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第三章
第116話 授与式ですよ
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跪き待っていると壇上に一人のお爺さんが出てきました。
「これより、王のご臨席です」
おお! もう来るのですね。たまたま何かやる予定に、この事を詰め込んでくれたのかも知れませんね。
そして小声で。
「皆さん頭を下げて下さい」
「お、おお。ありがとうな」
お兄さん達は僕の言葉に反応して素早く床を見るように、頭を下げました。
プシュケはしっかり跪き約束を守っています。ですがテラは僕の肩の上でムルムルに座ってますし、リントも何故か僕の隣にきて毛繕いしてますし。
「ご臨席!」
その言葉で、謁見場は緊張に包まれ、壁際の貴族さん達も、ピシッと姿勢をただし、壇上に体の向きを合わせます。
気配からして奥のカーテンからきそうですね。中々大きな魔力は誰でしょうか、宮廷魔道士さんでしょうかね。
(違うわよ。一人はこの国の王子よ。もう一人の方が素質はあるわ。そっちは王女。王はそう大したこと無いけど早く王子に王位を譲ればこの国は安泰かもね)
おお。優秀な王子様なんですね。ん? 動きましたから出てきますね。
出てきたのは白髪ですが、姿勢の良い方。次はお兄さん達と同じくらいでしょうか王子様、そして僕より少し上なのかな? でも綺麗な女の人は王女様ですね。うんうん、この二人はぐるぐるすれば母さんくらいは無理でも、良いところまでいけそうです。
そして最後は王様ですね。
(ねえライ。顔を上げていて良いの?)
僕は家名を持っていますからね、少し下げておけば大丈夫ですよ。
(何よ、心配したじゃない、怒られたらどうしようかって)
ありがとうテラ。ちゅってしたいけど、今は横を向く方が不敬になるからね。
(ばっ、バカな事は言わないの、もうしっかりしてよね)
そんな事をしている間に王様が王座に座ってしまったようです。
「ふむ。私と目を合わせるか。宰相こやつが?」
「はっ。隣国のサーバル男爵のご子息です。家名を持ち冒険者をしているようです」
「うむ。剣聖の息子か。なるほど、ならば構わんな、宰相続けてくれ」
「はっ。では予定を変更して、これより新たな偉業を成し遂げたパーティーへの報酬授与を行います」
王様もやっぱり父さんの事を知っているのですね。それに予定を変更したのですか。忙しい王様なのに、よく詰め込みましたね。おっと話が続いていますね。
「まずは、今回、かれこれ百年ぶりの新ダンジョンの発見報告を成し遂げた!」
宰相さんがそう言うと、緊張感が張りつめていた謁見場がザワザワとし始めました。
「そして、その新ダンジョンの完全攻略を成し遂げられた!」
ザワザワが大きくなり『新ダンジョンだけでもその功績は叙爵物だぞ』『完全攻略となればどうなるのだ』『まさか姫様が降家なさるのか』『だがまだ若すぎるだろ、伯爵か?』などとこそこそと話までし始めてしまいましたね。
「うむ。ダンジョンが増えた事は、とてつもない国への貢献だ。それも鉱石や宝石の産出するダンジョンだ。発見者には、王様よりお言葉をいただく。カルバン面を上げよ」
「今ですよ『はい』です」
僕は小声でカルバンさんに教えて上げます。
「は、はい!」
「では王様」
「うむ。カルバンよ、そなた達の活躍によりこの国は更なる発展を遂げよう。よって、発見の報酬に黒貨一枚。それと一代限りだが、パーティーメンバーを準男爵、リーダーのカルバンには準子爵の爵位を授ける」
「ありがとうございます」
良かったです。覚えていたようですね。
