異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第9章

第147話

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「あーヨシノ姐さんね!胡蝶こちょう組の屋敷にいると思うわよ。」

近くにいた遊女らしき人に、ヨシノの居場所を聞くとすぐに答えが帰ってきた。
街の人の信頼が厚いようで、みんな名前を聞いただけで笑顔で答えてくれる。どうやら地下の治安を維持する「胡蝶組」のリーダーらしく、酔っ払いやしつこい勧誘の取り締まりなどをしているらしい。


そしてすぐに、胡蝶組と書かれた看板のある屋敷についた。まるで裏社会の人間達のアジトのようで、少し入るのが怖い。

「あーなんか土竜の唄が聞こえる…。」

「マスター、早く入ってロンじいさんの所に連れて行きましょう。」

「はい…。」

無駄にでかい木のドアをノックすると、若い女性が出てきた。

「何の用かな?お金すられちゃった?」
 
「いえ、ヨシノさんに少しお話があって…」

「姐さんなら今いないよん?多分遊郭の見回りに行ってるかも。」

「わかりました、ありがとうございます。」

とりあえず遊郭に戻り、手当たり次第通行人たちにヨシノさんの目撃情報を聞いていった。


「もう全然いない!本当にいるのか?!」

「さすがに疲れますね…。」

あれから1時間、いろんな人に尋ねて回ったが一向にヨシノさんは捕まらなかった。あっちの方で見たと言われて行ってみれば、反対側で見たなどずいぶん忙しい人のようだ。

「もう帰って寝たい…。このままだと日が暮れる。」

「仕方ないですね…ここは荒技に出ましょうか?」

「荒技?」

「マスター、あとでなんでもしてあげるので、許してください。」

「一体何を…」

「きゃー痴漢ですー(棒)」

「は?!」

ロゼッタは俺を指差しながら、恐ろしいくらいに恐怖感のない叫び声をあげた。痴漢というワードに、周囲の視線が一気に集まる。

「ちょ…!違うんですけど?!」

「マスター、ダメです。こんなところで…やっぱやめないで…。」

「むしろ喜んでません?!」

周囲がざわつき出したところで、上空から手裏剣とくないが何発も飛んできた。
くないを全部回収し手裏剣を避けきると、武器が飛んできた方向から手甲鉤をつけた女性がきた。

「うわ。」

頭に振り下ろされた手甲鉤を避けながら相手の腕を抑え、転移して距離をとった。

「痴漢め…異国の者か。すんぐにおまんを牢にぶち込んでやるきに、覚悟せい。」

「いや可愛すぎか。」

こんな状況にもかかわらず、俺は思わずその可愛さに感動してしまった。女性はくノ一のような着物を着ており、スタイル抜群のヒロイン総選挙だったら余裕で1位を狙えるような人だった。それに加えて、言葉遣いも相まってなお良し。

「あやかしい事を言いなや。褒めても何もでんぜよ。」

「ぜ、ぜよって…。その存在を世界遺産に登録したい…。」

「手にあわんやつだ、すんぐに処刑しちゅう。」

「あなたになら、喜んで!」

「気でも狂ったか?!」

女性は驚きながらも、忍者刀を抜いて走ってきた。とんでもない速さで一気に距離を詰めてくると、俺の腹を切り裂こうとする。

「そこまでです。」

だが、俺が止めるよりも前にロゼッタが女性の腕を掴んだ。

「離せ、こいつは痴漢なのだろ?」

「いえ、あなたを呼ぶためにわざと騒ぎを起こしました。申し訳ありません。」

「つまり、うちはおまんの罠に引っかかったわけか。おっこうな事をするもんじゃないぜよ。」

ロゼッタの告げた事実に、周囲の客達は戻っていき女性も刀を納めた。

「あの、ヨシノさんですか?」

「そうだ、うちが胡蝶組頭領のヨシノぜよ。して、おまんらうちに何か用か?」

「実はロンじいさんが連れてー」

「さらばだ。」

「えぇ?!ちょっとー?!」

いきなり建物の上に飛び移り、ヨシノは屋根を伝って逃げていった。

「なんなんだこの街の人間は…。」

「とにかく追いかけましょう!」

俺たちは空を飛び、ヨシノの後を追いかけた。




帝国の北にある施設、そこは関係者以外立ち入り禁止の研究所となっている。
そしてそこの1番奥の研究室に、八将神のスナッチとアルガリスがいた。スナッチは下着姿に白衣という変わった格好で、アルガリスは見慣れたのか注意もしない。

「それにしても、嬢ちゃん遅いな…。」

「道に迷っちゃったのかしらねぇ~…。せっかく新しい武器の威力を試してもらおうと思ったのにぃ。」

スナッチはふてくされながら、椅子にどかっと座った。だが、側にあった紙の束を見てすぐに笑顔になった。

「いや~それにしてもダライアス王国には世話になってばかりね。あのー誰だっけ…あ!ミゼリアだっけ?あいつが勝手に研究を進めてくれたから、お陰で良いデータが手に入ったわよ。それに、フローリアちゃんも魔道書とやらを完コピしてくれたし、もう私嬉しくて濡れちゃいそう!」

「勝手にって…あんたが共同研究を持ちかけたんじゃなかったのか?」

「それが聞いてよ!スナッチとかいうお堅い研究者、私がわざわざその話を出してやったのに断って、全部独り占めする気だったみたいよ。でもまぁ、そのせいでずいぶん痛い目にあわされたみたいだったけどね、そこの。」

スナッチの指差した方には、いくつもの巨大なカプセルが壁に備え付けられていた。カプセルの液体の中には、全員同じ顔の白髪の男性が目を閉じて眠っている。

「なんというか…人間としてこういった行為はどうなんだろうな。」

「仕方ないじゃなーい。陛下がやれって言ったんだから。まぁこれで私の研究の方も、魔法とやらのおかげでずいぶん進歩したからね!」

「…そうかい。」

アルガリスは呆れながらも、タバコの煙をはいて部屋を出て行った。
残されたスナッチはカプセルをうっとりとした表情で眺め、ガラスを愛おしそうに撫でた。


「待っててね、先生。もうすぐテオスちゃん達とあなたの願いを叶えるから…。」

スナッチはそう呟くと、部屋を出て行った。





『土竜の唄』
スピリッツなどで掲載されていた漫画で、主人公の菊川怜二は交番勤務の問題児。そんな怜二はある日、ひょんなことから悪の組織へと潜る潜入捜査官になってしまう。正義と悪の仮面を仮面を持った彼は、無事悪の組織を潰せるのかー?!
ここでの土竜は、敵組織に潜るモグラ(潜入捜査官)という意味。漫画だけでなく、実写版の映画もあり、主人公は生田斗真さんが演じていました。
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