異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第9章

第146話

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カナに案内されたお店で昼ご飯を食べていると、カナの服から何かの音がした。

「あ、ちょっと待ってくださいね!」

そう言うと、カナはポケットから通信機の様なものを取り出した。そしてスイッチを入れると、通信機からは気の弱そうな男の声がした。

『…あ、あの今どこにいますか…?』

「王国の方とお昼ご飯中です!」

『えっと、その…スナッチさんがお話があるって…』

「わかりましたっ!レイさん、ロゼッタさんまたあとでー!」

カナは元気よく手を振りながら、どこかへ走り去っていった。

「あれは…マスターの指輪に近いものですね。」

「さすが発明大国って感じだな…。よし、食べたら出所探しするか!」

「はい!」



昼を終え、俺達は繁華街まで来ていた。王国とは違い、魔道具に代わって日用品は前世に近いものが売られている。


「いねぇ…。」

「この国のものではないのでしょうか?」

繁華街に来てから1時間、いろんな店に入って鎖の事を訪ねたが、どの店の店員も首を横に振るばかりだった。

「でもこの国くらいしか考えられないよな…。」

諦めて鎖を持って歩いていたら、最後に入ったお店に偶然いたおばちゃんが反応を見せた。

「あんたそれ、ロンじいさんのものじゃないの?」

「ろ、ろんじいさん…?」

「地下の遊郭に住んでる、変わったじいさんだよ。そんな感じのものを作ってた気がするけど…。」

「わかりました、ありがとうございます!」

おばさんに礼を言い、俺達は繁華街への奥へと向かった。



「いや、聞いてはいたけどこれは…。」

「マスターは入ってはダメですからね。」

繁華街を奥に進んだ所にある階段を下ると、そこにはザ・遊郭といった景色が広がっていた。
いろんな建物があり、やけに露出した女性が通りの男を誘っていたり、飲み屋やカジノなどのお店もある。要するに、大人の遊び場の様な所だった。

とりあえず辺りを見回しながら、大通りを歩いた。

「月詠さんとか出てこないかな~…」

「誰ですか?」

「銀魂の俺の推しキャラ。クールだけどめっちゃ可愛くて…ロゼッタ、殺気抑えて。」

「…その女は私が倒してー」

「やめなさい。」

ロゼッタを落ち着かせ、そのまま通りを歩いた。相変わらずいろんな客で賑わっているが、ロンじいさんとやらが何処にいるのかさっぱりわからない。
仕方なく近くの女性に聞いて家の場所を教えてもらい、遊郭のさらに奥へと歩いていった。



「うわ~…。」

「間違いなさそうですね。」

目の前には、小さな家があった。ただ、家の周りにはいろんなガラクタの様なものが転がっており、人が住んでるのかさえ怪しい雰囲気がしていた。

「す、すいませ~ん…。」

ドアをノックしながら呼びかけてみたが、何の反応もない。

「いないのかな?」

「ですが、扉は開いてますよ。」

ロゼッタは遠慮なく扉を開け、中の様子を見た。俺も後ろからのぞいたが、真っ暗で孤独死でもしているんじゃないかと心配になる。

「入りましょうか。」

「え、そんな何も言わずにズカズカいったらー」

「っ?!」

ロゼッタが足を家の中に少し進めた瞬間、廊下の奥から吹き矢の様なものが飛んできた。

「えー…なにこれからくり屋敷?」

「こうなったら、壊すしか…」

「いやいやいや!多分中に人がいるんだよ。ん?」

そう言って今度は俺がゆっくり入ると、何かが足に引っかかった。見ると、俺の足首に一本の糸が張られている。
そして糸が少し動いたと思ったら、俺の頭上から油の様なものが降ってきた。髪と服がベトベトになり、なんだか鼻を突き刺すような匂いがする。

「……………。」

「マ、マスター…。」

「こ、こんのクソジジイが!いいぜ、からくり屋敷攻略やってやるよ!」

体を魔法で綺麗にし、俺はズカズカ廊下を進んでいった。


その後も床が抜けて下に針がある部屋や、壁から人体模型が飛び出す部屋を抜けながら、2階の奥までやってきた。
扉は閉められているが、少しだけ光が漏れている。

「じじぃ…。やっと見つけたぜ…。」

「一体どんな方なんでしょう。」

「とりあえず入るか。」

少し緊張しながらも扉を開けた途端、パンッという音とともに紙吹雪が部屋を舞った。部屋の中心には白髪の爺さんがおり、やる気のない拍手をしている。

「おめでとう お化け屋敷の 攻略者 
君が初めて わしも驚き」

「……は?」

妙に下手な短歌が聞こえたと思ったら、爺さんは飽きたのか座って何かの機械をいじり始めた。

「あ、あの…ロンじいさんですか?」

「………………。」

爺さんは聞こえていないのか、なんの反応もせず機械をいじっている。

「おーい!聞こえてますかー?」

「………………。」

かなり大きな声で呼びかけたが、相変わらず無視をされた。イライラするが、ここは落ち着くように心がける。

「もしかして、返歌をすれば良いんじゃないですか?」

ロゼッタの言葉に爺さんはピクリと反応した。

「えぇ…。俺そんな経験ないけどな…あ、でも川柳少女なら読んでたし。よし…!」

前世の記憶を探り、俺は爺さんに1番最初に思い浮かんだ川柳を詠んだ。

「えっと…構わない どう思われても 君となら。」

「20点 そんな川柳 わしゃ好かん。」

「ク、クソジジィ~!七々子に謝れ!はぁ疲れた…。もう単刀直入に聞きます、これを作ったのはあなたですか?」

俺は力なく爺さんの近くに鎖を置いた。爺さんは一瞬反応を見せたが、すぐに作業に戻ってしまった。

「回答は ヨシノをここに 呼んでから」

「ヨシノ…?」

「人の名前でしょうか?」

「えっと、ヨシノさん?を連れて来ればいいんですか?」

「わしは今 そうしてくれと 言ったはず」

「はいはい、わかりましたよ。」

今ここにいても教えてくれる気配を微塵も感じなかったので、とりあえず「ヨシノ」という人を探すことにした。




レイたちがロンじいさんの家から出てくるのを、ウサピョンは建物の陰からこっそり見ていた。
そこへ通信が入り、ウサピョンは慌ててスイッチを入れた。

『着ぐるみのあんちゃん、今どこにいるんだ?』

「繁華街でお買い物だぴょん!何か用かなー?」

『…いや、なんでもない。邪魔して悪かったな。』

「ばいばいぴょーん。」

ウサピョンは通信機をしまい、レイたちの後ろ姿を眺めた。





(※前に感想でオタ用語などがわからないとご指摘があったので、ちょっとだけ解説を…遅れて申し訳ないです!)


『川柳少女』
週刊少年マガジンで連載中の、川柳ラブコメです。タイトルにもある通り、主人公の雪白七々子は川柳で想いを伝えるという少し変わった美少女。ヒーローは毒島エイジというヤンキー(いい子)で、個性豊かな彼らが私は大好きです。
アニメが絶賛放送中なので、よかったらぜひ!EDは琴姉役の逢田梨香子さんです!


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