宰相さんが階段を下りてきて、煌びやかな装飾が施された箱を手渡しました。
「叙爵に関しては別室で説明を受けてもらいます。それと、黒貨は後で分けられるようにしておきますね」
「あ、ありがとうございます」
ふむ。小分けしてもらいませんと分けられませんからね。おっと一々階段上に戻るのですね。
「続けます。今回発見されたダンジョンが完全攻略されました。攻略者には王様よりお言葉をいただく。ライリール・ドライ・サーバル」
「はい」
名前を呼ばれる前は、『すると攻略はあの剣聖の息子なのか?』『いやたまたま同じパーティーに所属しているだけだろ?』『先ほどのカルバンとやらが永続的な貴族に叙爵されるのかもな』とかボソボソと聞こえていました。
ですが名前を呼ばれた後は『誰か荷物持ちだとか言ってなかったか』『隣国の男爵家とは言えこの功績は伯爵か』『おい。姫様が降家の可能性大だぞ』と少し声が大きくなって、これはみんなに聞こえていますね。王様に怒られないと良いのですが。
(ライ、王様に集中してないと怒られるわよ)
そ、そうでした。僕は意識を王様に戻し、お話を聞く体制に戻りました。
「静粛に!」
宰相さんの声で、また緊張感のある空気に戻り、王様が喋り始めました。
「ライリールよ。此度のダンジョンの完全攻略。これも百年ぶりの功績だおめでとう」
「しかも、皆も知っているとは思うが、世間を騒がせていた人攫いの本拠地を発見し、捕まっていた我が国の同胞はもちろん、他国の者まで全て助け出し、首謀の団体である教会の悪事を露見させ、教国の関与が確実となり、我が国に蔓延る教会の排除を進めている」
「そして人攫いの者達を捕まえる事に成功。今、近隣諸国へ通達が行き渡り、徹底的に人攫いの集団の捜索が開始された! 今現在、帝国と教国以外の国において、ほぼ全ての国が動いておる! 余談だが、ファイアーアントの巣の壊滅や、ヒュドラの九本首を単独パーティーで討伐も達成しておる」
うわっ、そんな事にまでなっていたのですね、うちの国と、ラビリンス王国だけが教国と教会を排除するのかと思っていました。
「よって、ダンジョン完全攻略報酬。黒貨十枚。それと永続的になる叙爵と考えていたのだが、既に将来伯爵位の叙爵が決まっておるそうだ。どうだライリールよ。うちの爵位も受け取ってくれんか?」
え? これは慎重に返事をしなきゃいけませんよね······。
「これより、王のご臨席です」
おお! もう来るのですね。たまたま何かやる予定に、この事を詰め込んでくれたのかも知れませんね。
そして小声で。
「皆さん頭を下げて下さい」
「お、おお。ありがとうな」
お兄さん達は僕の言葉に反応して素早く床を見るように、頭を下げました。
プシュケはしっかり跪き約束を守っています。ですがテラは僕の肩の上でムルムルに座ってますし、リントも何故か僕の隣にきて毛繕いしてますし。
「ご臨席!」
その言葉で、謁見場は緊張に包まれ、壁際の貴族さん達も、ピシッと姿勢をただし、壇上に体の向きを合わせます。
気配からして奥のカーテンからきそうですね。中々大きな魔力は誰でしょうか、宮廷魔道士さんでしょうかね。
(違うわよ。一人はこの国の王子よ。もう一人の方が素質はあるわ。そっちは王女。王はそう大したこと無いけど早く王子に王位を譲ればこの国は安泰かもね)
おお。優秀な王子様なんですね。ん? 動きましたから出てきますね。
出てきたのは白髪ですが、姿勢の良い方。次はお兄さん達と同じくらいでしょうか王子様、そして僕より少し上なのかな? でも綺麗な女の人は王女様ですね。うんうん、この二人はぐるぐるすれば母さんくらいは無理でも、良いところまでいけそうです。
そして最後は王様ですね。
(ねえライ。顔を上げていて良いの?)
