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第2章
春希side
…僕は、ちゃんと出来ない子で。
「そうじゃないでしょ?」
「こうでしょ?」
いつもいつも…何かしらを間違えて。
「なんで間違えるの?」
「なんで出来ないの?」
………なんで?
「なんで?」
「なんで?」
「なんで?」
…なんで出来ないんだろう。
高校に上がって発情期が来たら汚いと言われて。
男のくせにって。
僕は何を間違えてしまったんだろう。
小さな町だったから。
間違いがあったらいけないから。
誰も近寄らなくなった。
…僕は間違えるから。
外に出ると迷惑がかかるから。
…学校も行かなくなって。
そしたら…僕は誰にも見えなくなった。
生きていなくていいんじゃないかな?
戸建ての2階から飛び降りても逝けるはずもなく…。
でも息苦しくて…閉め切っていた窓を開けようと鍵に触ったらバチッ!と強い静電気に触ったみたいな衝撃があって思わず目を瞑った。
…痛いのは …嫌。
…恐る恐る眼を少し開くと原っぱみたいな所にいた。
吹く風が刺さるほど冷たくてこのまま動かなかったら…凍死とか出来るかな?ってぼんやり考えた。
…出来れば痛くない方がいいな。
なんだろう…生臭い匂いがして辺りを見渡してみた。
凄く大きい牙のある二本足で立った牛がいた。
…ああ、やっと終わる。
ちょっと痛そうだけど仕方がない。
少し怖いから目を閉じていよう。
僕は手を広げた。
僕に向かってくる足音が聞こえる。
思っていたのとは違う方向にお腹の辺りをガツっと引っ張られた。
『う゛ぇっ!』
凄い勢いだったから吐きそうになった。
「くそっ!」
…終わらなかった。誰かの肩に担ぎ上げられていた。
「安全な所まで走る!」
二本足の牛がどんどん離れていく。
牛が見えなくなった所まで来て、その人が僕を下ろした。…凄く大きな人で頭に三角の耳がついてた。
「ここは緩衝地帯だ。何故こんな所に?」
『わからないです。』
…声が出なかった。
「声が出ないのか?」
『そうみたいです。』
眉間に皺がよる……僕はもう何か間違えたのかな?
「話は通じているようだな。君を私の家に連れて行く。」
……放っておいてくれていいのに……
その後その人が言った言葉は聞き取れなかった。
通りすぎる人が「お疲れ様です」って言うけど。
僕の事は見ていない。
ここでも僕は見えないのかな。
……この人にはなんで見えるのかな。
この人の家は凄く大きかった。
これだけ大きい家なら静かにしていたら目障りじゃないかもしれない。
言われる通りに。
間違えないように。
邪魔にならないように。
僕は生きてるだけで迷惑だから。
三角耳の人はイゴールさん。
角ある人はバレンティンさん。
角のある若い人はロランさんとリランさん
僕には兎の耳が生えてた。
…わけがわからない。
イゴールさんが困った顔をしている。
言われる通りにしていたつもりなのに間違えた?
…何をしてもダメなのかもしれない。
生きている事が間違いなのかもしれない。
邪魔にならないように。
迷惑にならないように。
息をひそめて。
目を閉じて。
…朝が来た …まだ終わらない。
僕は何を間違えてここにいるんだろう。
あっちには要らないからここにきたのかな。
ここでも要らなかったら…どうすればいいのかな。
なんで声が出ないのかな。
人魚姫は声を失って自由を手に入れたけど僕は何を手に入れたんだろう…それとも僕の声は耳障りだから無くなったのかな? …そっちだろうな。
邪魔にならないようにしたいのに
イゴールさんの匂いで…身体が反応する…嫌だ。
…僕は汚いから。
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