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第一章
第52話 王都に行く事になった
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「待たせたな、あっ、クソ爺に買ってきた酒を渡すの忘れてたぜ、もう一回行ってくる」
部屋に入ったんだが、いつの間に用意したのか、ワインに仕込む前の葡萄ジュースを三人で飲んでいたから思い出した。
そういや完全に忘れてたぜ。
クロセルに買ってきた酒樽を出してもらい礼拝所に戻る。
「――なのですか? それは本人に聞いてもらわないと、私ではお答えできません」
ん? 誰か来てるようだな。
両手でやっとひとまわりする大きさの酒樽を抱え、前が見にくいが長年暮らした教会だ、目を閉じたままでも歩き回れる自信がある。
礼拝所に出ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「それもそうだな、っと、ちょうど来たようだ」
「なんだ? ギルマスが来てんのか、そういやなんか呼んでたよな」
「ケント! なんだその口の聞き方は! この方は――」
「あっ、今は公爵様なんか? そりゃまずいな、不敬罪とかは勘弁して欲しいぞ、よいしょっと」
ドンととりあえず机の上に酒樽を乗せて二人を見た。
公爵なのに護衛も付けずに、冒険者の格好でクソ爺の隣にいるギルマス……。
冒険者の格好なら良いんじゃねえのか?
「いや、今はギルマスだな、あのな、クルト殿に相談していたんだが、私が王都に向かっているのは知っているだろ?」
入口近くにいるからとりあえずそっちに近付いておく。
「ああ、リチウムの野郎を連れて行くんだったよな」
ギルマスはうんうんと頷き手に持っていた紙を俺に差し出してきた。
とりあえず受け取って、なんか書いてあるし、読んでみると、王都まで護衛も兼ねての同行と、王城への登城依頼だった。
「なんだよこれ、王都に行くんは良いけどよ、お城に俺が行くんか?」
「ああ、本当は、後から呼んで来てもらうつもりだったが、夜営地での襲撃も見事退けただろ?」
(さてはボアステーキを献上しろって事なの! ケント! あげても良いけど私の分は残しておいてよね!)
ああ、美味かったもんな、分かった、なんとか残せるようにするぞ、俺もまた食べたいしな。
「デカいボアを王様に食べさせたいんか? ありゃ美味かったしな、それならちっとは分けても良いぞ」
「くくくっ、あれは美味そうだったしな。だが暗殺ギルドの方だ」
ギルマスは笑いながら俺の言葉を否定した。
(なによ、心配したじゃない。あっ、もしかしたら褒美もらえるんじゃない? それなら王様が飲むようなお酒が良いんだけど)
こらこら、それでも良いけどよ、ってかそれってお前だけだろ嬉しいの。
アンラは俺の背中側の上着を摘まんでクイクイと引っ張ってくる。
(あっ、でも眠らせたのって……)
「そっちか、んじゃプリムもだよな?」
そうなんだよな、あれは俺がボア、暗殺者達はアンラが眠らせたから、実はプリムじゃねえんだよなぁ。
(そだよね~)
「ああそうだな、見事な眠り使いだ、是非頼みたい」
正直に言うわけにもいかねえし、プリムに一度聞いてみないとな。
「分かったがよ、報酬が書かれてねえぞ、それに俺は行っても良いけどよ、プリムはこの村に残るそうだぞ」
「ああ、護衛は日に一人銀貨五枚、登城は一人金貨一枚だ」
「なんだと! 護衛はまあ、そんなもんか? ちと高い気がするけどよ、お城に行くだけで金貨なんかよ」
ギルマスは左手を広げ、五を表して右手は人差し指を立て、ニヤリと笑いかけてくる。
それを聞いたクソ爺は『マジかよ』と呟いたまま、口が半開きで間抜けな顔を晒してやがる。
ってか俺も口が開いてたぜ……。
「だから大人しく請けてくれると助かる」
「分かった、ちょっと待っててくんねえか、プリムに聞いてくっからよ」
俺は急ぎ部屋に戻り、プリムに事情を話たんだが、アシアとエリスもあわせてデカい声で驚いた。
たぶん声は礼拝所にいる二人にも聞こえただろうな。
だが、よく考えたら護衛はともかく王様に会うのは断れねえ。
そう思い付いたら、相談も何もする必要ないじゃないか。
「あのさケント、私とエリスも王都に行っちゃ駄目かな? 将来やるって言ってた冒険の予行演習で」
アシアが木箱に座ったまま俺を見上げてそう言ってきた。
「アシア、それ良いな、おっしギルマスに相談すっか、流石にアシアとエリスは王様には会えねえと思うがよ、王都へ行った事ねえし旅行がてらで良いんじゃね」
「えとえと、ケントさん、その言い方だと私は王様と会うって事ですか、それって良いのかな?」
ぴょんと立ち上がってプリムはそう聞いてきたが――。
(プリム、私の代わりにもらっておいてよ)
アンラの提案に俺はプリムを見ながら頷いてやる。
「わ、分かりました」
話はまとまった、俺は三人を連れて礼拝所に戻ってギルマスに話す。
ギルマスはすぐに『構わないぞ』と言ってくれたが、クソ爺が――。
「良い考えだと思うが、アシアとエリスのご両親に了解をもらいなさい、勝手に連れていくなどできないだろう」
それを聞いて二人は急ぎ家に相談しに行く事になり、帰っていった。
ギルマスも、アシアん家で泊まるそうだし、後でどうなったか知らせてほしいそうだ。
なんだかんだでバタバタしたが、二人も王都に行けるようになり、明日の朝一番に村を出発することになるようだ。
慌ただしいが俺達は、帰ってきたところなのに出発の準備に取りかかった。
部屋に入ったんだが、いつの間に用意したのか、ワインに仕込む前の葡萄ジュースを三人で飲んでいたから思い出した。
そういや完全に忘れてたぜ。
クロセルに買ってきた酒樽を出してもらい礼拝所に戻る。
「――なのですか? それは本人に聞いてもらわないと、私ではお答えできません」
ん? 誰か来てるようだな。
両手でやっとひとまわりする大きさの酒樽を抱え、前が見にくいが長年暮らした教会だ、目を閉じたままでも歩き回れる自信がある。
礼拝所に出ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「それもそうだな、っと、ちょうど来たようだ」
「なんだ? ギルマスが来てんのか、そういやなんか呼んでたよな」
「ケント! なんだその口の聞き方は! この方は――」
「あっ、今は公爵様なんか? そりゃまずいな、不敬罪とかは勘弁して欲しいぞ、よいしょっと」
ドンととりあえず机の上に酒樽を乗せて二人を見た。
公爵なのに護衛も付けずに、冒険者の格好でクソ爺の隣にいるギルマス……。
冒険者の格好なら良いんじゃねえのか?
