異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第9章

第148話

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ヨシノは胡蝶組の屋根の上に座っており、俺たちは雨樋から少しだけ頭を出してのぞいた。

「ふぅ…危なかった。あのじいさんに会うのは御免ぜよ。」

「何か事情でもあるんですかね?」

「多分…?今日は出直そうか。少し日が暮れ始めてる。」

「そうですね、ではまた明日来ましょうか。」

帰り際ヨシノさんを横顔を見たが、その顔はどこか儚げで今にも泣き出しそうな顔に見えたのは気のせいだったのだろうかー。
 


「ん…?」

『ぴゃっ!』

次の日、起きるとフェルが俺の頰を舐めていた。フェルは普段は俺の影の中で惰眠を貪っており、自由気ままに生活している。
そして皮肉な事に、ジョーカーにあの剣で刺されたせいか、スキルに神滅耐性Lv.6が追加されていた。そのおかげ?でフェルと触れ合っても前ほど痛みは感じない。

「朝ごはんだな…。」

『ぴゃっ!』

フェルを頭に乗せて、俺は食堂へと向かった。



基本的に、夕食は皇国の人達と交流しながらなのだが、朝・昼は各自自由となっているので、バイキングで適当にとって1人で席に着いた。

「相席、よろしいですか?」

「ん、いいよ。」

フェルとスープを飲んでいると、向かいにベルベットが腰掛けた。彼女のトレーには、サンドイッチが1つだけ乗っている。

「それだけ?」

「むしろこれもいらないくらいです。強いて言うなら、副団長がくれたあのサンドイッチがいいです。」

「ファングボアのやつか。あれ気に入ったの?」

「わかりません。」

「わからんって…。」

その後もポツポツと会話して、先にベルベットが食べ終えて食器を片しに行った。

「じゃ、俺たちも行こうか。」

『ぴゃっ!』

「ねぇ。」

「うわっ?!」

トレーを片しに行こうとすると、いつのまにか背後にウサピョンがいた。

「な、なんですか?!」

「はい、これあげるぴょん。」

「これは…?」

ウサピョンは俺に小さな紙切れを渡し、何も言わずにどこかへ帰っていった。
紙にはこの国と思わしき下手くそな地図が書いてあり、北のほうに赤い丸がつけられている。丸の上に、『夜ここに来てぴょん』とだけ書いてあった。

「なんなんだあの人…。」

『ぴゃぁー?』

とりあえず紙をしまい、俺も自室に戻った。




「いないですね。」

「目視で探すとなるとな…。」

亜人族は魔力を持たないので、ヨシノの魔力を探るなんて事はもちろん出来ない。なので遊郭を歩いて探しているのだが、隠れているのか全く見つからない。
仕方ないのであとはロゼッタと妖精のイヴに任せ、俺は皇国図書館へと向かった。

 

「あ、お兄さーん!」
「こんにちは。」

図書館に向かって歩いていると、通りの向こうからナナとサナがトコトコ歩いてきた。相変わらず2人仲良く手をつないでいる。

「えっと…どうかした?」

「一緒に遊ぼう!」
「だめずら?」

「あー…どうしようかな…。」

図書館まであと少しなのだが、ここで断ったら2人とも泣きそうな顔をしていた。それにまだ滞在日数はあるので、今日だけは付き合う事にした。

「わかった、今日だけだよ?」

「やったー!早く行こー!」
「ありがとうずら。」

双子に手を引っ張られ、俺は繁華街の方へと連れていかれた。



「あ〝あ〝ぁぁぁ…疲れた…。」

子供のエネルギーとは恐ろしいもので、あれからいろんな店を連れまわされた。結局別れた頃には日も暮れ始めており、街は薄暗くなっていた。
急いで王城に戻って皇国の人たちと夕食パーティーをすませ、今はスサノオとウサピョンに言われた場所に来ていた。

