【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

文字の大きさ
39 / 241
第二章

第39話 大きなどんぐりの木の下で

しおりを挟む
「テラ止まんないよ! 広場に屋根が出来ちゃったよ!」

んん神眼~! 大丈夫よ! 後もう少しで成長が止まるわ!」

 テラの言う通り、急激に成長速度が遅くなって、たぶん十メートルほど伸びた所で成長が止まりました。

 見上げているのですが、枝葉が生い茂り、夜空の星も見えません。

 幹の太さは大人の人が三十人くらいで手を伸ばし繋いだくらいありまして、単純に計算すると······木の幹の周囲は五十メートル以上ありますね。

「テラ、今度こそは謝らないと駄目だろうね、あはは······」

「まさかここまで大きくなるなんて······謝るのは村長さんによね?」

 商人さん達と、ドワーフおじさんやアマラ、お兄さん達に続き、宿にいた人達が広場に出てきています。

 広場に面した家からも、家族連れで玄関から出て来て、さっきまで無かった大きなどんぐりの木を見上げています。

「「えぇぇぇぇぇぇ~!えぇぇぇぇぇぇ~!」」

 その後僕は商人さんと一緒に村長さんのお家に行き、テラと一緒にそれはもう物凄く謝りました。

 何がどうしてそうなったかは、テラが説明して、それを僕がフォローする。

 何とか納得してくれた村長さんは、明日の朝どんな様子か見てから決めるとの事で、夜も遅くなりましたが宿に戻りました。

 宿に入るとみんなが僕達の帰りを待っていてくれたようで、どうなったか、村長さんに説明した事をもう一度説明しました。

「くははは♪ ではテラの頭に団栗どんぐりを乗せていたのは魔力なんかの栄養をやっていたのか。飾りだと思っていたぞ」

 おじさんはお酒の入ったカップを傾けながら、そんな事を言います。

 それはそうだよね、普通はそう思うよね。

「私も。何で団栗なんだろうって思ってました、あはは」

 アマラもジュースの入ったカップを持ちながら呆れた顔を向けてきます。

「まあ、なんだ、どこの家も夜だから全部は見れていないが大丈夫そうだったぞ」

 パッと見は被害は無かったようですがたぶん昼間でも木陰こかげで夏場は涼しくなるんじゃないかなって思います。

「そうだな、一番下の枝までの高さもあるから洗濯した物が乾かないってことも無さそうだったからな」

 おっと、それは考えていませんでした。

「その様子なら、なに事もなく穏便に済まして貰えそうですね。皆さん、ライ君以外ですが荷物の受け渡しの為にお手伝いして貰えないでしょうか?」

 僕は村長さんを待っていないといけませんからね。

「ふむ、重いものがほとんどなので、アマラちゃんも厳しいですね、アマラちゃんはライ君のフォローを頼んでも良いですか?」

「はい♪ 力仕事は苦手と言うか、逆に邪魔しちゃうと思いますから、ライ君のお手伝いしておきます」

 おお、そうですね、僕に分からないことを教えて貰えそうですから嬉しいですね♪

「アマラよろしくね」

「はい。お役に立てるかどうか分からないですけど、あはは」

「では皆さん今日はお開きでしょうか? この時間からですとお酒がメインに······ライ君、また花を頭に刺していますが大丈夫ですか?」

 テラを見ると、テーブルのにある切り花をいつも通り頭に刺していました。

「ねえテラ、それは大丈夫だよね?」

 みんなの視線が集まるムルムルの上のテラはというと。

「も、もちろんよ! この子は普通の花よ、大きくはならないわよ! たぶん!」

「たぶんって、テラ、テントに行っておこうね。あはは······」

 僕はテラとムルムルを肩に乗せ宿を出ておく事にしました。

「商人さん、せっかく部屋を取って貰ったのにすいません、外の木の下でテントを張って寝ますね」

「あはは······そ、そうですね、その方が安心できますね、あはは」

 乾いた笑い声の商人さんと呆れた顔のみんな。

 僕は席を立っておやすみなさいと挨拶をしてから外へ。

 木の根元にテントを張ってもぐり込むと、疲れたのかすぐに寝てしまいました。

 翌朝、「でけえな」「そうなんだよ昨晩急に生えたんだ」「これって団栗の木?」「秋に団栗のクッキーを作れるわね」「まわりに芝を植えて公園にすれば?」等々などなど声が聞こえてきて目が覚めました。