「いや、今はギルマスだな、あのな、クルト殿に相談していたんだが、私が王都に向かっているのは知っているだろ?」
入口近くにいるからとりあえずそっちに近付いておく。
「ああ、リチウムの野郎を連れて行くんだったよな」
ギルマスはうんうんと頷き手に持っていた紙を俺に差し出してきた。
とりあえず受け取って、なんか書いてあるし、読んでみると、王都まで護衛も兼ねての同行と、王城への登城依頼だった。
「なんだよこれ、王都に行くんは良いけどよ、お城に俺が行くんか?」
「ああ、本当は、後から呼んで来てもらうつもりだったが、夜営地での襲撃も見事退けただろ?」
(さてはボアステーキを献上しろって事なの! ケント! あげても良いけど私の分は残しておいてよね!)
ああ、美味かったもんな、分かった、なんとか残せるようにするぞ、俺もまた食べたいしな。
「デカいボアを王様に食べさせたいんか? ありゃ美味かったしな、それならちっとは分けても良いぞ」
「くくくっ、あれは美味そうだったしな。だが暗殺ギルドの方だ」
ギルマスは笑いながら俺の言葉を否定した。
(なによ、心配したじゃない。あっ、もしかしたら褒美もらえるんじゃない? それなら王様が飲むようなお酒が良いんだけど)
こらこら、それでも良いけどよ、ってかそれってお前だけだろ嬉しいの。
アンラは俺の背中側の上着を摘まんでクイクイと引っ張ってくる。
(あっ、でも眠らせたのって……)
「そっちか、んじゃプリムもだよな?」
そうなんだよな、あれは俺がボア、暗殺者達はアンラが眠らせたから、実はプリムじゃねえんだよなぁ。
(そだよね~)
「ああそうだな、見事な眠り使いだ、是非頼みたい」
正直に言うわけにもいかねえし、プリムに一度聞いてみないとな。
「分かったがよ、報酬が書かれてねえぞ、それに俺は行っても良いけどよ、プリムはこの村に残るそうだぞ」
「ああ、護衛は日に一人銀貨五枚、登城は一人金貨一枚だ」
「なんだと! 護衛はまあ、そんなもんか? ちと高い気がするけどよ、お城に行くだけで金貨なんかよ」
ギルマスは左手を広げ、五を表して右手は人差し指を立て、ニヤリと笑いかけてくる。
それを聞いたクソ爺は『マジかよ』と呟いたまま、口が半開きで間抜けな顔を晒してやがる。
ってか俺も口が開いてたぜ……。
「だから大人しく請けてくれると助かる」
「分かった、ちょっと待っててくんねえか、プリムに聞いてくっからよ」
俺は急ぎ部屋に戻り、プリムに事情を話たんだが、アシアとエリスもあわせてデカい声で驚いた。
たぶん声は礼拝所にいる二人にも聞こえただろうな。
だが、よく考えたら護衛はともかく王様に会うのは断れねえ。
そう思い付いたら、相談も何もする必要ないじゃないか。
「あのさケント、私とエリスも王都に行っちゃ駄目かな? 将来やるって言ってた冒険の予行演習で」
アシアが木箱に座ったまま俺を見上げてそう言ってきた。
「アシア、それ良いな、おっしギルマスに相談すっか、流石にアシアとエリスは王様には会えねえと思うがよ、王都へ行った事ねえし旅行がてらで良いんじゃね」
「えとえと、ケントさん、その言い方だと私は王様と会うって事ですか、それって良いのかな?」
ぴょんと立ち上がってプリムはそう聞いてきたが――。
(プリム、私の代わりにもらっておいてよ)
アンラの提案に俺はプリムを見ながら頷いてやる。
「わ、分かりました」
話はまとまった、俺は三人を連れて礼拝所に戻ってギルマスに話す。
ギルマスはすぐに『構わないぞ』と言ってくれたが、クソ爺が――。
「良い考えだと思うが、アシアとエリスのご両親に了解をもらいなさい、勝手に連れていくなどできないだろう」
それを聞いて二人は急ぎ家に相談しに行く事になり、帰っていった。
ギルマスも、アシアん家で泊まるそうだし、後でどうなったか知らせてほしいそうだ。
なんだかんだでバタバタしたが、二人も王都に行けるようになり、明日の朝一番に村を出発することになるようだ。
慌ただしいが俺達は、帰ってきたところなのに出発の準備に取りかかった。
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