロいな。でも嫌じゃない。もしかしたら元のドライもそうだったのだろう。
なら、どうすれば……リズを守れ、るか。
原作通りなら……なにか……って! そうだよ聖騎士! そうだリズは聖騎士になるんだよな!
腕の中のリズ。カタカタと震え、十歳のドライに抱き着き、今にも消え入りそうな女の子。
でも、そんな姿からは想像もできないけど王女を護る聖騎士で近衛に抜擢されるんだった。
ストーリーが始まってすぐに病状の悪化した母親を治そうとしていて聖魔法のスキルに覚醒する。
薬も効きづらくなり、教会の回復魔法でもお手上げと言われた母親を治しちゃうんだよな。
そのことと、王女と同い年。まあ、俺とも同い年になるんだが、王女のお願いに王が許可を出すことになる。
聖魔法か。それをなんとか早く覚醒してもらい、騎士になれるほどの剣術も身に付けてもらえば良いじゃないか?
ちょうど良い。俺も五年で死亡フラグを跳ね返せるように強くならないと駄目なんだ。
俺一人より、リズと二人で頑張ればどんな困難でもはね除けられる!
「リズ」
「どりゃい」
盛大に噛んで、抱き着く力が増してるけど、心は決まった。
「俺と一緒に強くなろう。誰にも負けないくらい強くなれば、こんなことがあっても怖くなくなる」
「ちゅよくなりゅ?」
「ああ」
ここでリズのステータスを覗くと十歳のこの時点でも確かに聖魔法の文字がある。
「リズには聖魔法のスキルがあるんだ。それを修行して行けばリズのお母さんだって助けられる」
俺の言葉におどろいたのか、スッと涙が止まり、嗚咽も引っ込んだ。
「聖……魔法? それでお母様を治せますの?」
「うん。俺が保証する。だから一緒に修行を始めよう」
目を見開いたリズ。止まっていた涙がまたまた溢れ出すが今度は悲しみの涙じゃなかった。
「やりますの! 修行! ドライと一緒に強くなりますわ! そしてお母様を!」
良かった。涙は止めどなく流れ続けているが、リズのその目は決意に燃え、顔は笑顔が溢れていた。
さあ修行を始めようか。
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