「ここかな?」

「なんだか、あまり入っていいような雰囲気はしませんな。」

俺たちの前には大きな柵があり、柵には『関係者以外立ち入り禁止』と書かれている。そして柵の奥には、大きな研究施設のようなものがそびえ立っていた。

「遅れてごめんだぴょん!」

「うわ、出た…。」

柵に沿って、右から大きなカバンを持ったウサピョンが走ってきた。

「さ、行くぴょーん!…と、その前に。」

ウサピョンはカバンから2着の着ぐるみを取り出した。1つは小さいヒヨコのもので、もう1つは大きなカバの着ぐるみだった。

「おい、まさか…。」

「さっ、早く着るぴょん!じゃないとここの研究室に入れないピヨ?」

「キャラぶっれぶれじゃねぇか。仕方ねぇな…。」

俺はヒヨコの着ぐるみを着て、スサノオはカバの着ぐるみを着た。優しい光が照らす街に、動物の着ぐるみ3人が集まるという異様な光景が完成している。

「2人ともよく似合ってるピヨ!お姉さん嬉しいカバ!」

「お前が男だったらぶっ飛ばしてたよ…。」

「さ!今度こそ行くぴょん!」

やけにテンションの高いウサピョンの後をついていき、俺たちは研究施設へと向かった。



「あ、あの…ウサピョン様?こちらの方たちは?」

「私の友達だぴょん。入ってもいいかな?」

「し、しかし…。」

「いいピヨ?ありがとー!」

困ったような門番をウサピョンは無理やり突破し、俺たちは研究施設に入った。

「あの…なんでここに連れて来たわけ?」

「それは、これから案内する所に行けばわかるぴょん。」

「あっそ…。」

ウサピョンはやけに右や左に曲がって進み、廊下の途中で立ち止まった。

「どうした?」

不思議に思って尋ねると、ウサピョンは辺りをキョロキョロ見てから上を見た。ウサピョンの視線の先には、天井に大きな換気口のようなものがある。
そしてウサピョンはジャンプしながら蓋を殴り飛ばし、換気ダクトの中に入った。

「ついてくるぴょん。」

「ねぇ、俺たち捕まったりしないよね?なにこれ、約束のネバーランド?やだよ俺、ママに送り出されたくないよ?」

「コソ泥よのうにしか見えないのだが。」

「…………多分、大丈夫だぴょん。」

「なに今の間?!本当に大丈夫なのか?!」

「チッ、うっせーな早く来いよ。こっちはニコチンきれてイライラしてんだよ。」

「お前、素出すぎだろ!」

「な、なんでもないぴょん?見つかる前に早く行くぴょん!」

「今見つかる前にって言ったよね?!はぁ…もうどうにでもなれ…。」

ため息をつきながら、俺たちもダクトの中に入って四つん這いで進んでいった。



かなり奥に進んだ所で別の蓋を開け、俺たちは部屋の中に降り立った。
どこかの部屋の入り口の前で、やけに分厚い扉が目の前にある。

「開けるぴょん。」

自然と緊張してしまい、なんだか嫌な汗が頬を伝う。
そんな俺をよそに、ウサピョンのは重そうな扉を開けて中に入った。その後に続いて入り、俺とスサノオは言葉を失ってしまった。


そこには大量のカプセルが並び、中には外見が全く同じ白髪の男性が眠っていたのだ。それも、俺たちの知っている男性だ。

「なぜ、ここにあの方が…。」

「知ってる人だピョン?」


「スズリ様、なのか…?」


その男性は、前にホリネスの森で会った前風神・スズリだったー。





『約束のネバーランド』
週刊少年ジャンプで連載中。脱獄をテーマにしたダークファンタジー漫画で、孤児院で暮らしていた少年少女達が、施設のを知ってそこから逃げ出す物語。
人間関係や頭脳戦など見所が多く、読んでいてとてもハラハラする作品です!主人公のエマも可愛いのが見所。
漫画は「このマンガがすごい!2018」のオトコ編で第1位に輝き、この前までアニメが放送されていました。
2020年に第2期もあるそうなので、そちらも期待です!
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