「なんだか騒がしいわね? どうしたのかしら?」

「いやいや、テラ、君の団栗の木のせいだと思うよ。ふあぁぁ」

「そ、そうなの! 私捕まっちゃうの?」

「いや、捕まらないと思うよ。よし、着替えて外に出よう」

 おろおろしているテラ、僕は着替えを済ませ、ムルムルごとテラを肩に乗せテントを出ました。

 外は木と、テントを取り囲む様に村人達が集まり、見上げていました。

 僕がテントから出てきたのを見て、そこにいた村長さんが近付いて声をかけてくれそうです。

「村長さん、おはようございます」

「ライ君おはよう。ここで寝ていたのかい?」

「はい。またなにか起こった時に対処出来るように」

 まさかまた、頭に栄養を与えている物があったからとは言えません。

「ふむ。良い心掛けですよ。しかし立派な木だね。それに昼間の暑さをしのげる木陰も出来るようですし、被害もありませんので、罪にはなりませんね」

「はふぅぅ、良かったぁぁ」

 テラ、本当に良かったね♪

「それに、皆にも好評なようですので、この団栗の木は開拓村の象徴しょうちょうとして、このまま切り倒さずに辺りを整備していこうと考えますが、良いですか?」

「良いのですか! テラ! 捕まらなくても良いみたいだよ♪」

「やったぁぁ~! ちょ~っと心配してたけど、流石私! どんどん象徴にしてあげてね! この子の団栗は美容に良いわよ♪ それを売りに出来るくらい実るから、この村の特産品にしちゃいなよ♪」

 いやいや、なんで途中から偉そうになっちゃうの! くふふふ。でも良かったねテラ。

「ほお。それは良いですね。この村は鉱山があり、農地としても平坦な場所が多く、そして肥沃ひよくな土地でして、鉱山と作物の二つを目的として開拓しているのですすが、それに加え美容ですか、聞いたことがありますね······貴族の方々にも好評だとか······ふむふむ」

 村長さんはなにやら考え込んでしまいました。

 他のみんな、いえ、女性達は目をキラキラさせながら、「美容♪」「嘘っ、私も綺麗に♪」「農地にこの木を、株分け······」「野菜作るより私はそれを······」等々ざわざわしちゃってますね。

 男性の方々も、「売りが増えるんなら良いな」「俺どんぐりのクッキー好きだぜ」「いやいや、焼き団栗だろ、ほのかな甘味が」「パンに入れても美味いよな」と、少し食べる方に片寄っている気もしますが、悪い意見は無さそうなので一安心ひとあんしんです。

「そうですね。よしこの村の名は団栗の別の呼び名で、エイコーン、エイコーンどんぐりを、候補にしましょう!」

 捕まるかもと心配していたのですが、良い方に話は流れ、なんとこの村の名前になるかもしれないなんて······。

「良かったねテラ、みんな良い人達で」

「うんうん♪ 海に行った帰りに、もう何本か村のまわりに団栗の木を植えてあげましょう♪ 言っとくけど、普通はここまで大きくならないからね、この子は特別沢山栄養を食べる子だっただけなのよ」

「うん♪ 団栗の林を作っちゃいましょう♪」

「あはは、ライにテラったらそんな事をしたら怒られるかも知れないよ」

「あっ、おはようアマラ」

 アマラが起きて来たようです。

「おはようって、なんだかうまくまとまったみたいですね? 皆さん笑顔です」

 集まっている人達を見渡しながら、ほっ、っと一息ついています。

「うん、この村の名前になるかもしれないって♪」

「あら! そうなの! 凄いじゃない! それならいっぱい植えるの賛成かも♪」

「ぬふふふ♪ 任せて! 私が良い子達を集めてあげるわ!」

 それでまた、怒られそうになるのは、またいつかの話です。

しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...