【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

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第一章 原作前

第52話 テンプレが……

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「ギャハハハ! コイツ、スライムなんか従魔にしてっぞ!」

 あ……テンプレだ。冒険者ギルドあるあるだ……。

 お酒が入ってそうな木のカップを片手に、赤い顔をしたヒゲのおじさんが背後に立っていた。

 けど……そこまで笑うことはないんじゃないかな。

 頭の上でぷるぷる揺れるイス。

『あー、ユートも同じように冒険者ギルドで絡まれてたの思い出したわ』

『そ、そうなんだ。やっぱりあるあるなんだね』

『おしゃけくしゃいれすわ』

 リズは鼻をつまんで顔をしかめてる。念話なのに鼻づまりみたいになってるのはなんでだろう。

 俺は三人を背中に隠すように前へ出ておじさんの正面に立つ。

 ファラはやれやれって顔で隣で成りゆきを見守っている。カイラさんはもちろんファラをいつでもかばえるように身構えているけどね。

「スライムを従魔にするのは駄目な――」

 テンプレに乗るように言い返そうとしたとき、この騒ぎに入ってくるものがいた。

「シュナイダー何また絡んでるんですか、飲みすぎですよ。ご、ごめんね君たち、すぐに連れてくからね。ほら、酔っぱらってるんですから、あっちに戻りましょうね」

 知り合いだろうか、それを止めようとするおじさんが加わって受け付けカウンター前がさらにに騒がしくなった。

「俺様は酔ってねえ! ガキどもがスライムを従魔にしてっから笑ってるだけだろうが!」

「それはそうですが、私も始めての従魔はスライムでしたからおかしなことではないんです。ほら、戻りましょうね」

「おい、引っ張るんじゃない! さ、酒がこぼれるじゃないか! こら――」

 遠ざかっていく声。だけど食事処の方は笑い声が増えてきた。

『またシュナイダーが騒いでるぞ』
『だから万年Dランクなんだよ』
『酒さえ飲まなけりゃCランクには上がれてたかもしれないのにな』

 ってはやし立てる声も聞こえてきた。あれ? テンプレだとここから言い返して決闘になったりするんだけど……終わり?

 ズルズルと引きずられ離れていくシュナイダーって人と引きずるおじさんを、ポカンと見送ってしまった。

「申し訳ありません。あの方は飲むといつもああなので」

 振り替えると苦笑いの受け付けをしてくれているお姉さん。

「ああ見えて飲んでないときはまともなので、できれば気にしないで上げてくださいね。っと従魔登録を進めますね」

「は、はぁ」

 何か不完全燃焼のままイスの登録も済み。あ、はじめはリズの胸に入ってるからリズの従魔として登録しようとしたら――

『イス様を従魔にするのはドライですわ! 決まってますの!』

 ――と、俺のギルドカードに登録された。

 その後、ファラとカイラさんをパーティー『超越者』に加えて冒険者ギルドを後にした。

 出ていこうとする俺たちに冒険者たちが――

『がんばれよー』
『コイツのことは気にすんなー』
『スライムはいいぞー』
『ダンジョンかー、気をつけてなー』

 と、なんだかほのぼのと送り出されてしまった。

「荒くれ者の集まりと思っていたけど、クリークの冒険者はそうではなさそうね」

 うん。俺もそう思った。

「ファラ様。たまたまだと思います。グリフィンで登録したときを思い出してください」

「あー、護衛付きだったけど絡まれたわね。っと、ドライ、この後は隣町に向かうのよね?」

「うん。隣町がちょうどアザゼル派とラファエル派があるからちょうどいいしね」

「なら城に戻って飛龍に乗りましょう。凄いわよ、隣の町なんてあっという間だから」

「うん。めちゃくちゃ楽しみだったんだ」

「わたくしも凄く楽しみです」

「では参りましょう。先ほど隣町には飛龍で乗り付けると先触れを出してもらっています」

 おお、そうだよな、いくら乗り物として知られてるとはいえ、いきなり飛龍が飛んできたら……うん。絶対パニックになると思う。

 冒険者ギルドを出て、門に向かうと城に到着だ。結局まだ見てないんだよな飛龍。

 俺が住んでる使用人用屋敷の城を挟んで反対側にある兵士たちの訓練場に向かう。

 さあ早速飛龍とご対面させてもらいましょう。

「ドライもリズも、そんなに期待していたの? あちらの小さい訓練場にいるからすぐ見せてあげるわ」

 ファラの言う通り鼻息がふんすと鳴るくらい楽しみにしている。この壁の向こうに飛龍がいるのか。

 と、期待が最高潮になり、テンションが上がりまくってる俺とリズは飛龍に驚かされることになった。

 そう、まだ中に入ってないのに飛龍がこちらに気がついたのか、五メートルは余裕である塀の上から顔を覗かせたからだ。

「うおっ! デカっ!」

「きゃっ! み、見られてますわ!」

「うふふ。これがお父様の飛龍、スエキチよ。どう、強そうでしょ?」

「お、おう、めちゃくちゃ強そうだ、けどスエキチ?」

 日本の、それも昔使われてたような名前だ。

 そういえばこの作者は大の日本ファンで、日本人っぽい容姿のキャラは多かったかも。

 ……でも、名前はなかったけど……ここでスエキチか。

「ええ。スエキチよ。お父様がどうしてもと付けたの。そして国に残ってもらってる私の飛龍は名前をもじってファフニールなのよ」

 俺もファフニールの方が格好いいと思う。で、この興味深そうに見下ろしてきてる王様の飛龍はスエキチか……まあ名付けのセンスは人それぞれだし……気にしないでおこう。


 というか、名前を呼ばれたからか、首をかしげるスエキチ。怖そうな顔をしているけど、目がうるうるしていて……可愛いかも。

「ス、スエキチ様とおっしゃるのね。私はイルミンスール伯爵家のエリザベス・フォン・イルミンスールと申します。リズとお呼びくださいませ」

 俺の腕をぎゅっと抱きしめながらちゃんと挨拶をするリズ。そうだな、飛龍って言っても初対面だし、自己紹介はしておくか。

 飛龍だし、イスみたいに喋るかもしれないしな。

「俺はドライだ。えっと、よろしくなスエキチ」

「ふふ。さあ中に行きましょう、もう準備はできてるはずだから」

 通用口の扉を開け、訓練場に入ると飛龍の全体像が見えた。本当に見上げるような大きさだ。

 それも座っていた。五メートルはある壁の上から覗けるのに猫がカマボコみたいに座ってる姿勢をしているんだぞ?

 あ、でも王様や複数の人を乗せて飛ぶんだからこのくらいのデカさは欲しいのかもしれない。

 よく見ると、飛龍の背中に鞍が取り付けられてある……え? 鞍? むき出しで乗るの!?
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