Sランク冒険者の受付嬢

おすし

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鍵と記憶と受付嬢

第5話

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 東門に駆けつけた2人のシルヴィアは、目に映る景色に言葉を失った。辺りに冒険者や聖騎士たちが倒れ、その骸を踏み越えて魔獣たちが迫ってきている。
 そして前方では、自身の血と返り血で真っ赤になったグレイが片っ端から魔獣を砂へと還していた。魔獣たちは一番強い獲物を喰らおうとグレイに飛びかかるが、グレイに指一本でも触れられた魔獣は一瞬で砂になっていく。

『グレイ!』

 ハッとなった過去のシルヴィアは、狩り損ねた魔獣を斬りながらグレイの元へと駆け寄った。体力と魔力の消耗が激しく、グレイは今にも倒れそうになっていた。

『大丈夫?!』

『あぁ……お前、何でここに…?』

『一旦聖女様の所に戻った方がいいよ!』

『問題ない…お前は下がってろ』

『でも…』

 ふらつきながらもグレイは魔獣たちを消していき、見ていられなくなったシルヴィアはグレイの腕を掴もうとした。だがそこへ、飛行型の魔獣が上空から尻尾に生えた無数のトゲを飛ばしてきた。
 
『ぐっ…!』

 それに気がついたグレイは痺れた手でシルヴィアを突き飛ばし、トゲを消炭にする。だが大群に背を向けたスキをついて、群の中から魔獣の長い爪が伸びてきて、グレイの腹部を貫通した。

『……クソがっ…!』

 グレイは爪を消して辺りの魔獣を吹き飛ばしたが、積もり積もったダメージで膝から崩れ落ちた。
 その光景を、2人のシルヴィアはただ茫然と眺めていた。1人は座ったまま目の前の光景を信じて理解出来ず、頭が真っ白になってしまい、もう1人はその様子を黙って傍観したままだった。

『嘘……いや……』

 先に動いたのは、過去のシルヴィアだった。
 シルヴィアはゆっくりとグレイに近づくと、大量の血を流して眠るグレイを揺すり起こそうとした。血がドクドクと溢れ続け、顔色が悪くなっいくのが嫌でも分かる。

『グレイ起きてよ…ねぇ……私を1人にしないで…』

『シルヴィアさん!ここは危ないから離れてください!』

 近くの冒険者に叫ばれ、シルヴィアはグレイを抱えた。そして何か小さく呟くと、先ほどまで動けなかったのが嘘かのような速さで王都へと走り出した。



 ギルドの医務室にいた聖女のエステリアにグレイを預け、シルヴィアはギルドの裏手に回った。そして倉庫の中に隠されていた、一冊の魔導書を引っ張り出した。

(あれは…机に入っていた)

 記憶の中のシルヴィアは虚な瞳で魔導書を開くと、剣で指先を切って血を本に垂らした。
 すると本から黒い靄の様な物が溢れ始め、次第に集まって魔人の様な姿へと変わっていった。男とも女とも言えぬ風貌をしたソレは、俯くシルヴィアを見ると恍惚な表情を浮かべた。

『久しぶりのお目覚めと思ったら、これまた可愛らしい人間のお嬢様だぁよ。まぁソレはともかく、願いを言ってくださいな。私と契約を交わせば、願いは何でも叶えて差し上げましょう』

『…………さい』

『失礼お嬢さん、もう一回言ってくださる?』

『私に……あの魔獣たちを全て殺す力をください』

 シルヴィアの願いに、ソレはぱあっと笑って踊り回った。嬉しそうなのに、感情が全くこもっていない様な笑顔だ。

『お安い御用だぁよ。ただ1つだけ、契約には貴女の大事なモノを頂くけどいいかぁな?』

『何でもいい……早くして』

『ではでは、大地の悪魔《リベルタス・グラネウス》の名に於いて契約成立ッ。私は貴女に力を、貴女は私にその思い出記憶感情を献上して頂くとしましょう』

 リベルタスは最後に満面の笑みを浮かべると、再び靄となってシルヴィアの体を包み込んだ。
 そして靄が晴れるとそこには、様変わりしたシルヴィアがいた。黄金に輝いていた髪はあの悪魔と同じ銀色に変わり、禍々しい魔力が身体中から溢れ出している。

『………ウフフ……皆殺しにしなきゃ』

 シルヴィアは自分の手を見てギュッと握ると、その場から跳躍して壁の方へと跳んでいった。




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