僕は家名を持っていますからね、少し下げておけば大丈夫ですよ。
(何よ、心配したじゃない、怒られたらどうしようかって)
ありがとうテラ。ちゅってしたいけど、今は横を向く方が不敬になるからね。
(ばっ、バカな事は言わないの、もうしっかりしてよね)
そんな事をしている間に王様が王座に座ってしまったようです。
「ふむ。私と目を合わせるか。宰相こやつが?」
「はっ。隣国のサーバル男爵のご子息です。家名を持ち冒険者をしているようです」
「うむ。剣聖の息子か。なるほど、ならば構わんな、宰相続けてくれ」
「はっ。では予定を変更して、これより新たな偉業を成し遂げたパーティーへの報酬授与を行います」
王様もやっぱり父さんの事を知っているのですね。それに予定を変更したのですか。忙しい王様なのに、よく詰め込みましたね。おっと話が続いていますね。
「まずは、今回、かれこれ百年ぶりの新ダンジョンの発見報告を成し遂げた!」
宰相さんがそう言うと、緊張感が張りつめていた謁見場がザワザワとし始めました。
「そして、その新ダンジョンの完全攻略を成し遂げられた!」
ザワザワが大きくなり『新ダンジョンだけでもその功績は叙爵物だぞ』『完全攻略となればどうなるのだ』『まさか姫様が降家なさるのか』『だがまだ若すぎるだろ、伯爵か?』などとこそこそと話までし始めてしまいましたね。
「うむ。ダンジョンが増えた事は、とてつもない国への貢献だ。それも鉱石や宝石の産出するダンジョンだ。発見者には、王様よりお言葉をいただく。カルバン面を上げよ」
「今ですよ『はい』です」
僕は小声でカルバンさんに教えて上げます。
「は、はい!」
「では王様」
「うむ。カルバンよ、そなた達の活躍によりこの国は更なる発展を遂げよう。よって、発見の報酬に黒貨一枚。それと一代限りだが、パーティーメンバーを準男爵、リーダーのカルバンには準子爵の爵位を授ける」
「ありがとうございます」
良かったです。覚えていたようですね。
宰相さんが階段を下りてきて、煌びやかな装飾が施された箱を手渡しました。
「叙爵に関しては別室で説明を受けてもらいます。それと、黒貨は後で分けられるようにしておきますね」
「あ、ありがとうございます」
ふむ。小分けしてもらいませんと分けられませんからね。おっと一々階段上に戻るのですね。
「続けます。今回発見されたダンジョンが完全攻略されました。攻略者には王様よりお言葉をいただく。ライリール・ドライ・サーバル」
「はい」
名前を呼ばれる前は、『すると攻略はあの剣聖の息子なのか?』『いやたまたま同じパーティーに所属しているだけだろ?』『先ほどのカルバンとやらが永続的な貴族に叙爵されるのかもな』とかボソボソと聞こえていました。
ですが名前を呼ばれた後は『誰か荷物持ちだとか言ってなかったか』『隣国の男爵家とは言えこの功績は伯爵か』『おい。姫様が降家の可能性大だぞ』と少し声が大きくなって、これはみんなに聞こえていますね。王様に怒られないと良いのですが。
(ライ、王様に集中してないと怒られるわよ)
そ、そうでした。僕は意識を王様に戻し、お話を聞く体制に戻りました。
「静粛に!」
宰相さんの声で、また緊張感のある空気に戻り、王様が喋り始めました。
「ライリールよ。此度のダンジョンの完全攻略。これも百年ぶりの功績だおめでとう」
「しかも、皆も知っているとは思うが、世間を騒がせていた人攫いの本拠地を発見し、捕まっていた我が国の同胞はもちろん、他国の者まで全て助け出し、首謀の団体である教会の悪事を露見させ、教国の関与が確実となり、我が国に蔓延る教会の排除を進めている」
「そして人攫いの者達を捕まえる事に成功。今、近隣諸国へ通達が行き渡り、徹底的に人攫いの集団の捜索が開始された! 今現在、帝国と教国以外の国において、ほぼ全ての国が動いておる! 余談だが、ファイアーアントの巣の壊滅や、ヒュドラの九本首を単独パーティーで討伐も達成しておる」
うわっ、そんな事にまでなっていたのですね、うちの国と、ラビリンス王国だけが教国と教会を排除するのかと思っていました。
「よって、ダンジョン完全攻略報酬。黒貨十枚。それと永続的になる叙爵と考えていたのだが、既に将来伯爵位の叙爵が決まっておるそうだ。どうだライリールよ。うちの爵位も受け取ってくれんか?」
え? これは慎重に返事をしなきゃいけませんよね······。
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