117 / 149
第一章
第117話 崩れ落ちる
しおりを挟む
隊長さん達が夜営地を出ていってから数時間経ち、森の中を進んできた者達の先頭が森との境目まで来て止まった。
来るまで時間があったから擬装で街道側に馬車を出し、焚き火をいくつかとカカシを沢山作り、アンラがいっぱい持ってた鎧を着せて、人がいるように見せかけておいた。
アンラは姿を消して、今は森の中を魔道具持ってる奴らから気付かれないように回収しに行っている。
クローセも手伝ってくれているしな。
奴らの最後尾に回り込んで、異変を感じて逃げ出さないように見張っていて、今はいつも通りの大きさだが、いざという時は大きくなって追いたててくれるように頼んでおいた。
『ケーンートー。結構魔道具持ってるよー、それにー、話を聞いてるけどー、みんなが森の際に集まって来るまではー、出ていかないみたいー』
了解だが……念話だからそんな叫ぶように言わなくても届くんじゃねえのか?
ま、まあバラバラと出てこられたら面倒だなと思ってたから助かるな。
それから十数分、先頭からだいぶ遅れてはいたがようやく森の中の奴らは森の際に集まったようで動いていた気配が止まった。
ただ待つのもなんだしと晩御飯を食べた後、ソラーレに掃除してもらった鍋で湯を沸かし、茶をいれておく。
奴らが止まって数分後に、アンラがひょこひょこと森から出てきたんだが、出たところで止まって一本の木を指差している。
『ケントー、この木に一人登ってるから眠りを試さないー? 木の上だしー落ちて気絶したと思うだろうしさー』
なるほどなと思った俺は、アンラの指差す木の上の部分だけを包むように眠りを唱えた。
唱えた後、一呼吸置いてガサガサ、ドサッと木から人が地面に落ちた。
すげえな……眠りもだが、突然上から落ちても声も出さねえなんてな。
俺なら絶対声出してるぜ。
『おお! ケントやったね♪ 声は出してないけど無茶苦茶慌ててるよ~。魔道具も回収できたし戻るね~』
落ちたのを見てからアンラがこっちに戻ってきて、うちの馬車の裏に回った後、姿を現せて焚き火の世話をしている俺のところにニコニコしながらやってきた。
「眠り成功おめでとうケント。見たところ、そこそこ強そうな人はいたけど、あまり気にするほどでもないかな」
腕を組んでどの程度の戦力か教えてくれる。
「ありがとうな。まあ、眠らせてしまえば強くてもどうとでもなるしな。っと動き出したぞ」
「んじゃ私はケントの眠りに重ねがけしておくね」
「頼んだ」
アンラが馬車の裏から現れた時に動き出した奴ら、森の際から一斉にガサガサと下草をかき分けながら、一気に大人数が走り出してきた。
座ってた俺は立ち上がり、アンラを守るように前に立ち、広範囲を意識して迫る奴らに今度は手を向けて、手のひらを力一杯広げて眠りを唱える。
唱えた後、眠って崩れ落ちる奴を気にせず腕の方向を変え、また広範囲を意識しながら二発目を放つ。
森から俺達の焚き火にまでは三十メートルほどしかない距離だったが、次々に数度唱えた後、半数近く倒れたのを見て、足元に転がる仲間を避けるため、走る早さが鈍る襲撃者達。
そのままの速さで来られたら、ちとヤバかったが間に合いそうだ。
「クソッ! どうなってやがる! だが奴を! 奴だけは殺してしまわねえと! 残った者で一番デカい馬車を襲え! 後のは放っておいてもかまわ――」
ん? 奴を殺す? 助けに来たんじゃねえのか?
最後までは言わせなかったが、手前にいた俺達を避けた残りの十数人は街道側に置かれた馬車に向かう。
それと、まだ森の中に残っていた十人をクローセが『フシャー!』と大きくなった姿で威嚇し追い出してきた。
「なぁぁぁ! なんでこんなところにエンペラーキャットが! く、喰われる!」
「ヤバい! に、逃げろ!」
散り散りに逃げようとする奴らの行く手を目にも止まらない速さで回り込んで阻み、夜営地の真ん中に向けて追いたててくれた。
一旦ソイツらは放っておいて馬車に向かった奴らに眠りをかけ、倒れたのを見て残りの奴らにも唱えて今夜の襲撃を退けた。
「みんなお疲れさん。クローセありがとうな。アンラはもうちょいコイツらを縛るの手伝ってくれ」
「ほ~い。ケントの眠りだと数時間がやっとだけど連発もできていたし、完璧ね♪ よ~し簡単に終わったしお茶でも――痛っ!」
「どうした!」
クロセルに出してもらったロープで転がる奴らを縛ろうかとしゃがみこんだ時、俺の横にいたアンラが声を震わせた。
見るとアンラの首にほんのり光るナイフが刺さっていた。
頭が一瞬で真っ白になる。
ゆっくりと後ろに倒れていくアンラに立ち上がると同時に駆け寄り抱える。
そして白い首に刺さったナイフを掴んで引き抜いた。
「アンラ!」
ナイフを投げ捨て吹き出る血を止めるように手で押さえる。
「回復! アンラ! しっかりしろ!」
首と手の間から流れ出ていた血は勢いを止め、傷は塞がったはずだがアンラは返事をしない。
頭が回らない。
温かい血が手を伝う。
手首を越える赤い血。
ひじに到達して……。
地面に落ちた。
「……嘘……だろ……ア……ン……ラ」
何かが頭の中でガラガラと崩れ落ちる音を聞いた気がする。
来るまで時間があったから擬装で街道側に馬車を出し、焚き火をいくつかとカカシを沢山作り、アンラがいっぱい持ってた鎧を着せて、人がいるように見せかけておいた。
アンラは姿を消して、今は森の中を魔道具持ってる奴らから気付かれないように回収しに行っている。
クローセも手伝ってくれているしな。
奴らの最後尾に回り込んで、異変を感じて逃げ出さないように見張っていて、今はいつも通りの大きさだが、いざという時は大きくなって追いたててくれるように頼んでおいた。
『ケーンートー。結構魔道具持ってるよー、それにー、話を聞いてるけどー、みんなが森の際に集まって来るまではー、出ていかないみたいー』
了解だが……念話だからそんな叫ぶように言わなくても届くんじゃねえのか?
