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第2章
イゴールside ②
聞き分けのいいあの子は窓際のソファーに座って微睡んでいる事が多い。囲われていて不自由だろうに感情を揺らす事もない。それなのに水にインクを一滴ずつ垂らしていくように匂いが濁っていく…どうすればいいんだ?
…どうせ逃すことは出来ないんだ、黒兎の気持ちは一旦置いて置いて…外堀を埋めるか?
どこまで魔素に対する耐性があるのか…そう思って抱き上げて庭に連れ出した。
庭に張ってあった遮断結界を解除して魔素に晒してみた。…リランが睨んできた。
耐性が無ければ頭痛や嘔吐感に襲われ身体が悲鳴をあげ吐血か…鼻血を出して意識が飛ぶ。
我ながら酷いと思うが素知らぬ顔してテラスで抱えたままお茶をする。
時々強くまばたきを繰り返しピクリと身体を反応させるが…魔素に反応?と言うよりも ……寒いのか?
膝掛けで包むとホっと力を抜いた。
嘘をついている匂いはしないが嘔吐感がある時にお茶を飲むのはキツイだろうと…お茶を勧める。
熱いお茶は苦手なのか…ふぅっと息をかけてから口をつけて…可愛いな。
……嘔吐感もないか …問題はないな。
それなら魔素と魔力の同時摂取はどうなのか?と。
私の魔力を解放した…リランが思わず私の名を呼んだ。
「黙れ。」
黒兎はその私の声にビクッと反応した…大きな声は苦手なようだ。リランは奥歯を噛み締めて5歩下がった。
さて、どんな反応をするのか。
黒兎に私の魔力を薄く纏わせる…少しずつ濃く。
魔力の濃度を上げる。濃く。さらに濃く。
……欲情か…身体も聞き分けがいい。身体的な問題は無さそうだ。
啄む様に口づけて、息を飲むために開いたところに舌を滑り込ませ吸い取り絡める。
黒兎の吐息が甘い。
甘い匂いが濃くなり快感を感じているのがわかる。
逃げる身体を引き寄せて手をゆっくり滑らせる。下に。下に。
…抵抗しない。こんな事まで従順であれと育てられたのか?…加虐心が刺激される。
魔力で胎を撫で上げる。何の匂いもついていない初心な胎。雄の支配欲が私の頭を染めていく。
…気持ちいいか?小さく痙攣し始めた。
雌なら前でイクな。射精阻止の術をかける。
戸惑いながら私のシャツを握る仕草が初々しい。
泥濘んだ匂いがするのに…私を欲しがらない。
そのまま胎を摩り撫で上げると身体に力が入り足がピンと伸びてイッた…。
こんなに濃い魔素の降り注ぐ中でも私の魔力を感じ剰え快感を拾う。私達は相性はいいと言う事だ。
どちらかと言えば奔放に腰を振る雌の方が好みだが、この初々しい反応も悪くはない。
彼を囲ってからひと月。
まだ抱いていない…押せばいけるのだろが…出来れば許しが欲しい。
甘く痺れる様な匂いで、あまり他の匂いがわからない。無理矢理襲わない様にするのが精一杯だ。
私は発情期にこれほど我慢した事はなかった。
外で済ましてこようか?と思い始めた。
仕事から帰ると出迎えたバレンティンが怒っていた。
「……求めてもらえないから簡単に外で発散しようと考えていらっしゃるなら囲うのをおやめなさい。
狼のくせに囲ってからひと月も何をしているのですか?愛される自信がないのですか?常々思っていたのですがイゴール様は言葉が足りません。
見ればわかる?そうですね見ればわかりますよ。彼は否定されてきたんですよ。だから貴方から否定されない様に必死ですよ。
貴方に必要のない存在だと思ったら死にますよ。
死ぬ方法を知らないから死なないだけで死んでいいと思っているんですよ。
私が今何を考えているかわかりますか?わかりませんよね?匂いで察しても心が読める訳ではないのですから。…怒っているな程度ですよね?
…碌でもない。次期当主としては問題ないが馬鹿なのか?雌ひとつ口説き落とす事が出来ないなんて呆れる。相手が兎だから。愛される自信がなくて、手が出せないなんてヘタレか?もしかして恋愛は童貞か?
この程度の事は考えております。実際にはもう少し辛辣です。
平時はご自身で気づいていただきたいと考えているので言葉にはしませんが今回は別です。愛し合いたいと思う相手には伝えなければいけない言葉があるのではないですか?」
声を荒げるわけでもなく目を見て淡々と言われるとなかなか堪えるな。そうか。私は私が思っていたよりも馬鹿な様だ…こんな事をバレンティンに言わせてしまった。
「……その通りだな。きちんと話してくる。」
目線を外して一歩進めた時に
「はぁー。」と吐き捨てるような溜息。
思わずバレンティンを見た。
「話すんじゃなくて口説けって言ってるんです!愛を囁けと言っているんです。ロマンティストな童貞の方がまだマシですね。番ですよ?性欲を満たす道具ではないんです。脳筋に難しい事は無理でしょうか?」
凄く呆れ顔だった。
「口説いてくる!」
間違いをこんな風に指摘された事はなく。あまりの恥ずかしさに顔が赤くなる。
「いってらっしゃいませ。」
「はぁー。」吐き捨てるような溜息。
思わずクスリと口角が上がる。
バレンティンはなかなか面白い奴だ。
私は部屋に急いだ。
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