ま、まあバラバラと出てこられたら面倒だなと思ってたから助かるな。
それから十数分、先頭からだいぶ遅れてはいたがようやく森の中の奴らは森の際に集まったようで動いていた気配が止まった。
ただ待つのもなんだしと晩御飯を食べた後、ソラーレに掃除してもらった鍋で湯を沸かし、茶をいれておく。
奴らが止まって数分後に、アンラがひょこひょこと森から出てきたんだが、出たところで止まって一本の木を指差している。
『ケントー、この木に一人登ってるから眠りを試さないー? 木の上だしー落ちて気絶したと思うだろうしさー』
なるほどなと思った俺は、アンラの指差す木の上の部分だけを包むように眠りを唱えた。
唱えた後、一呼吸置いてガサガサ、ドサッと木から人が地面に落ちた。
すげえな……眠りもだが、突然上から落ちても声も出さねえなんてな。
俺なら絶対声出してるぜ。
『おお! ケントやったね♪ 声は出してないけど無茶苦茶慌ててるよ~。魔道具も回収できたし戻るね~』
落ちたのを見てからアンラがこっちに戻ってきて、うちの馬車の裏に回った後、姿を現せて焚き火の世話をしている俺のところにニコニコしながらやってきた。
「眠り成功おめでとうケント。見たところ、そこそこ強そうな人はいたけど、あまり気にするほどでもないかな」
腕を組んでどの程度の戦力か教えてくれる。
「ありがとうな。まあ、眠らせてしまえば強くてもどうとでもなるしな。っと動き出したぞ」
「んじゃ私はケントの眠りに重ねがけしておくね」
「頼んだ」
アンラが馬車の裏から現れた時に動き出した奴ら、森の際から一斉にガサガサと下草をかき分けながら、一気に大人数が走り出してきた。
座ってた俺は立ち上がり、アンラを守るように前に立ち、広範囲を意識して迫る奴らに今度は手を向けて、手のひらを力一杯広げて眠りを唱える。
唱えた後、眠って崩れ落ちる奴を気にせず腕の方向を変え、また広範囲を意識しながら二発目を放つ。
森から俺達の焚き火にまでは三十メートルほどしかない距離だったが、次々に数度唱えた後、半数近く倒れたのを見て、足元に転がる仲間を避けるため、走る早さが鈍る襲撃者達。
そのままの速さで来られたら、ちとヤバかったが間に合いそうだ。
「クソッ! どうなってやがる! だが奴を! 奴だけは殺してしまわねえと! 残った者で一番デカい馬車を襲え! 後のは放っておいてもかまわ――」
ん? 奴を殺す? 助けに来たんじゃねえのか?
最後までは言わせなかったが、手前にいた俺達を避けた残りの十数人は街道側に置かれた馬車に向かう。
それと、まだ森の中に残っていた十人をクローセが『フシャー!』と大きくなった姿で威嚇し追い出してきた。
「なぁぁぁ! なんでこんなところにエンペラーキャットが! く、喰われる!」
「ヤバい! に、逃げろ!」
散り散りに逃げようとする奴らの行く手を目にも止まらない速さで回り込んで阻み、夜営地の真ん中に向けて追いたててくれた。
一旦ソイツらは放っておいて馬車に向かった奴らに眠りをかけ、倒れたのを見て残りの奴らにも唱えて今夜の襲撃を退けた。
「みんなお疲れさん。クローセありがとうな。アンラはもうちょいコイツらを縛るの手伝ってくれ」
「ほ~い。ケントの眠りだと数時間がやっとだけど連発もできていたし、完璧ね♪ よ~し簡単に終わったしお茶でも――痛っ!」
「どうした!」
クロセルに出してもらったロープで転がる奴らを縛ろうかとしゃがみこんだ時、俺の横にいたアンラが声を震わせた。
見るとアンラの首にほんのり光るナイフが刺さっていた。
頭が一瞬で真っ白になる。
ゆっくりと後ろに倒れていくアンラに立ち上がると同時に駆け寄り抱える。
そして白い首に刺さったナイフを掴んで引き抜いた。
「アンラ!」
ナイフを投げ捨て吹き出る血を止めるように手で押さえる。
「回復! アンラ! しっかりしろ!」
首と手の間から流れ出ていた血は勢いを止め、傷は塞がったはずだがアンラは返事をしない。
頭が回らない。
温かい血が手を伝う。
手首を越える赤い血。
ひじに到達して……。
地面に落ちた。
「……嘘……だろ……ア……ン……ラ」
何かが頭の中でガラガラと崩れ落ちる音を聞いた気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる